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予算編成を担っている財務省は、内閣のなかでも強い力をもつそうです。そんな現代日本の統治機構に対し、経済ジャーナリストである森永卓郎氏が“ウルトラC”の解決法を提案します。森永氏の著書『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より、詳しくみていきましょう。

〈公文書改ざん〉の重罪を犯した財務官僚が“無罪放免”に…森永卓郎「まったく理解できない」

財務省による“日本経済の破壊”の解決法

2023年11月8日、衆議院財務金融委員会で、鈴木俊一財務大臣は岸田総理が打ち出した「税収増を国民に還元する」という所得税・住民税減税に関して、次のような答弁をした。

「税収の増えた分は、政策的経費や国債の償還などですでに使っている。減税をするなら国債を発行しなければならない」

岸田総理の打ち出した政策を真っ向から否定したのだ。

この発言を受けて、メディア各社は一斉に「財務省が岸田総理を切り捨てに来た」と報じた。

総理の打ち出した最重要政策を財務大臣が否定するというのは、閣内不統一にほかならないし、鈴木財務大臣はフリートークで話したのではなく、答弁書を読んでいた。答弁書を作成したのは財務省だ。だから、財務省が岸田政権をつぶしに来たというのはきわめて自然な解釈なのだ。

安倍晋三元総理は『安倍晋三回顧録』のなかで「予算編成を担う財務省の力は強力です。彼らは、自分たちの意向に従わない政権を平気で倒しに来ますから」と述べている。その言葉どおりに「減税」という財務省の意向に従わない政策を採った岸田総理を倒しに来たのだ。

しかし、冷静に考えたら、この権力構造は明らかにおかしなものだ。

国民が選んだ国会議員の投票によって、内閣総理大臣、すなわち行政機関のトップが選ばれる。財務省は当然その指揮下に置かれる。ところが、こと財務省だけが、総理大臣の上に立ち、総理の打ち出す政策が自分たちの意向に沿わないと、総理大臣を切り捨てに来るのだ。

国民は財務省の官僚を選挙で選んだわけではない。国民に選ばれていない人が、国権の最高権力者として君臨するという統治機構は明らかにおかしいのだ。

私は、ザイム真理教問題を解決するためには、財務省に解散命令を出すしかないと考えているが、残念ながら財務省は宗教法人ではないので、宗教法人法に基づいて解散命令を出すことができない。

しかし、実質的に同じことを実行することはできる。それは、財務官僚の究極の目的である天下りを完全禁止するとともに、彼らの権力の大きな源泉となっている国税庁を完全分離することだ。

実は、密かに「天下り禁止」を計画していた第一次安倍政権

じつは第一次安倍政権で官僚の天下りを禁止しようという計画があった。

しかし、そこで行なわれたのは、天下りの斡旋の禁止である。天下りそのものを禁止することはできなかった。当時、改革の現場にいた高橋洋一嘉悦大教授に聞いたところ、憲法が規定する職業選択の自由に抵触するので、天下りの禁止にまでは踏み込めなかったという。

しかし、安倍政権は集団的自衛権の行使を解釈改憲で可能にした。岸田政権は、敵基地攻撃能力の保有を解禁した。いずれもふつうに憲法を読めば、どう考えても「9条」に違反する行動だ。それが許されるのであれば、財務官僚の天下りを禁止するなど、たいした問題ではない。財務省のキャリア官僚の数はせいぜい数百人にすぎないからだ。

そして、どうしても職業選択の自由にこだわるのであれば、財務官僚に限って、生涯の雇用保証を与えてもよいだろう。少々の人件費負担は生ずるが、彼らが日本経済を破壊している被害額とくらべれば、その負担など微々たるものだからだ。
 

森永 卓郎

経済アナリスト

獨協大学経済学部 教授