仕事ができるならまだしも、長男は工場でクレーンを運転している際に、操作を誤って壁を壊してしまったらしい。3回も連続で壊した挙句、最もあってはならない爆発事故も起こしてしまったのだという。

従業員からはクレーム……というより、ストライキが勃発。ついに社長の右腕だった番頭さんからは「あの長男では、この会社は二代で潰れる。もう私は辞めます」と言われてしまったらしい。

◆退職引き止めのために給料を引き上げ、会社は赤字に

「番頭さんが辞めたら、昔からいた従業員さんたちもゾロゾロと退職届を出してきたんです」

彼らの給料をあげることで、何とかその時は引き止めたという。しかし、業績が上がったわけでもないのに人件費だけが上がったので、赤字に転落してしまったとのこと。長男はさておき、次男に継がせることはできなかったのだろうか?

「次男を大学で上京させたら、当時の彼女の家に気に入られて、婿養子に入れられてしまいました。もうこっちには戻ってこないと言われています。次男の方が優秀だったんですけどね」

跡継ぎどころか、会社の存続自体も危ないのだという。今では後継者でなく、会社を買ってくれる先を探すことも検討しているそうだ。

◆跡継ぎとしては難ありだが、人としては優しい一面も

トンデモない行動をし続ける社長息子たちだが、ある意味では何事にも縛られず、のびのびと自由に生きているとも言える。筆者はどちらの社長息子にも銀行員として会ったことがあるが、2人とも共通して根は優しく正直で、人としては好印象だった。しかし跡継ぎという目で見ると、どうしても否定的にならざるをえない。彼らにとって幸せになる道が見つかることを祈るばかりである。

<文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother