第49回トロント国際映画祭でのクロエ・イースト、ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー
 - Leon Bennett / Getty Images

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 ヒュー・グラント初のホラー映画『ヘレティック(原題) / Heretic』が、第49回トロント国際映画祭でお披露目された。宗教を題材にした本作で、ヒューは知的で穏やかで紳士的でありながら、時折のぞかせる底知れない不気味さでモルモン教の女性宣教師(『ブギーマン』のソフィー・サッチャーと『フェイブルマンズ』のクロエ・イースト)を恐怖の底に叩き落すリード氏を怪演している。

 『クワイエット・プレイス』の脚本家で、『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』の監督であるデュオ、スコット・ベック&ブライアン・ウッズがA24と共に手掛けた本作。天才的なIQを誇り全ての宗教に精通しているリード氏は“唯一の宗教”を探しており、宣教に訪れた2人のモルモン教徒を丁寧に家に招き入れる。しかしそれはリード氏の罠であり、退路を断たれた女性宣教師たちは、命を懸けて自身の信仰を試されることになる。

 “ラブコメの帝王”と称された時代には多くの人々の心を溶かしたヒューの笑顔に、これほど恐怖を感じさせられるとは衝撃的だった。ワールドプレミアに登壇したヒューは「過去8、9年くらいは変人奇人、悪役もやっているから」と大したことではないとさらりと語り、出演を決めた理由について「魅力的なキャラクターだと思ったし、(宗教への考え方は)似ているとすら思う。A24はクールで、僕もクールだから、よくマッチすると思ったのさ」とジョークを飛ばした。

 ベック&ウッズ監督によると、必ずしも血、内臓、モンスター、大きな音などで観客を飛び上がらせるタイプのホラーではなく、アイデアから恐怖を生むことを目指したとのこと。確かに3人の宗教談義には笑いも起こり、神はいないと証明するためにリード氏が『スター・ウォーズ』シリーズのジャー・ジャー・ビンクスのものまねをするシーンは大ウケだった。もちろん血もそれなりに流れるが、監督たちの意向を受け、「笑い」と「恐怖」、「理性」と「異常性」を巧みに行き来するヒューの演技の振れ幅の広さから本作の不気味さは生まれている。(編集部・市川遥)

第49回トロント国際映画祭は現地時間15日まで開催