今の悩みは「活動資金がない」ことだという。仕事を辞めて以降、アルバイトで暮らす彼を支えているのは、ゴミ拾いで繋がった縁だ。

「活動を知って『スポンサーになりたい』と言ってくれる人がいるんです。コメ農家の方から支援してもらったり、天王台の『ばんばん亭』という食堂の店主が『いつ来ても無料で飯食わせてやる』と言ってくれたり、ありがたいことに食事には困らないですね」

◆代わりのいない「役割」に住民は感謝している

 街灯の少ない天王台では、日が落ちると活動が難しい。19時過ぎにゴミ拾いを終えたフリーザ氏は、夕食をとるために先述のばんばん亭に入った。「お疲れ様」とフリーザ氏をねぎらう店主に「住人は彼をどう思っているのか」聞いてみた。

「天王台に、代わりにこの役割を背負ってくれる人はいません。誰もやりたがらないけど、やるべきことを率先してやってくれている。そこは彼をリスペクトしているので『いつでも食べに来いよ』と言いました。いつ来ても、どのメニューを頼んでもOKです」

「もっときれいに食え!」とかつ丼をかきこむフリーザ氏の頭を叩きながら、店主は笑っていた。ゴミ拾いに一日同行することで、フリーザ氏は住人たちにとって決して“怪しい奴”ではなく、地域に認められたマスコット的な存在であることが分かった。

◆フリーザ氏の野望とは

 とはいえゴミ拾いが“無賃”であることに変わりはない。実際、ゴミ袋と一緒に背負っている「投げ銭」と書かれた箱にお金を入れる人が、取材日に現れることはなかった。

「各地のゴミ拾いイベントには呼ばれ始めていて、ギャラをもらうこともありますが、生活できるほどではないです。この衣装もずっと使っていてボロボロで、新調したいけどお金がない(笑)。

 いつか、全国の企業や人がスポンサーになってくれたらいいなと思っています。フリーザの格好でゴミ拾いだけをしながら日本を歩いて回れたら最高ですね」

 フリーザ氏の野望は続く。この星からゴミが消える日もそう遠くないのかもしれない。

<取材・文/日刊SPA!編集部>