※写真はイメージです(以下同)
 男性育休や育児・介護休業法の改正が話題となる一方で、小さな子どもを育てている人を“子持ち様”と呼び、子育て世帯が職場や社会から支援を受けることに不満を漏らす“子持ち様論争”がSNSを中心に勃発。職場や社会の課題が浮き彫りとなっています。

 今回は、子育て中の人への不満から、産休や育休を取得しようとする職場の同僚たちにイジワルをしていたこともあるというヒデ子さん(仮名・42歳)に話を聞きました。

◆子育て中のママたちへの不満がポロリ……

「子どもがいる人は、繁忙期でも関係なく『子どもの熱が出て、保育園が預かってくれない』と休むので、出勤しているメンバーでなんとかしないといけない。複数のママが繁忙期に休むことも結構あり、正直イライラしていました」

 そのような状況が積み重なり、ヒデ子さんは子育て中のママたちに不満を募らせていったのです。そしてついには、心の中に溜めていた不満を職場で口に出してしまいます。すると、想像もしていなかった共感の嵐に包まれたのでした。

「口に出すまで、自分は心の狭い人間だと思っていたし、そういう自分に嫌気が差すこともあったほど。でも、『わざとかと思うぐらい繁忙期に休むよね』『こっちは忙しいのに』『少しはこっちの身にもなってほしい』と、みんな不満タラタラでした」

◆思わぬ共感を得て発言がエスカレート

 思わぬ共感を得たことで、日を追うごとに発言が過激になっていったというヒデ子さん。子どもを持たない職場の同僚から支持を受けたこと、そして年数が経って自身のキャリアが上がっていったことで、言動はさらにエスカレートしてしまいます。

「最初は同僚や部下たちと、今でいう“子持ち様”たちへの不満や悪口を陰で言って発散していました。でもそのうち、タイミングを見計らって本人にチクチク嫌味を言うようになっていたのです。思い返せば、私は最悪の上司だったと思います」

◆直接的な批判はしないが遠回しに圧をかける

 ヒデ子さんは、子育て中のママ社員たちとの会話途中に「あ〜あ、もうすぐ繁忙期だね。さすがにこの時期に休む非常識な人はいないと思うけど、子どもがいると大変そう。あ、でも、あなたのところは両親が近くにいるものね。頼りになるわ〜。期待してる」と、チクチク。

「子どもを理由にした欠勤について直接的に批判すると問題になったりするので、遠回しに圧をかけ、休みづらい環境づくりに力を入れていました。そういったこともあり、辞めていったママ社員もたくさんいます」

残業するのは自分たち。不満がわくのは当然

 それでも、胸が痛むのは一瞬だったとか。なぜなら、「繁忙期でなくても仕事が忙しいのに、休まれると全部こちらにのしかかってくるので、自然と不満や怒りがわいてくるのです。こちらは友だちや家族との約束も断って残業するしかないのですから」と続けます。

「そのせいで歴代彼氏からは浮気を疑われ、フラれたこともあります。いま思えば、そういった不満や彼氏が長い間できない僻みといった歪んだ気持ち、文句を言いたくても言えない同僚や後輩たちの代弁をしている自分に酔っていた部分もありました」

◆会社側は“ママ社員にやさしい職場”をPR

 そんなヒデ子さんの気持ちとは裏腹に、会社はママ社員たちにやさしい職場をPRした求人を打ち出すようになります。子どもが熱を出したときや学校行事などに寛容な会社だと強調していましたが、内情は違いました。

「子どものいない社員が残業や無理をして、仕事を終わらせるという状況が続いていました。そのため、『彼氏ができた』とか『結婚の話も出ている』と聞くと、結構大変なプロジェクトのリーダーに指名したりして、社員と彼氏が別れることを祈ったほどです」