今週開幕した2024―25シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズ第1節の舞台に立った日本人選手は計9人。守田英正(スポルティング)、前田大然、旗手怜央、古橋亨梧(セルティック)、南野拓実(モナコ)、荻原拓也(ディナモ・ザグレブ)の6人がスタメンを飾り、チェイス・アンリ(シュツットガルト)、上田綺世(フェイエノールト)、遠藤航(リバプール)の4人が交代出場を果たした。

 新たにチャンピオンズリーガーに上り詰めたのはチェイス・アンリと荻原拓也のふたり。前者はレアル・マドリード戦の後半18分、ピッチに立ち、後者は左ウイングバックとしてバイエルン戦の後半28分までプレーした。荻原は後半5分、試合を1−3から2−3にするゴールも決めている。終わってみれば2−9の大敗だったが、荻原がカウンターからバイエルンGKスヴェン・ウルライヒ(元ドイツ代表)の股間を軽やかに射貫いた瞬間こそが、この試合のクライマックスだった。価値あるゴールと言える。


レアル・マドリード戦でチャンピオンズリーグにデビューしたチェイス・アンリ(シュツットガルト)photo by REX/AFLO

 チェイス・アンリは現地予想ではスタメンだった。ブンデスリーガにおける開幕から過去3戦の使われ方を見れば、それは妥当な予想になる。だが、弱冠20歳の選手を、ベンチは焦らず慎重に取り扱った。それがスタメンではなく交代で使った理由だと贔屓目でなく思う。後半の追加タイムは7分近くあったので、実質30分以上プレーしたことになる。昨季の覇者で、事実上の世界ナンバーワンクラブ、レアル・マドリードの本拠地「サンティアゴ・ベルナベウ」で、である。

 チェイス・アンリは五輪代表候補で、最後の合宿に呼ばれたが、最終メンバーには残らなかった。選から漏れた理由は定かではない。クラブとの関係が絡んでいる可能性も否定することはできないが、一般的にはそれまでノーマークの選手であるのは事実だった。欧州最高峰の舞台にいきなり駆け上がったことになる。

 荻原も"二階級特進"を果たしたクチだろう。浦和レッズでは主力級の力を見せていたが、代表には遠い選手だった。移籍後、わずか数カ月でCLに出場。バイエルン戦でスタメンを飾り、得点を奪ってみせたのだ。

【代表でも評価すべきはCLで活躍している選手】

 相手のバイエルンには日本代表の左サイドバックがいる。今季シュツットガルトから移籍した伊藤洋輝だ。しかしケガで出遅れ、この日もベンチ外。9月のW杯アジア3次予選(中国戦、バーレーン戦)にも招集されなかった。片や荻原はその間に飛躍した。伊藤VS荻原という見方が成立するかどうかは何とも言えないが、筆者はW杯本大会と同レベル、あるいはそれ以上と言われるCLに出場し、それなりに活躍した選手は代表に招集されるべきだと考える。ドリブルで持ち上がり、GKとの1対1を冷静に決めた経験は大きい。少なくとも、なぜか代表に選ばれ続けている長友佑都のレベルははるかに超えている。

 この環境で、最低でもリーグフェーズを8試合戦うことができることになる。相手はさまざまで、バラエティに富んでいる。それがW杯アジア予選との違いでもある。選手はどちらのほうが成長できるか。経験を積めるか。答えは明白だ。CL至上主義を唱えたくなる理由である。

 評価すべきは、日本代表で活躍した選手よりCLで活躍している選手だ。すなわち、森保一監督のお眼鏡に叶う選手ではない。「我々の戦い方を身につけている選手」(森保監督)でもない。CLという世界最高峰の舞台で日常的に戦っている選手だ。

 チェイス・アンリはシュツットガルトで、次戦からスタメン起用される可能性も十分ある。となると、筆者的には日本代表に招集しなければならない選手になる。

 日本代表のCBはこのところ町田浩樹(ユニオン・サンジロワーズ)、板倉滉(ボルシアMG)、谷口彰悟(シント・トロイデン)が常連だ。しかし、選手の格は所属チームと深い関係がある。CLという欧州のトップリーグに出場しているチームの選手は、そうではない選手を格で上回ることになる。格は選手を招集する際の物差しでなくてはならない。とすれば、チェイス・アンリは否応なく浮上する。

 30分強、チェイス・アンリはキリアン・エムバペ(フランス代表)、ヴィニシウス・ジュニオール(ブラジル代表)というレアル・マドリードが誇る二枚看板と対峙している。その下にはジュード・ベリンガム(イングランド代表)が構え、ロドリゴ、エンドリッキ(ともにブラジル代表)も時に中央に入ってプレーした。

【森保監督の価値観は変わるか】

 チェイス・アンリは日本代表でスタメンを飾るCBの選手たちも羨む大舞台で、貴重すぎる経験を積んだ。この事実は重い。

 得点は前出の荻原のほかに、スロヴァン・ブラティスラヴァと対戦したセルティックのふたり、古橋、前田も決めている。けっして強くない相手との一戦でマークしたゴールにどれほど価値があるか、評価は割れるだろうが、この場合でも筆者はCL至上主義を唱えたい。

 前田は代表の常連と言ってもいい存在になりつつあるが、古橋は招集外となって久しい。森保監督から過度な低評価を受けている。日本代表でスタメン出場が増えているフェイエノールトの上田は、昨季に続き2シーズン連続でCLの舞台に立っているが、もっぱらサブだ。ライバルとなるサンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)との間には大きな差が存在する。0−4で大敗したリーグフェーズ初戦のドルトムント戦では、攻撃力強化を狙い後半16分という早い段に投入されたが、見せ場は少なかった。

 プレー機会の絶対数で上田は古橋に後れを取っている。この状態はこれからも続くと思われる。CL至上主義に照らすと軍配は古橋に挙がる。

 森保監督の価値観は従来のままなのか。あるいは変化するのか。CLで活躍した選手はプライオリティを上げる。言い換えれば、代表に選ばれたければCLで活躍すべし、だ。これこそが時代にマッチした明快な基準だと筆者は考える。