Aimer 24thシングル「Sign」インタビュー 『狼と香辛料』新OPテーマに重ねた“孤独を抱えた者同士”への特別な思いとは?

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Aimerの24thシングル「Sign」のタイトル曲は、TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』第2クールOPテーマ。オーガニックで優しいメロディ、そして、孤独を抱えた者同士の絆を描いた歌詞が1つになったミディアムチューンに仕上がっている。シングル「Sign」の制作を中心に、6月から7月にかけて行われた海外ツアーの手ごたえ、この秋から始まる全国ホールツアーの展望などを含め、今のモードをじっくりと語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之

15周年に向かっていくなかで、普遍的な曲を作りたかった

――新曲「Sign」はTVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』第2クールOPテーマとなりました。まずは『狼と香辛料』に対して、どんな印象を持っているか教えてもらえますか?

Aimer 原作の小説も読ませていただいたんですが、新鮮な面白味がありました。中世を舞台にしたファンタジーなのですが、激しく戦ったり、血が流れたりする物語ではなくて、主人公の2人(若き行商人クラフト・ロレンス、狼の化身であるホロ)が一緒に旅をするなかで、色んな事件に出会って。それぞれに機転や知恵を働かせながら事件をくぐり抜けていくストーリーなんですよ。2人の仲が深まっていく様子も描かれていて、「どうなっていくのかな?」という好奇心も掻き立てられるし、「商人って、こんなふうに相手の出方を伺っているんだな」って勉強にもなって(笑)。とても興味深い作品だなと思っています。

――ホロは豊穣を司る狼の化身。Aimerさんにとってのホロの魅力は?

Aimer まず、ビジュアルがかわいいですよね。(狼の)耳と尻尾があって、フワフワして暖かそうで(笑)。でも中身は狼で、神様の使いでもあるから、すごく機転が効くし、知識もある。そのバランスがすごく素敵だなって思います。ロレンスとの仲睦まじい場面、心温まるシーンもたくさんありますが、ロレンスがタジタジになったり、ホロのおかげで危険を回避することもあって。旅のパートナーとしてもピッタリだし、“かわいい”だけがメインではないというか、守られてばかりのキャラクターじゃないのが素敵だなって思います。

――現代的なヒロイン像かもしれないですね。「Sign」のゆったりと温かい雰囲気も、アニメの世界観にすごく合っていて。歌詞を書くにあたっては、『狼と香辛料』のどんなところにフォーカスしていたんですか?

Aimer 『狼と香辛料』の物語の何が魅力なのか?と考えたときに、事件をくぐり抜けるときのハラハラ感だったり、2人が旅する背景の美しさだったり、色んな要素があって。第2クールのなかで特に印象的だったのは、2人が初めて仲たがいをする場面だったんです。結果的には絆が深まるんですが、「Sign」を作るにあたって、そのシーンをフィーチャーしたいなと思って。ホロとロレンスは元々孤独だったんです。ホロの「独りぼっちはもうイヤだ」というニュアンスのセリフもあるんですが、孤独を抱えていた2人が出会ったからこそ、かけがえのないものが得られたんじゃないかなって。……それが自分自身とシンクロしたんですよね。個人的な音楽の話になってしまうんですが、音楽と出会って、歌い始めた頃は「向こうに誰もいない」というか、“ゼロ”という感覚だったんです。それが“イチ”になったときにすごく感動して。

――それは「自分の歌を聴いている人がいる」と実感した瞬間ですか?

Aimer そうですね。それがなかなかわからなかったんですよ、私は。デビューしてしばらく経っても(聴いている人がいると)信じられなかったんですけど、初めてライブをしたときに「本当にいてくれたんだ」と。そういう経験を繰り返すことで、聴いてくれる人たちの存在が刻まれて。今もそうですけど、楽曲を作るときもその人たちのことを思っているし、かけがえのない存在になっているんですよね。

――Aimerさんのファンの皆さんは、楽曲に対する思いもすごく強い印象があります。SNSなどでも、自分自身の体験を絡めて感想を書いている人がいたり。

Aimer デビュー当時から「何かしら悩みや迷いを抱えた人が多く聴いてくれてるのかな」という印象があって。ファンレターを読んでいるときもそう感じることが多かったし、孤独を抱えている2人が音楽を通して出会った感じがするというか。私にとっては「見つけてもらった」という感じがあるし、その一つ一つが当たり前じゃなくて、奇跡的だったなって。「Sign」に“似た者同士だった”という歌詞があるんですけど、アーティストとリスナーってそういうものかもしれないなと。でも、聴き方は色々ですからね。私はそういう思いで書きましたが、どんなシチュエーションに当てはめてもらってもいいと思っています。

――“想い合えた印”もそうですが、聴く人によってかなり印象が変わりそうですよね。

Aimer “消えない印”“ずっと褪せない印”もそうですけど、誰かにとってはそれが苦しいときもあるんじゃないかなって。さっきもお話ししたように「Sign」は“孤独を抱えた2人が出会う”という物語をもとにしていますが、そこに寂しさや暗さが伴っていないとウソになるだろうなと思っていたんですよ。

――そこまで意識を届かせて歌詞を書いているんですね……。「Sign」のアレンジや音像については?

Aimer 『狼と香辛料』の舞台は中世っぽさ、ヨーロッパっぽい雰囲気があって。2人が旅している場所も自然が溢れていて、麦畑が風になびいていたりして。そういう風景を想起させるようなメロディやサウンドにしたいなと思っていました。生楽器を活かすことも意識してましたね。

――メロトロンの音も入っていて、ビートルズ的なテイストもありますね。

Aimer ビートルズといえば、以前から玉井さん(玉井健二プロデューサー)と「『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』みたいな曲を作れたらいいね」という話をしていたんですよ。音楽活動15周年に向かっていくなかで、どこかで普遍的な曲を作りたいなって。「Sign」を作っていくにあたり、「このタイミングなんじゃない?」ということになったんですよね。

――これまでの道のりを振り返りながら、この先に思いを馳せる……というような?

Aimer そうですね。「ザ・ロング・アンド〜」をイメージしながら制作したのは「Sign」ですけど、“これまでがあって、これからもある”という概念はこのシングル全体に言えることかもしれないです。2曲目(「Wren」)、3曲目(「月影」)はちょうど海外ツアーの前後に制作していたので、そのなかで感じたことも反映されていると思います。海外ツアーは5年ぶりだったし、しかも今回はアリーナ公演だったので、すごく大きい出来事でしたね。

「今、生まれ変わっているような感覚」を反映した楽曲とともに、次のツアーへ

――6月から7月にかけて行われた海外ツアー“3 nuits tour 2024”は上海・台北・香港の3都市で開催されました。手ごたえはどうでしたか?

Aimer すごくありました。上海ではほとんどの曲で合唱してくれて、とにかくお客さんの熱量が高かったです。台北、香港では日本のお客さんに通じる部分も感じて、静かに聴いてくれる曲もあれば、一緒に歌ってくれる曲もあって。「海を越えた先に、自分の音楽を見つけてくれた人がこんなにたくさんいるんだ」と衝撃を受けました。それまで、アリーナ2daysが埋まるくらいたくさんの方が海外で自分を待ってくれているなんて、全然信じられなかったんですよ。

――実際に自分の目で見るまでは信じられない?

Aimer そうですね(笑)。実際にステージに立つと、すごい声援で。皆さんの愛をしっかり感じることができました。一方で「自分って、なんてちっぽけなんだろう」と思う瞬間もあって。1人ぼっちで異国の地を歩いていると、「ここでiPhoneをなくすと、もう帰れなくなるかな」とか……実際にそんなことはないんですけど(笑)、ちょっと不安で“ぽつん”という気持ちもあったんですよ。そういうものが混ざりつつ、「もっと音楽で通じ合うために、どういう曲を作っていけばいいんだろう?」ということも考えました。言語が違っていても、こんなにたくさんの人たちと出会える。ということは、すごくいい影響を与えることもできるし、もしかしたら――そんなことはないんですけど――良くない影響を与えてしまいかねない立場にいるのかなと。責任を改めて感じたし、でも、総じて言えばすごく嬉しくて、楽しくて。「もっともっとできることがあるはずだ」と思えたんですよね。

――色々な気づきがあったんですね。

Aimer そうなんです。あと、3会場とも全然緊張しなかったんですよ。アリーナ公演であんなに緊張しなかったのは初めてじゃないかな。ここ数年、歌に対して悩んでいたこともあったんですけど、それがパキッと打破出来た手ごたえもあって。とにかく皆さんからの愛を感じたし、これから愛を返していきたいなと思います。

――では、シングルに話を戻して。2曲目の「Wren」は鋭利なギターフレーズが印象的な楽曲。このタイトルは、鳥の名前から付けているんですね。

Aimer 日本名だとミソサザイという鳥ですね。いつか使いたいと思っていたタイトルなんですよ。スズメよりも小さい鳥なんですけど、生きるために海を越えることができる。小さいながらも羽ばたいていく姿、その存在自体が象徴的だなと思って。海外ツアーのなかで感じた無力感と、「自分には音楽を通して人に影響を与えることができるんだ」という思いがせめぎ合っている状態というか。「Wren」には自分を俯瞰で見ているようなイメージもありました。諦めそうになっている自分、「それでもまだ……」と思っている自分が葛藤していて、それを上から眺めている感覚ですね。「Wren」という響きも好きですし、こういう激しめな、アッパーな曲に対して、ちょっと弱々しい存在をタイトルにするのが自分のなかでしっくりきたんです。

――“まだ間に合うとしたら/傷つくとしても 声枯らしても 叫び続けたい”という歌詞もあって。すごく直接的だなと感じました。

Aimer 真っ直ぐですよね。誰かにとっての生きる力になるような歌を作っていきたい、歌い続けたい。大げさに言うと、そういう使命みたいなものがあるのかなって。

――それほど強い思いを込めた曲をレコーディングするのはどうでした?

Aimer 「Wren」と「月影」はいい意味で、力を抜いて歌えたんですよ。あえて力を入れて歌ったほうがいい曲もあって、「Sign」はまさにそうだったんです。余裕で歌う曲ではないというか、一生懸命に頑張って、切々と歌うほうが合うなと思ったので。

――そして「月影」は美しいメロディが印象的なバラード。

Aimer メロディもアレンジもすごく普遍的で、真っ直ぐな曲だなって。今までだったら、「真っ直ぐな曲だからこそ、斜めから表現した歌詞を歌おう」という感じだったかもしれないけど、この曲に関しては「全部が真っ直ぐで、素直な曲があってもいいかな」と思ったんですよね。これも海外ツアーで経験したことなんですけど、“今までの道”と“これからの道”を思い浮かべて、月を見ながら歩いていたときのことをそのまま歌にしてみたいなと。この曲の歌録りは、1時間くらいで終わったんです。それは私にとってはすごく早くて。いい意味で考えすぎなかったというか、全然迷わなかったし、ほぼ一発録りみたいな感じでした。

――それはもちろん、いい変化ですよね?

Aimer はい。前回のEP(「遥か/800/End of All/Ref:rain -3 nuits ver.-」)の制作もそうだったんですけど、今までこだわっていた部分に対して「ここでは置いておこう」という判断もできるようになったし、「ここを尖らせてみよう」みたいな幅も出てきて。色んな取捨選択ができるようになったのは大きいと思います。

――そして10月末からは久しぶりの国内ホールツアーがスタートします。

Aimer 来年(2025年)3月まで続くツアーなので、秋が始まったら一気に駆け抜けていきたいです。ツアータイトルの“lune blanche(リュヌ ブランシュ)”は、フランス語で“白い月”という意味なんですよ。“白月(びゃくげつ)”という日本語もあって、これは新月から満月に至る期間のことなんです。このツアーのテーマは、月の満ち欠けですね。どんなふうに欠けて、どんなふうに満ちるかはお楽しみということで(笑)。これから作っていく部分もあるんですけど、今回のシングルの曲も歌えたらいいなと思っているし、皆さんが好きであろう曲も持っていきたいと思っています。

――楽しみです。海外ツアーを経て、今のAimerさんの歌を体感できるツアーになりそうですね。

Aimer そうなるといいなと思っています。今、生まれ変わっているような感覚があって。その影響は次のツアーにも出るんじゃないかなって。日々を生きているなかで、「自分の力だけでは無理」「ここが自分の限界かもしれない」と思うことも全然あるんですよ。でも、今はそうじゃなくて。やっぱり自分を信じることが大切なんだと思います。

●リリース情報
Aimer
24thシングル
「Sign」
2024年8月28日発売

【初回生産限定盤(CD+BD)】

品番:VVCL2554-2555
価格:1,760円(税込)
「Sign」Music Video収録BD同梱
三方背ケース仕様

【通常盤(CD)】

品番:VVCL2556
価格:1,320円(税込)

【期間生産限定盤(CD+BD)】

品番:VVCL2557-2558
価格:1,760円(税込)
TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』描きおろしイラスト使用ミニポスター&三方背ケース仕様
TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』ノンクレジットオープニング映像収録BD同梱

【収録内容】
<CD>
1.Sign
(作詞:aimerrhythm 作曲:福島章嗣 編曲:玉井健二、百田瑠衣)
2.Wren
(作詞:aimerrhythm 作曲:南田健吾 編曲:玉井健二、南田健吾)
3.月影
(作詞:aimerrhythm 作曲:中野領太 編曲:玉井健二、中野領太)
4.Sign -Instrumental-(初回生産限定盤・通常盤に収録)
4.Sign -TV ver.-(期間限定生産盤に収録)

●ライブ情報
Aimer Hall Tour 2024-25 “lune blanche”

2024年
10月25日(金)千葉・市川市文化会館 大ホール
10月26日(土)千葉・市川市文化会館 大ホール
11月2日(土)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
11月3日(日)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
11月30日(土)宮城・仙台サンプラザホール
12月1日(日)宮城・仙台サンプラザホール
12月6日(金)愛知・愛知県芸術劇場大ホール
12月7日(土)愛知・愛知県芸術劇場大ホール
12月14日(土)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール
12月15日(日)神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール

2025年
1月12日(日)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
1月13日(月・祝)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
1月25日(土)京都・ロームシアター京都 メインホール
1月26日(日)京都・ロームシアター京都 メインホール
2月1日(土)群馬・高崎芸術劇場 大劇場
2月21日(金)大阪・フェスティバルホール
2月22日(土)大阪・フェスティバルホール
3月8日(土)東京・東京ガーデンシアター(有明)
3月9日(日)東京・東京ガーデンシアター(有明)

チケット価格:全席指定 8,800円(税込)

受付URL:
ぴあ https://w.pia.jp/t/aimer24-25tour/
ローソン https://l-tike.com/aimer/
イープラス https://eplus.jp/aimer/
※お申し込みに関する注意事項は受付ページにてご確認ください。

関連リンク

Aimer 公式サイト
https://www.aimer-web.jp/

Aimer 公式X
https://twitter.com/Aimer_and_staff

Aimer 公式YouTube
https://www.youtube.com/user/aimerSMEJ

TVアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』公式サイト
https://spice-and-wolf.com/