月は人類にとっての新たなフロンティアとなる可能性を秘めており、すでに月面基地だけでなくデータセンターや浮遊式鉄道などを建設する計画も発表されています。Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙開発企業・Blue Originの子会社であるHoneybee Roboticsは、月面に「自由の女神より高い街灯兼ソーラーバッテリー」を建設する計画を進めています。

Researchers want to build 'streetlights' on the moon - and they'd be taller than the Statue of Liberty | Live Science

https://www.livescience.com/space/the-moon/researchers-want-to-build-streetlamps-on-the-moon-and-they-d-be-taller-than-the-statue-of-liberty

Honeybee Roboticsが進めている月面の街灯建設計画は、「Lunar Utility Navigation with Advanced Remote Sensing and Autonomous Beaming for Energy Redistribution(高度なリモートセンシングとエネルギー再配分のための自律ビームを用いた月ユーティリティ・ナビゲーション:LUNARSABER)」という名称で呼ばれています。

月の自転周期は約27日であるため、昼と夜がそれぞれ約14日も連続して続きます。LUNARSABERの基本的なアイデアは、「月の長い昼の間に太陽光を蓄え、夜に光を放って周囲を照らす」というものです。すでに国防高等研究計画局(DARPA)から資金提供を受けており、さまざまな研究開発が進められているとのこと。

Honeybee Roboticsが公開した以下の動画で、LUNARSABERの主任研究者であるヴィシュヌ・サニゲパリ氏がプロジェクトについて解説しています。

LUNARSABER: Powering a Human Presence on the Moon - YouTube

サニゲパリ氏は、「LUNARSABERは月面最初のインフラストラクチャーになるでしょう。これにより電力・通信・照明が、月面上にあるすべてのペイロードにとって非常にアクセスしやすくなります」と語ります。



月は非常に過酷な環境であり、真空に近く、気温の寒暖差が激しく、地形の凹凸も多く、南極付近には20億年近く光が届いていない場所もあるとのこと。



月面探査を困難にしているのが、月には基本的なインフラストラクチャーが整備されていないという点です。これにより、さまざまな月面探査機は自ら電力を確保する必要に迫られており、太陽光の当たらない夜間には活動停止することもあります。



そこで役に立つのがLUNARSABERです。



LUNARSABERは月面における街灯として機能するだけでなく、電力網としての役割も果たすとのこと。



LUNARSABERは起伏の激しい月面でも太陽光を浴びられるように、「ソーラーパネルを地表から持ち上げる」というシンプルなアイデアを採用しています。



LUNARSABERに搭載するソーラーパネルの配置には2つのパターンがあります。



1つ目は、折りたたみ可能な蛇腹式のソーラーパネルで、これを展開することにより360度どこからでも太陽光をキャッチすることが可能です。



2つ目は、帆のように展開するタイプのソーラーパネルです。



地表から離れた場所でソーラーパネルを展開することにより、太陽光から効率的に発電可能になります。



構想されているLUNARSABERのタワーは高さ100mで、これは自由の女神像(約93m)を超える高さです。



タワーの建設には「DIABLO」というHoneybee Roboticsのテクノロジーを利用します。これは平らな金属製のバンドを折りたたんで円筒形のチューブに収納し、自動で展開してそびえ立つタワーになるというもの。



宇宙船はタワーの筒部分を収納した基部を月に運ぶだけでOKというわけです。



高さ100mのタワーは最大37km先まで見通すことが可能。



これにより、カメラや通信システム、投光器によるワイヤレス給電といったサービスを広範囲に提供できるとのこと。



タワーの基部には直接ローバーなどが充電できるポートもあるそうです。



サニゲパリ氏は、LUNARSABERを展開すれば電力・通信・熱管理といった基本的な需要を提供できるため、月面基地建設にかかるコストが安くなると主張しました。