延長十一回、タイブレークの末、早実に勝利した大社(C)日刊ゲンダイ

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木更津総合五島監督「ちょっといい投手が出てきたら…」

 夏の甲子園は19日に準々決勝4試合が行われるが、出場校の監督の間では反対意見も含めてかんかんがくがくの議論が巻き起こっている。

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 高野連が去る2日、熱中症対策として将来的な導入の検討を明らかにした「7回制」のことだ。

 前回大会から五回終了時に10分のクーリングタイムを設けるなど、熱中症対策を取っているものの、それでも連日、脱水症状により足がつる選手が続出。従来の9回から7回にすれば、それだけリスクが減るのは道理ではある。

 しかし、多くの監督や球界関係者から「7回制は果たして野球なのか」と反対意見が続出。困惑の声も多い。木更津総合(千葉)の五島卓道監督(70)もそのひとりだ。

「私なんて『七〜九回が本当の勝負だ!』と指導者の方々に言われてきて、選手に『3打席回ってくる間に対策を考えろ』と教えてきた身としては、どうすればいいんですかねえ(苦笑)。ちょっといい投手が出てきたら7イニングなんてすぐですよ」

 他の監督たちはどう考えているのか。

早実和泉監督「想像がつかない」、興南我喜屋監督「選手のレンタルはどうか」

 早実(西東京)の和泉実監督(62)は「7回制は想像がつかないですね」と、こう続ける。

「八回と九回がないんでしょ? うーん……例えば、それなりに良い投手が3人くらいいて、2イニングずつ投げてこられたら、なかなか打てないですよね。まあ、まだ導入されたわけではないですが……」

 興南(沖縄)の我喜屋優監督(74)は「好投手が多ければいいが、部員が少ない学校は不利になるのでは……」と前置きし、ユニークな持論を展開する。

「年々、学校数が減り、地方大会では何校かの連合チームも出てきている。だから、高校野球社会人野球のように、補強選手を導入してはどうか。いわゆる、選手のレンタルです。例えば、複数の地区の選手で構成されたチームが甲子園に出場すれば、それだけ多くの地区が盛り上がるじゃないですか。そうやって、いろいろな角度から考えていくのも必要だと思います」

智弁学園小坂監督「僕は賛成です。ただ……」

 智弁学園(奈良)の小坂将商監督(47)は反対に「強いチームが勝つとは限らない」と、自らの経験からこう話す。

「去年まで2年間、すでに7回制が導入されているU18W杯のコーチをさせてもらいましたが、とにかく試合展開がめちゃくちゃ早いんですよ。9回制だったら先発が後半バテて相手打線につかまることもありますが、7回ならそうそうバテない。こうなると好選手が多いからといって、油断はできなくなる」

 小坂監督はそんな7回制について「賛成」の立場だ。

「今でも投手の球数制限とかありますよね? 7回制なら、それもある程度はクリアできる。連盟の方々が導入すると言うならば、僕は賛成です。ただ……甲子園は各地方からの応援団が来るじゃないですか。勝てばいいですが、7イニングであっさり終わって帰る、というのは可哀想というか、ちょっとどうなのかなという気はしますけどね」

 先を見据えている監督もいる。

聖カタリナ浮田監督「企業が生き残れるかどうかと一緒」

 聖カタリナ(愛媛)の監督に就任する前は、地元の実業家だった浮田宏行監督(53)は、こう話す。

「企業が生き残れるかどうかと一緒なんですよ。これまでさまざまな社会情勢の変化がありましたが、優秀な企業は、そこにうまく対応して生き延びている。低反発のバットへの対応だってそうです。7回制が導入された時点で、『こんなの野球じゃない』なんて言っても始まらない。導入時点で、7回制の野球が出来ていないといけないんです。変化にすぐに対応できるよう、準備が出来ていないといけないんです」

 前出の和泉監督も言う。

「近年の高野連球数制限にしろタイブレークにしろ、熱中症対策を始めたなあと思ったら、すぐに導入している印象がある。7回制だって、案外早く決まるのではと予想しています。まあ、それに対して僕らはどうこう言う立場じゃない。7回制が決まったら決まったで、生徒が野球を楽しめる環境をつくるのが現場をあずかる僕らの役目ですから」

 現場からの反対意見が多かろうが、7回制は予想以上に早く実現しそうな雲行きだ。

  ◇  ◇  ◇

 7回制よりも、現場や高校野球ファンからは「リクエスト制度」の導入を求める声が以前から多く上がっている。それなのに、なぜ一向に導入されないのか。日刊ゲンダイが高野連を直撃すると、「意外な言い分」が返ってきた。

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