暑い夏、部屋に風を取り込もうと窓を開ける人は多いだろう。

 しかし、注意を怠れば“痛ましい事故”の原因となってしまう可能性もある。

厚生労働省の『人口動態調査』による最新データでは、2016年から2020年までの5年間における、9歳以下の子どもの建物からの転落による死亡事故は21件。

 時期的には『5月〜6月』と『7〜8月』がそれぞれ7件ずつと、もっとも多く、初夏から夏にかけて転落事故が多いということになります」

 こう話すのは、消費者庁消費安全課の担当者だ。

 やはり子どもの転落事故の場合、窓やベランダからの転落が多いという。

「常時、窓を開けていたとしても、それが即、転落する理由にはなりません。付近に足場になりそうなものがあることも、事故原因としては大きいです。そこを注意することで、事故をできるだけ減らせるよう、消費者庁としても呼びかけをおこなっています」(同前)

 実際に2024年4月には、広島市の53階建てマンションの中層階のベランダから女児が転落し、亡くなったが、これも部屋にあった踏み台を、女児が自分でベランダに運び、柵を乗り越えて起きた事故だった。

 6月20日、消費者庁の消費者安全調査委員会が公表した転落事故に関する経過報告では、1993年から2023年までの31年間の、9歳以下の転落死は170件に上る。

 そのうち、ベランダからの転落事故の34%は、「大人が在宅」のときに発生していたという。

 消費者安全調査委員会の担当者はこう話す。

「米国では、子どもが住むアパートへの『窓ガード』の設置を法令上、義務化しており、それにより転落事故も減少しています。日本でもそういったハード面の対策は参考にしたいと思っていますが、検討している段階までは至っていません」

 転落事故を防ぐために、消費者庁では6点の確認ポイントを呼びかけている(本文末尾に記載)。

 また、尊い命が失われる可能性があるのは人間だけではない。

「ベランダから猫が転落して亡くなるという話も少なくないですよ」

 こう話すのは、ペットの転落防止用ネットを扱う業者だ。

「2階、3階の高さから落ちても骨折しますし、それ以上の高さになれば、命を落とす確率は非常に高まります。

 犬の転落事故の例は少ないですが、猫は多いと聞きますね。猫はベランダの手すりにひょいと上がったりしたときに、そこで思わず滑ってしまい、落ちることがあるんです。それを避けるためにも、窓やベランダに転落防止用ネットを張ってほしいです」(同前)

 最近では「保護猫」の譲り受けの際に、ベランダに転落防止用ネットを設置するかどうかを確認するボランティア団体も多い。

 万が一のとき後悔しないように、備えはしておきたいところだ。

【消費者庁の事故防止ポイント】

<窓やベランダ周辺の環境づくり>

1.窓やベランダの手すり付近に足場になるようなものを置かないようにしましょう。特に、エアコンの室外機の置き場所は工夫しましょう。

2.窓、網戸、ベランダの手すり等に劣化がないかを定期的に点検しましょう。

3.窓を閉めていても、子どもが勝手に窓を開けないよう、窓や網戸には、子どもの手の届かない位置に補助錠を付けましょう。換気をする際も同様です。

<子どもの見守り・子どもの教育

1.子どもだけを家に残して外出しないようにしましょう。

2.窓を開けた部屋やベランダでは子どもだけで遊ばせないようにしましょう。

3.窓枠や出窓に座って遊んだり、窓や網戸に寄りかかったりさせないようにしましょう。