須江拓貴被告。仲間割れを起こした詐欺グループから旧ツイッターで晒されていた(SNSより)

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 3年半前、法廷で「よっしゃー!」と雄叫びを上げた男に今度はどんな裁きが下されるのか。9月10日、「江東区アポ電強盗致死事件」の差し戻し審初公判が東京地方裁判所で開かれた。法廷で被告たちが見せた様子をレポートする。

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争点は「量刑」

 須江拓貴(27)、酒井佑太(28)、小松園竜飛(33)の3被告は、2019年2月、強盗目的で東京都江東区のマンションの一室に宅配業者を装って侵入し、住人の80歳女性を拘束して死なせた罪に問われている。

 彼らが押し入る10日前、別の詐欺グループが女性宅に家族を装い「家に金はあるか」と確認する電話を入れていた。発生当時、事件は他の類似事件と合わせて「アポ電強盗」と呼ばれ社会を震撼させた。

須江拓貴被告。仲間割れを起こした詐欺グループから旧ツイッターで晒されていた(SNSより)

 3被告は罪を認めており、争点となっているのは量刑である。

 検察側は「死因が首の圧迫によるもの」としてこれまで無期懲役を求刑してきたが、弁護側は「持病の悪化によるもの」として有期刑が相当と訴えていた。

 21年の一審で東京地裁は弁護側の主張を認め、須江被告に懲役28年、酒井・小松園両被告に懲役27年の判決を言い渡した。その時、須江被告は法廷中に響き渡る声で「よっしゃー!」と雄叫びを上げ、遺族感情を逆撫でさせたのだった。

眉間に皺を寄せて睨みつけるような目つきで…

 だが須江被告が歓喜した判決はあっさり2審で覆された。23年、東京高裁は「合理的な根拠がないまま、首の圧迫を示唆した解剖医の見解を排斥した」として1審判決を破棄。審理を地裁に差し戻した。3被告は上告したが最高裁は棄却し、裁判は始めからやり直しになった。

 3年半ぶりに裁判員に裁かれることになった法廷で、被告たちはどのような表情を見せたのか。

 明らかに態度が悪かったのは「よっしゃー」の須江被告だった。礼はきちんとするし、裁判長の言うことはきちんと聞く。だが、首を回したりキョロキョロしたり始終忙しない。

 そして時折、眉間に皺を寄せ、ガンをつけるような険しい目で傍聴席を見やるのである。時間が気になるのか、傍聴席後方の時計にも目を向けていた。

 須江被告でもう一つ気になったのは顎にだけちょこんと1センチくらい生やしている髭だ。明らかに整えている。拘置所でオシャレを楽しんでいるのだろうか。

目を合わせて“ニンマリ”した2被告

 酒井被告も決して態度がいいとは言えなかった。法廷に入るやじっと須江被告を見つめ、目を合わせようとしていた。

 はじめのうち気づかなかったのか無視していた須江被告だったが、休廷を挟んだ後に目が合った時は込み上げる笑いを堪えるような表情をしていた。それを見て酒井被告も笑っていた。

 学校で先生に叱られている悪仲間によく見られがちな光景だが、実際、2人は出身が同じ長野県で以前からの知り合いなのである。先に酒井被告が闇バイトに応募して、黒幕となる男が住んでいた大阪の家に転がり込み、須江被告を呼び寄せた。

 2人とは別途、闇バイトに応募してグループに加わることになったのが小松園被告だ。2人より5つほど年上だが、法廷での態度も2人とは対照的だった。

 誰とも視線を合わそうとせずみじろぎもしないで俯いていた。表情には生気がない。髪型も須江・酒井両被告がスポーツ狩りだったのに対し、小松園被告だけが丸坊主だった。

 3被告は他に6つの窃盗・強盗・強盗傷事件で起訴されており、区分審理され既に有罪判決が出ている4事件以外の2事件も合わせて審理される。

 検察側は冒頭陳述でこう主張した。

「被害者が高齢であることを認識しながら、激しく抵抗する被害者に対し、手足を緊縛し、口を粘着テープで塞ぎ、頭部を圧迫するなど強度の暴行を加えて被害者を死亡させたのであって、被害者が被告人たちの暴行が原因で死亡したのは明らかだ」

 関係者によれば検察は「今度こそは無期懲役を、という意気込みで臨んでいる」という。

 一方、3被告の弁護人は「意図的に頸部を圧迫して死なせたわけではない」として「無期懲役は重すぎる」と訴えた。

「よっしゃー!」で世間の怒りを買ってから3年半ぶりに振り出しに戻った裁判。はたして裁判員はどういった量刑を選択するのかーー。

【やり直し裁判が始まる 法廷で「よっしゃー!」と喜んだ「アポ電」強盗犯 一審判決が見誤った“酌むべき事情”】では、無期懲役の求刑を退けた1審判決の内容と3被告が全国各地で起こした「7つの事件」について詳しく報じている。

デイリー新潮編集部