この記事をまとめると

■MTは現在スポーツモデルに多く採用されるがかつては実用車にも多く存在した

■ミニバンやSUVにも当然のようにMTが設定されていた

■ATが主流となったのでMTモデルがごく短期間しか存在しなかった場合もあった

かつては実用車にもMTが数多く用意されていた

 現在は2ペダル仕様の性能の向上が目覚しく、燃費の面でも速さの面でも3ペダルMTを凌駕するようになっており、3ペダルMTが用意されるのはコアなファンの多いスポーツモデルか商用車程度となってしまっている。

 しかし90年代ごろはまだまだMT車の設定率が高く、趣味性の高いクルマだけでなく実用車にも多くMT車を設定していたのだ。今回はそんな過去に存在していた意外なMT車を振り返ってみたい。

日産 セレナ

 現在も日産車のラインアップのなかで、安定した人気を誇るミニバンのセレナ。ガソリンモデルもあるが、エンジンで発電しモーターで駆動するe-POWERモデルが中心となっている。

 そんなセレナは現行で6代目モデルとなるが、MTが設定されていたのは1991年に登場した初代モデルで、この初代セレナは歴代セレナのなかで唯一FRレイアウトをもっていた。

 また2リッターガソリンモデルには当時の日産スポーティモデルにも多く採用されていたSR20DE型が搭載されており、フロントはストラット、リヤはマルチリンクのサスペンションを採用。今ではミニバン界のシルビアと呼ばれることもあるほどなのだ。

トヨタ・クラウン

 現在もトヨタブランドのフラッグシップモデルとして君臨するクラウンは、クロスオーバーやスポーツなど、時代に即したラインアップの変化をしながらもその地位を守り続けている。

 そんなクラウンだが、やはり車名を聞いて脳裏に思い浮かべるのは4ドアセダンモデルで、日本らしいソフトな乗り味の高級車というイメージが強いハズだ。

 なので、クラウンはATでゆったりの乗りたいクルマの1台……と思う人が多いのだが、じつは1987年に登場した8代目モデルまではMT車が用意されており、セダンのほかハードトップモデルにもMT車が用意されていた。

 また一部のフロントベンチシート仕様のグレードではコラムシフトの4速MTもラインアップされており、古さと新しさが同居していた時代のクルマといえるかもしれない。

SUVにも当然のごとくMTアリ!

ホンダ CR-V

 ホンダ初の乗用車ベースのクロスオーバーSUVとして1995年に初代モデルが登場したCR-V。その後は代を重ねるごとに大型化し、2018年に日本に投入された5代目モデルはホンダのフラッグシップSUVのポジションを担うまでになった。

 そして2024年7月には燃料電池自動車のCR-V e:FCEVが日本でも発表されるなど、未だに話題に事欠かないモデルとなっている。

 そんなCR-Vは初代モデルにはもちろんのこと、2001年に登場した2代目モデルにもMT車が設定されていた。しかも安価なFFモデルに設定するのではなく、4WDモデルにのみMTを設定していたということで、4WDを求めるユーザーのほうがMTを好む層が多いことを熟知していたともいえるのだ。

日産 ステージア

 スカイラインとプラットフォームを共有するスポーティなステーションワゴンとして知られるステージア。とくに初代モデルはRB25DET型エンジンと5速MTを組み合わせたグレードが存在していたほか、オーテックジャパン(当時)が手掛けたGT-Rのコンポーネンツを丸ごと移植した「260RS」があったことでも知られている。

 一方、2001年に登場した2代目モデルは、ベースのV35型スカイラインと同じくスポーティさよりも上級感を重視したモデルとなり、前期型にはVQ25DET型ターボエンジンが搭載されていたが、MTは用意されることはなかった。

 しかし、先代でも260RSを送り出したオーテックジャパンは2003年6月に通常のステージアには当時、搭載されていなかった280馬力を発生するVQ35DE型エンジンと6速MTを搭載した「アクシス350S」をリリース。このモデルは1年強しか販売されなかったため、レア度では260RSを上まわるともいわれているのだ。