なぜ「背の低いミニバン」姿消す? 昔は各社の定番モデルだったのに! イマは全高170cm以上の「背の高いミニバン」ばかり… 理由は?
使い勝手はよかったのに…定番だった背の低いミニバンはなぜ消えた?
ミニバンといえば、背の高いトール型ミニバンを思い浮かべる人が大多数でしょう。
しかし以前は、ロールーフ型とも呼ばれる背の低いミニバンもたくさん存在していました。
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なぜ近年のラインナップは背の高いミニバンがほとんどなのでしょうか。
いつの間にか、背の低いミニバンはほとんど見なくなり、現在はトヨタ「シエンタ」、「ノア/ヴォクシー」、「アルファード/ヴェルファイア」、「グランエース」。
ホンダ「フリード」、「ステップワゴン」や、日産「セレナ」、「エルグランド」や三菱「デリカD:5」といった全高1700mm以上のミニバンが主流です。
なぜ全高1700mm以下の背の低いミニバンは姿を消したのでしょうか。
ロールーフ型ミニバンの人気の火付け役は、1994年に登場した初代ホンダ「オデッセイ」(全高1660mm-1690mm)でした。
各メーカーはオデッセイの対抗馬として乗用ミニバン開発へ本格的に着手し、トヨタからは「イプサム」「ウィッシュ」「アイシス」「プリウスα」などが登場。
日産で有名なのは「ラフェスタ」「プレサージュ」。マツダには「プレマシー」「MPV」が存在し、三菱には「グランディス」、スバルには「エクシーガ」がありました。
長らく市場にはロールーフ型とトール型のミニバンが共存していました。
しかし徐々にトール型ミニバンに人気が移り、それに従ってほとんどのメーカーがロールーフ型ミニバン開発に見切りをつけます。
オデッセイを擁するホンダは「ストリーム」に加え、実質的な後継といえる「ジェイド」を2020年まで販売。
現在もオデッセイを販売するなど、ホンダは各メーカーのなかで最後まで背の低いミニバンの開発にこだわっていたメーカーです。
ロールーフ型とトール型のミニバンでは具体的に何が違うのでしょうか。ボディサイズと室内寸法の違いから比べてみましょう。
オデッセイの対抗馬として2001年〜2009年まで販売された2代目イプサムのボディサイズは、全長4650mm×全幅1760mm×全高1660mm。室内寸法は、長さ2755mm×幅1505mm×高さ1250mmです。
2003年〜2008年まで販売されたセダン並に低い全高が特徴の3代目オデッセイのボディサイズは、全長4765mm×全幅1800mm×全高1550mm、室内寸法は、長さ2790mm×幅1535mm×高さ1220mmとなります。
これに対して、現行型のノアとステップワゴンのボディ全高は1895mmと1840mm。室内高はノア1405mm、ステップワゴンが1410mmです。
こうして比較すると、全高や室内高は200mmほどの違いしかないことがわかります。
しかし車内の頭上空間は、室内幅の広さよりも開放感に直結するため数値以上に大きな影響があります。
またロールーフ型ミニバンの多くはヒンジドアであり、日常的な使い勝手では電動スライドドアが備わるトール型ミニバンに軍配が挙がるのは誰もが知るところでしょう。
快適性と利便性に的を絞れば、トール型ミニバンの方が明らかに勝るようです。これがロールーフ型ミニバンが消滅した理由なのでしょうか。
背の低いミニバンが消滅したのは必然! 今後人気が復活する可能性は?
ロールーフ型ミニバンが、トール型ミニバンにとって代わられたことについて、トヨタ広報部の担当者は次のように話します。
「イプサムやウィッシュを始めとする背の低いミニバンを様々なライフスタイルにスマートに対応できるクルマとして、ライフステージにかかわらず幅広いお客様に受け入れられていました。
しかし時代のニーズやデザインのトレンド、市場動向が変化したため、背の低いミニバンの販売数は少なくなっていきました。
代わりに『乗り降りしやすいスライドドア』や『多くの人/荷物を載せられる広い車内空間』などのミニバンにしか実現できない嬉しさを、ファミリー層を中心にした背の高いミニバンの需要が大きくなりました」
つまり、現在に至るまでのこうしたミニバン市場の変化は、時代や環境変化における自然淘汰と言えるでしょう。
またロールーフ型ミニバンの消滅には、クルマの技術進歩や日本特有の交通環境も関係しています。
クルマは全高を高くするほど重心位置も高くなるため、安定性を確保するためにはサスペンションを硬く締め上げなければならず、乗り心地は悪化する傾向にあります。
高い乗り心地や安定感はロールーフ型ミニバンの数少ない優位な点でした。
そのため、欧州をはじめとする平均速度が高い国では、MPV(マルチ・パーパス・ビークル)と呼ばれるロールーフ型ミニバンに近いクルマが今でも主流です。
その点、日本は走行速度が低いため、全高がある程度高くとも大きな問題になりません。
それに加え、以前に比べてプラットフォームやサスペンション、タイヤの進化や車両制御技術の進歩により、現在は背の高いクルマでも乗り心地や直進安定性が確保しやすくなっています。
こうした理由もあって徐々にロールーフ型ミニバンの存在意義は薄れ、現在は室内空間が広く便利で快適なトール型ミニバンが主流になったようです。
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今後、再びロールーフ型ミニバンの人気が再燃する可能性はあるのでしょうか。
ロールーフ型ミニバンは、快適性と走行性能を両立したい人にはベストなクルマです。しかし、その需要は市場全体でみれば決して多くありません。
しかも、多人数乗車可能なクロスオーバーSUVで代替可能となっているため、かつてのような人気を取り戻すのは難しいと思われます。