クルマのシフトレバー横の「謎のボタン」便利だったのになぜ消えた? ATの進化とともに「O/Dボタン」が絶滅したワケ
最近のクルマでO/Dボタンを見かけなくなったワケ
いまでは新車販売の98%をAT車が占めているともいわれています。そしてそのAT車も進化しており、昔あった機構がなくなってしまうこともあるのです。
その代表格とも言えるのが、シフトノブ周辺に設置されていた「O/D(オーバードライブ)」ボタンです。
近年では目にする機会がめっきり減り、その存在すら知らない人も増えています。
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しかし、このO/Dボタンには上手な使いかたがあって、意外に便利な機能だったのです。
なぜO/Dボタンが絶滅しつつあるのでしょうか。
クルマのトランスミッションには「MT(マニュアルトランスミッション)」と「AT(オートマチックトランスミッション)」があり、前者が手動で変速操作を行うのに対し、後者は自動でそれをおこなう機構です。
AT車では煩わしいクラッチ操作から解放されるというメリットがあり、信号待ちや渋滞によるストップ&ゴーの多い日本の道路事情に適していたことから、1980年代に一気に普及が進みました。
AT車にはクラッチの代わりとなるトルクコンバーターが備わっており、これはトルクの増幅機能を持っています。
かんたんにいえばギア比(ギアとギア切り替えるタイミング)をワイドに取ることができたため、エンジンの回転数を低めに抑えるために、かつてはハイギアード(高めのギア比)なセッティングをするクルマがほとんどでした。
ただし高速巡行でエンジン回転数を抑えられる反面、アクセルを踏んでも十分な加速が得られなかったり、アクセルを緩めてもエンジンブレーキがほとんど効かない状態になることがあり、これを解消するために設けられていたのがO/Dボタンです。
かつては3速ATや4速ATが当たり前で、1つのギアで幅広い速度域をカバーしていたことになります。
そしてO/D(オーバードライブ)とは、いわゆる「トップギア」のこと。アクセルを踏み続けていると、あっという間にトップギアに自動変速されるセッティングだったのです。
O/Dボタンは通常はON状態で、ボタンを押すと「オーバードライブ解除」、すなわち任意でトップギアを使わない状態にすることができます。
「トップギアを使わない状態=1段低いギアに落とす」ことで、ブレーキを踏まずに減速できたり、ギアを落として力強い加速を得ることが可能となり、つまりO/Dボタンは、ちょっと加減速したいときに使う“シフトダウンボタン”だったというわけです。
そんな便利なO/Dボタンがなくなった理由は、ATの多段化や精密化によるものとされています。
今では6速ATですら珍しくなくなりましたが、それまでのワイドレンジだったギア比がより細分化され、さらに精細に制御することが可能になりました。
加えて、AT車に「MTモード」が搭載され、任意のギアを選べるようになったため、O/Dボタンを採用する必要がなくなったというわけです。
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近年の国産車でATに代わり主流となっているCVTにも、O/Dボタンの効果に似たようなモードが用意されているクルマがあり、「S(スポーツ)モード」といった名称で採用されています。
主に、ギア比が下げてよりキビキビと加速できる、またはアクセルオフで減速できる機能として搭載されているようです。