室外機が盗まれた場所(餃子専門店『青春餃子』店主提供)

 各地で気温35℃以上の容赦ない暑さが続く日本列島。最近、熱中症リスクを乗り切る命綱・エアコンの「室外機」を盗む、迷惑きわまりない窃盗事件が増加傾向にあるという。

「なぜ室外機が狙われるかというと、単純に屋外にあって盗みやすいためです。ボルトやパイプで固定されているとはいえ、容易に切断可能ですしね。

 犯罪者たちの狙いは、機器の内部に使われている銅やアルミニウムなどの金属部品。これらは自動車やIT機器などあらゆる産業に不可欠ですが、価格高騰と供給不足が続いています。

 高値で買い取る金属リサイクル業者は多く、犯罪者たちがこぞって盗品を持ち込んで売却しているんです」(警察関係者)

 その室外機の窃盗被害にあった1人が、茨城県常総市で餃子専門店『青春餃子』を経営する石川昇太さんだ。

「この暑い時期に、エアコンなしで過ごすとどうなるか、考えたらわかりますよね。盗んだ犯人にも味わわせてやりたいですよ!」(以下「」内は石川さん)

 本誌取材に応じ、強い憤りをあらわにする石川さんだが、同店が盗難被害にあったのは先週7月18日のこと。当時の状況を詳しく聞いた。

「ウチは店とは別に、1kmほど離れた場所に餃子を作るための仕込み所をもっているんです。ところが7月18日早朝、その仕込み所に行くと、24時間エアコンつけっぱなしのはずなのに冷房がまったく効いてなくて止まったまま。

 スイッチはついているのに冷風が出ていないから、おかしいなと思って外に確認に行ったところ、コードから切られて室外機を丸ごと盗まれていたんです」

 仕込み所のある一帯は交通量が多いものの、犯行は深夜におこなわれたと見られる。

「以前、空き巣に入られたことがあり、そのときの経験から警察は当てにならないと思い、通報はしていないんです。室外機が返ってくればいいけど、仮に犯人が捕まっても、きっと返ってくることはないでしょうから。

 まさか室外機が盗まれるとは思いもよらず、なんの対策もしていませんでした。盗難されたことを店のXに投稿したところ、いろいろな人から『ウチも被害にあった』という情報が寄せられました。どうも常総市周辺で、似たような盗難が多発しているそうです」

 室外機がなくなったことにより、業務にも多大な支障が出ている。

盗難以前に、9月末で飲食店としての営業を終了し、仕込み所を閉めることが決まっていたんです。なので、新しいエアコンを買いなおすわけにもいかなくて……。

 エアコンなしで作業できる暑さではないので、そこでの仕込みはやめて、今は店のほうで餃子を作っています。今後は餃子製造業に専念する予定ですが、仕込みの体制が整うまで、2人雇っていた従業員にも休職してもらいました。仕込める餃子も4分の1の量に減らさざるを得ず、泣き寝入りを強いられています」

 この種の室外機窃盗被害に対し、隣県の埼玉県警・生活安全総務課が運用するXアカウントは7月22日、「室外機、給湯器盗難に注意」と題して次のような注意喚起を行った。

《県内では、室外機や給湯器が盗まれる被害が増加しています。被害に遭わないために《室外機、給湯器を盗難防止用ネジやワイヤー錠で固定する・防犯カメラやセンサーライトを設置する・敷地内に入られないよう門扉等を施錠する》などし、不審者を見かけた際は、直ちに110番通報をお願いします》

 猛暑下では命の危険に関わる犯罪だけに、防犯を呼びかけるこの投稿には多くの憤慨の声が寄せられている。

《室外機すら盗まれる時代に、、猛暑に盗むとか殺人に近いな》

《ネジとかワイヤー錠とか防犯カメラとかセンサーライトも持っていかれそう》

 なかには、

《次は自動販売機が突然消えるフェーズに行くと思います》

 といった声も。なんとも世知辛い世の中になったものだ。