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 ◇パ・リーグ オリックス2―9西武(2024年9月24日 京セラD)

 最後の最後まで、オリックスのT―岡田はフルスイングを貫いた。9回2死一塁、通算5218打席目。田村がカウント1―1から投じた低めの直球を振り抜いた打球は、右翼ポール際へ吸い込まれた。判定はファウルとなり通算205本目のアーチは幻に…。結果は通算1184個目の三振でも、浪速の轟(ごう)砲らしい豪快な放物線でファンを沸かせた。

 「しっかりファウルでしたね…(笑い)。三振で終わったのも、僕らしい」

 2軍調整が続いても、練習開始の1時間前からストレッチを始めるルーティンは不変。昇格を目指すと同時に、若手の兄貴分としても模範を示し続けた。今季開幕から成績が伴わなかった山下が2軍調整していた際は積極的に声をかけた。「体の状態はどうなの。どうアプローチをしているの。力になれることがあったら、何でも言ってな」。ポジションも年齢も大きく違うが、苦しむ昨季の新人王を気遣った。

 「Tさんに言ってもらえるだけで、落ち着けた。Tさんも舞洲でやっていて現状に満足していない中で…。優しさですよね」

 4年目右腕は大砲の言葉に救われたと言う。前日23日の1軍練習でも高卒2年目の内藤にベースへの入り方や捕球姿勢など守備面で惜しむことなく助言していた。チーム愛も最後まで貫いた。

 7回2死走者なしでは、先発の今井から通算1193安打目の右前打。「あんなに応援してもらって、めちゃくちゃ幸せでした」。笑顔と涙で締めくくった最後の舞台。心優しき元本塁打王が19年間で築き上げた誇りとともに、バットを置いた。 (阪井 日向)