完全犯罪を企んだ容疑者家族の“誤算”を元刑事が解説「スーツケースに入れて川に沈めれば浮いてこないだろうという考え」 多摩川死体遺棄事件
昨年末、多摩川の河川敷に放置されたスーツケースの中から男性の遺体が発見された事件で、5月25日に男性の元交際相手の家族ら５人が殺人などの容疑で逮捕された。なぜ家族全員で犯行に手を染めたのか。完全犯罪を目論んだ容疑者らの“誤算”とは。リーゼント刑事こと元徳島県警警部の秋山博康氏が解説した。
遺体で発見された被害者男性は人気動画配信者の原唯之さん（46）。遺体はスーツケースに入った状態で発見され、遺体遺棄の疑いで逮捕されたのは、原さんの元交際相手・西郄舞容疑者（32）とその家族ら合わせて5人。原さんは手足を縛られた状態で、死因は窒息死とみられている。
舞容疑者は原さんと昨年3月から交際していたが、その後関係が破綻し、金銭トラブルがあったとされる。さらに、舞容疑者は「原さんの動画配信がきっかけで、私や家族が暴言を受けるなど、誹謗中傷されトラブルになった」と供述している。
捜査関係者によると、原さんが多摩川に遺棄されたのは昨年12月中旬とみられ、この頃に容疑者宅を訪れていたことがわかっている。その後、原さんを知る人たちの間では「行方不明になった」「何か事件に巻き込まれたのでは」と心配する声がSNSに書き込まれた。そして、原さんの遺体は12月29日に多摩川で発見された。完全犯罪を企んだのか、すでに死亡していた原さんのLINEを使って知人とやり取りするなど、偽装工作をおこなった疑いもあるという。当初、死体遺棄罪の疑いで逮捕された容疑者家族らは、その後、殺人の疑いで再逮捕された。
事件を取材した秋山氏は、容疑者家族らについて「遺棄した側は、完全犯罪を狙おうとしていたが、共犯関係者の誤算があった。スーツケースに鉄アレイなどを入れて、沈んだらもう浮いてこないだろうと思っていたが浮いてきた。日本では殺人事件のプロがいない。素人の共犯事件にはどこかに“誤算”がある。遺体を入れて川に沈めると、もう二度と浮いてこないだろう、浮いてこなかったら完全犯罪にできるという考えの犯行だったと思う」と推測。
「実際、遺体は必ず浮いてくる。いろいろな事件で経験したが、遺体にブロックをくくりつけて海に捨てると腐敗して、腐敗ガスが溜まると浮いてくる。なかには自転車をくくりつけて海に捨てたが、それも腐敗して、腐敗ガスで浮いてきた。だから今回もこのスーツケースに遺体を入れて鉄アレイを何個か入れたが、そのぐらいの重さだったら絶対に浮いてくる」
また、家族ぐるみでおこなわれた犯行に対し「共犯事件はいろいろあるが、やはり家族というのは、人間関係の絆が深い。家族の共犯の場合、首謀ができる。大体、主犯格は子ども。何かの被害に遭えば、親が子のために犯行を実行する。特に女性（娘）が主犯格なら、父親は溺愛しているケースが多いのでなおさら。子どもが何らかの被害に遭ったら、父や母、兄弟が手を組んで助けてやろうという共犯関係はよくあること」と説明した。
さらに、共犯事件において“離脱”することは「ゼロだ」と話す。「家族全員で殺害しようと共謀する。いつどこでどんな共謀をしたか、共謀は成立する。共犯事件で途中から共謀を離脱してというのはまずない。特に家族関係だったらない。『いや、そこまでは』と思うかもしれないが、『やめろ』とは言わない。止めに入ることもない。自分を制御できないというか…」と自身の経験を踏まえて語った。
動機については「殺害の動機は、犯人によって違う。ちょっと頭を撫でられただけで、包丁を持っていて殺す。そんな短絡的な動機の事件も過去に担当した。今回のケースは、舞容疑者を助けるために殺害すると、共犯者（家族ら）が決めたのではないか」と推察した。
（『ABEMA的ニュースショー』より）
