「畳スピーカー(TTM-V20)」

熊本県・八代産のい草・畳表の再興をめざす八代産畳表認知向上・需要拡大推進協議会は、八代産の畳にスピーカーを内蔵し、畳から音と振動が発生する「畳スピーカー(TTM-V20)」を、7月4日に発売した。価格は249,800円(税別・送料別)。畳縁やサイズ、形状のオーダーメイドも受け付ける。販売元は山中産業。

一般発売にあわせ、東京・原宿の東急プラザ原宿「ハラカド」でメディア向け体験会も開催された。

写真奥の畳が「畳スピーカー」

4基のボディソニックスピーカーを内蔵

同推進協議会と日本音響研究所が共同で開発したもので、畳の中に、人の可聴域の下限である20Hz周辺の音域を得意とする90mm径のボディソニックスピーカーを4基内蔵。畳に“ごろ寝”すると全身で音と振動に浸れるという。

オーディオテクニカの60周年記念イベント「Analog Market」でも活用されたという

約9カ月の試行を経て2022年にプロトタイプを発表すると、多くの反響があり、人気老舗銭湯「小杉湯」やオーディオテクニカのイベント「Analog Market」などで活用されたとのこと。

付属のBluetooth対応アンプ

畳スピーカーからはオーディオケーブルのみが出ている

電源はアンプから供給される

音源はBluetooth経由で再生。出力200WのBluetooth対応のアンプが付属する。畳サイズは1,760×55×880mm(幅×奥行き×高さ)。畳スピーカーからはオーディオケーブルのみが出ており、これを付属アンプに接続、アンプからの電源供給で稼働する。

設置時の配線について、日本音響研究所の鈴木創所長は「畳は柔らかい素材なので、下にケーブルを這わせても、その形状に馴染んでくれる。ケーブルを這わせたことで畳がデコボコしてしまうことはない」とした。

プロトタイプでは6基のユニットが搭載され、各ユニットに1基ずつアンプが必要だったが、「数を減らしても十分な体験ができると判明した」ため、量産モデルではユニット数を4基に削減し、すべてのユニットをひとつのアンプで駆動できるようにした。また上述のとおりBluetooth受信にも対応するなど、改善・アップデートが加えられている。

用途としては、自宅の和室をシアタールーム化するなど「休憩所等でのリラックスシーンから、迫力ある音楽や映像作品の鑑賞まで、様々な用途での活用が可能」とのこと。

八代産畳表認知向上・需要拡大推進協議会の續良彦氏

八代産畳表認知向上・需要拡大推進協議会の續良彦(つづき よしひこ)氏は「熊本県は、い草の栽培面積、畳の生産量が全国のほとんどを占める日本一の産地です。なかでも豊富な水、温暖な気候など、い草の栽培に適した条件が揃っている八代地域は国産い草畳の大部分を生産しており、日本一のい草産地として、日本の伝統文化である畳を支えている」と語る。

「しかし、近年は国産畳の需要減少や価格の低迷などが原因となって、い草の生産者・生産量はともに減少しております。全国の畳表生産枚数は、全盛期が平成元年で、当時と比べると約4%まで激減しており、このままでは国産い草畳表の絶滅が危惧される状況です」

プロダクト名の由来も紹介された

「このような危機的状況のなか、畳の需要拡大の一手として、畳の新しい活用のされ方を作り、畳本来の良さを再発見してもらうためのプロダクトを開発しました。それが畳スピーカー、TTM-V20です」

日本音響研究所の鈴木創所長

また、日本音響研究所の鈴木所長は、「椅子に振動スピーカーを仕込んだ製品は市場にもありますが、ひとりしか座れません。畳スピーカーなら複数人で使えます」と畳スピーカーの利点を説明。「アンプで低音や高音を調整することで振動の強弱も変わります。コンテンツやシチュエーションに合わせて調整していただければ」とした。

なお、7月4日時点でこの畳スピーカーを試聴・体験できる場所はないものの「今後体験できるような場所は設けていきたい(續氏)」とのことだった。

音を聴いてみた

右側が「畳スピーカー」。左側2枚は通常の畳

メディア向け体験会の会場では、畳スピーカーが1枚、通常の畳が2枚敷かれていたが、オーディオケーブルが出ている点を除けば、外観上の違いはなく、通常の畳に畳スピーカーが混ざっていても違和感を感じることはなさそうだった。鈴木所長によれば、ほかの畳にも振動が伝わるため「6畳くらいであれば畳スピーカーは1枚で十分」とのこと。

左が畳スピーカー、右が通常の畳。厚みに違いはない

畳スピーカーに乗っていなくても流れている音を聴くことは可能。畳スピーカーの上に乗ると、音に加えて振動が伝わってくる。特に振動スピーカーの真上に立ったり、座ったりすると、体の芯に届くような振動を感じることができた。

なお、付属するアンプは専用品ではないため、サポート対象外となるものの、より高性能なアンプと組み合わせることも可能とのことだった。

畳スピーカーに“ごろ寝”すると、音と振動に浸ることができる