藤巻亮太が主催する“三世代が楽しめる”野外音楽フェス『Mt.FUJIMAKI 2024』の見どころと最大の魅力とは
今年もまた山梨県に、秋の訪れと共に素敵な音楽がやってくる。2018年にスタートし、今年で現地開催5回目を数える野外音楽フェス『Mt.FUJIMAKI』が、9月28日(土)に山中湖交流プラザきららで開催される。原点回帰の1DAY開催、百花繚乱の個性派アーティストがずらりと揃った今年のラインナップは、「三世代が楽しめるフェス」を標榜する『Mt.FUJIMAKI』にしかないエンタメ性あふれるもの。出演者であり、ハウスバンドのリーダーであり、フェス主催者である藤巻亮太に、『Mt.FUJIMAKI 2024』の見どころについてたっぷりと語ってもらおう。
――2018年から始まった『Mt.FUJIMAKI』も今年で 7年目です。コロナ禍を経て、現地開催は5回目になりますか。だんだんと歴史が積み重なってきましたね。
振り返ると、本当に錚々たる皆様が出てくださって、音楽を届けてくれたことに感謝と誇りを感じつつ、裏を返すと「今年も本当にいいフェスにしたい、しなければいけない」という思いでいっぱいです。
――他のフェスにはない、『Mt.FUJIMAKI』だけのカラーというものも、年々はっきりしてきているような気がします。
やっぱり地元でやっていることが大きいです。藤巻の地元である山梨の魅力を伝えられたらいいなという思いがあって、まずは県外から来られる方に、このロケーションとこの季節を楽しんでいただくことが一つ。本当に気持ちよく過ごしていただける季節で、夏の終わりではありますが、標高が高いので、ちょっと秋を感じながら、野外音楽フェスはこういう時期に聴いていただくのが一番気持ちいいんじゃないかな?と思っています。もう一つは県内の方に向けて、去年から「高校生以下無料」にしているんですけど、やっぱり若い子にも来てもらいたいし、親御さんも一緒に来ていただきたいし、(アーティストの)ラインナップを見ていただくとわかると思うんですけど、親子三代で来ていただいても楽しめるフェスにしたいと思っています。
――実際、そうなっていますね。それは現地で体感します。
お目当てのアーティストさんがいらっしゃったとしても、この環境で聴いていただくことで感じ方が変わることもあると思いますし、アーティストによっては藤巻バンドの中で歌っていただいたり、自分自身もそのコラボレーションを楽しみにしていますし、そういうセッションみたいなものも味わっていただけたらいいなと思いますね。
――“味わう”という言葉はまさに、食べ物も含めて、山梨の風土にぴったりじゃないですか。
そうですね。地産の食も含めて、楽しんでいただけるフェスだと思います。
――ちなみに、今年のぶどうの出来はどうですか(※藤巻の実家はぶどう農園)。
今年は(実家と)まだちゃんと話せていないので、めちゃくちゃカンで話していいですか(笑)。今年の夏は暑くて、たぶん雨が少ない。だから味が濃い、甘みの強いブドウができるんじゃないかな?と僕は思っていますけどね。美味しいと思います。山梨のフルーツは本当に美味しいですよ。最近は僕の周りで、農業を始める方も多いんです。それをサポートする姿勢が整い始めていることもあると思うんですけど、やっぱり生き方というか、子供がいる家庭は、どういう環境で育てていこうとか、そういう理由で山梨に戻って農業を始められる方が多いんです。
――それを受けとめる土地柄なんですね。
山梨には“無尽(むじん)”という文化があるんですよ。冠婚葬祭などでまとまったお金が必要になった時に、互いに助け合うことで住人同士のつながりが強くなるという、鎌倉時代に始まった独特の習慣なんです。現在は普通に飲み会化しているらしいんですけど、助け合いの文化が山梨にはもともとあって、『Mt.FUJIMAKI』も年々続けていく中で、県内の方が興味を持ってくださって、色々な意味でサポートしてくださる方が増えているということがありますね。
――素晴らしいです。農業を始めるといえば、オリーブ農園を作った人もいましたね。
そうなんですよ。(前田)啓介(レミオロメン/Ba)が作ったオリーブオイルがニューヨークの国際品評会で金賞を取ったりして、僕も食べましたけど、本当にすごく美味しい。なかなか数は取れないみたいですけど、前田屋のオリーブオイルはぜひどこかで味わっていただきたいなと思うぐらい素晴らしいですね。
――素敵なエールが出たところで、注目の『Mt.FUJIMAKI』の今年のラインナップを、一組ずつ紹介してもらおうと思います。その前に、過去2年間は2DAYSでしたけれど、今年は1DAYになりました。これについては?
(コロナ禍で)2年間現地開催できなかった中で、オファーして、OKしてもらっているんだけれども、実現できなかった方の分も含めて、2022年は2DAYSになったんですね。 そこで2DAYSでやることの良さも感じて、去年も2DAYSでやったんですけれども、もう一回初志貫徹で、1日の中で楽しんでいただけるフェスを目指そうと思って、今年は1DAY開催にしました。
――ある意味、原点回帰ですね。ではその、出演者を紹介しましょう。
■氣志團
氣志團
レミオロメンの頃から、いろんな形でご一緒させてもらったことがあるんですが、最近だと『サツマニアンヘス(THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL:鹿児島)』や、唐津のフェス(Karatsu Seaside Camp)でご一緒させてもらった時の、ステージを見た感動と、綾小路翔さんと会った時の圧倒的な人間力というものに、僕自身もすごく深くリスペクトを感じていまして。学ラン・リーゼントですけど、実は大人から子供まで皆さんが楽しんでいただけるライブといえば、氣志團さんなのかなと思って、今年の『Mt.FUJIMAKI』を大いに盛り上げてくださるんじゃないかなと思って、オファーをしました。それと、『氣志團万博』というものをあれだけ大きなところまで作り上げて、多くの方を巻き込んでというところが、自分は2018年からですけど、同じように地元に思いを馳せて始めたフェスなので、そういう部分でもリスペクトしかないです。僕自身も、そこからいろんなことを学ばせていただけたらという思いもあるし、お客さんには本当にただただ、氣志團さんのステージを楽しんでいただきたいなと思います。
■木村カエラ
木村カエラ
カエラさんも、レミオロメン時代からいろんなフェスやイベントでご一緒させてもらっているんですけど、自分のフェスに出てもらう関係としては初めてなので、すごく光栄です。NHKの『うたコン』でご一緒させてもらった時に、「Butterfly」と新曲を歌われて、そのステージがカリスマ性も含めて本当にかっこいいなと思ったんですね。それで、オファーさせてもらいました。気づくとキャリアも結構近くて、確か今年がデビュー20周年なんですよね。僕自身も「Butterfly」が好きで、ゲストボーカルで参加されていたサディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにお願い」も好きで、藤巻バンドで一緒に演奏してくださったらいいなと思っています。
■flumpool
flumpool
バンドとしてはちょっと下の世代になるんですけど、出てきた時の勢いがすごくて、カラフルなポップな感じが一つ抜けている存在だったので、ずっと意識をしていた存在でした。「君に届け」は、野外のステージで聴いたら本当に気持ちのいい曲だと思いますし、flumpoolのそういう、多くの人を巻き込んでいくようなステージを届けてくれたらいいなという思いで、オファーさせてもらいました。年齢は下なんですけど、そんな感じはしないというか、J-POPのあり方とロックのあり方がせめぎあっているところは、レミオロメンも通った道だったし、共感できる部分がたくさんあるバンドですよね。ちなみにボーカルの山村隆太くんとは、楽器屋でばったり会ったことがあります。しかも録音機材系の場所で、お互いに探している機材の話をしたこともありました。そういうことがあると、嬉しくて、ぐっと距離が近くなりますよね。親近感を覚えました。
■高橋優
高橋優
何年か前に、スペースシャワーTVの番組に出させてもらったことがあるんですよね。『ローカリズム』という番組で、高橋くんがゲストの地元に行って旅をするということで、山梨に来てくれて、一緒にバスに乗ったり、実家の近所の定食屋のラーメンを食べてくれたりとか(笑)。高橋優くんも地元の秋田をすごく大事にされているところからの企画だと思うし、それが大きいですよね。地元でフェスをやられているところと、あとは、アコギ1本で世界を表せるというところに、すごく大きなリスペクトを持っています。僕はバンドからソロになりましたけど、やっぱり違うんですよね、バンドのために作る曲と、自分で弾き語りをするために作る曲は。でも高橋くんの曲、それだけで成り立っていて、いろんな彩りを感じるし、歌声もそうですけど、自分がソロになってみてあらためてすごさを感じる方なので、今回出てくれて本当に嬉しいです。
■家入レオ
家入レオ
家入さんは『Mステ(ミュージックステーション)』で一緒になったのがきっかけで、その時に歌った曲が圧巻だったんです。「未完成」という曲で、内面をえぐるような、 すごくストイックな内容の曲だったんですが、その後にお話しした時はすごく気さくな方で、それがすごく印象的だったんですね。楽曲としてぐっと入り込む世界観と同時に、ある種の人懐っこさを持ってらっしゃる方なんだなと思って、すごく好感を持って、そこから家入さんの曲をたくさん聴くようになって。そうすると、内面と向き合っていくような曲もあるんですけど、ポップな曲や夏っぽい曲もあって、そういう意味でもいつかご一緒できたら嬉しいなと思っていました。聴いていて釘付けになるような世界観と歌唱を、ぜひ『Mt.FUJIMAKI』で届けていただきたいなと思います。
■斉藤壮馬
斉藤壮馬
壮馬くんは山梨出身で、同郷なんです。声優さんとして多忙な日々を極めていますけど、その中で音楽もやられていて、聴かせてもらった時に、ロックでありポップでありという世界がすごくかっこよかったんですよね。それと、同じ山梨出身の作家さんで神永学先生という、『心霊探偵八雲』シリーズを書かれている作家さんがいらっしゃって、その方を介して1回食事に行ったことがあるんです。そこで壮馬くんといろんな話をした時に、音楽と文学についてすごく造形が深いというバックボーンを感じて、ぜひ『Mt.FUJIMAKI』でご一緒したいと思ったんですね。人柄もナイスガイだし、楽曲の幅も広いので、壮馬くんが描きたい世界観を、地元で一緒に描けたらお客さんが喜んでくれるんじゃないかな?と思っていて、僕自身もとても楽しみにしています。同じ地元で同じ景色を見ながら育ってきた二人が、一緒にコラボレーションできるとなると、また何か彩れるものもあるんじゃないかなと思っています。
■Rei
Rei
何年か前にマーティン(ギターメーカー)のイベントでご一緒させてもらったんですが、その時から本当にすごいプレイヤーで、『Nice To Meet You !!』という僕のツーマンライブシリーズにも今年5月に出ていただいたんですけど、アメリカで生まれて、ジャズのビッグバンドに出会ったりする中で、日本語と英語を行き来しながら、でも“ギターが自分の感情を伝えるのに一番伝えやすかった”という話をしたのがすごく感動的で、小さい頃からギターが自分の表現としてある方なんだなと。年齢は若いんですけど、その言葉と演奏にすごく感動して、それを経て『Mt.FUJIMAKI』でもぜひともご一緒させてくださいとお願いしました。
――皆さん本当に、音楽的にも人格的にも、強さと深さを持った人たちばかりだと思います。お迎えする藤巻さんとしては、どんなステージを見せようと思っていますか。
僕自身がバンドアクトとして、どんなステージをお届けさせてもらえるかは、これから詰めていきますけど、みんなで楽しめるような盛り上げていける曲と、山梨を感じてもらえるような曲を演奏したいなと思っているので、どんな曲をやるかは、楽しみにしていてほしいなと思います。最初に皆さんをお迎えして、最後に送り出すまで、しっかりと勤めたいと思います。このラインナップですから、音楽を思う存分楽しんでいただいて、山梨を好きになって帰ってもらえるように頑張りたいと思います。
――そして、今年も「高校生以下入場無料」の企画は続くんですね。
はい、今年もやります。ただ高校生以下無料と言っても、親御さんが一緒に来ないと大変な部分もあると思うので、少しでも移動が楽になるように、シャトルバスをスタッフと検討中です。高校生以下だけでも安心して来られるようにと考えています。僕自身も中学時代に観たBUCK-TICKのライブとか、その頃に出会った音楽が多くの意味で人生を変えてくれたので、そういう意味でも、別にミュージシャンにならなかったとしても、その年代に観る生のライブは、ずっと心に残っていてもらえるんじゃないかな?と思うので。そういうところにも思いを馳せて、高校生以下無料にさせていただいて、親子3代で楽しんでもらえるように、家族でも来ていただけたら嬉しいなと思いますね。
――ほかにフードであったり、展示であったり、ステージ以外にも楽しめるものがたくさんあります。『Mt.FUJIMAKI』には。
フードは山梨の地のものにこだわっているので、飲食も楽しんでいただけたらなと思います。子供連れで来ていただく方も多いので、ステージの転換時間に子供が遊べるようなエリアをもう少し工夫できたらなとは思いますね。でもやっぱり子供たちも、音楽が始まるとピタッと足を止めて、聴いたりしているので、音楽の力はやっぱりすごいなと思います。それから今年の新たな取り組みとして、お世話になっている山中湖村役場の方々と一緒に、山中湖周辺の清掃活動もやりたいと思っていています。
――9月28日、今年も楽しみにしています。そしてとにかく、晴れますように。
皆さんの思いを集結していただいて、晴らしていただきたいですね。藤巻も頑張ります。気持ちのいい山中湖のほとりで、今年も最高の音楽を楽しんでいただけたらと思います。
取材・文=宮本英夫 撮影=菊池貴裕