たとえばイベントなどでスピーチをするとき、ChatGPTにチェックしてもらえば、炎上を回避することができるかもしれません(写真:Graphs/PIXTA)

発言者が何気なく放った不用意なひと言が“炎上”するケースが後を絶ちません。しかし、ChatGPTなどの生成AIにスピーチの草稿作成を手伝わせたり、スピーチのチェックをさせたりすることで回避することができるのです。生成AIの活用を教えるデジタルハリウッド大学教授の橋本大也氏に、有料版のChatGPT Plusの利用法を解説してもらいます。

※本稿は橋本大也著『頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方』から一部抜粋・再構成したものです。

説明する内容を作ってもらう

難しい話題をわかりやすく、説得力ある形で説明するには、たとえ話が有効です。

とはいえ、あなたがその話題に明るければ明るいほど、聞き手にとって理解しやすいたとえ話を作るのは、かえって難しいもの。ここではChatGPTの力を借りて、どんな人にも伝わるような、たとえ話を作ってもらいましょう。

ここでは、

<プロンプト>
インフレの仕組みをわかりやすい、たとえ話で説明してください

とリクエストした例をご紹介します。

さっそくChatGPTは、次のような答えを返してきました。

[User]インフレの仕組みをわかりやすい、たとえ話で説明してください。

[GPT]あなたが小さな島の住人で、島民たちは食べ物やサービスを買うために貝殻を使います。たとえば、1つのパンを買うのに1つの貝殻が必要です。

ある日、島のリーダーが海から大量の貝殻を見つけて、全ての島民にそれを配ることにしました。これで1人当たりの貝殻の数が増えました。島民たちはこれに喜び、自分たちがもっと多くのものを買えると思いました。

しかし、パン屋もまた貝殻が増えたことに気づきました。島民全員が一度にパンを買おうとすれば、パンが足りなくなることを恐れ、パン1つあたりの貝殻の価格を2つに上げることにしました。

これがまさにインフレの仕組みです。通貨の量が増えると、その価値は下がり、物価(パンの価格など)が上がる傾向があります。結果として、人々は以前と同じ量の貝殻で、以前よりも少ない物しか買えなくなります。

これがインフレで、物価が全体的に上昇する現象を指します。

このようにたとえ話を使って、わかりやすくインフレの仕組みを説明してくれるわけです。

画像を生成してもらう

<プロンプト>
このたとえ話を画像にしてください

と入力すると、貝殻の上に乗った人が「貝殻がたくさん見つかったぞ」と叫んでいるような画像を生成してくれます。


『頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方』P105より

他にもたとえば、「ピグマリオン効果」について聞いて、同じように画像にしてもらうと、このような画像が生成されました。


『頭がいい人のChatGPT&Copilotの使い方』P105より

炎上しそうな文章を指摘してもらう

生成AIは文章を読んで中身に問題がないか確認する能力があります。

たとえば、企業のリリースや社長のスピーチの予定原稿を確認させて、コンプライアンス、ポリティカル・コレクトネス、ダイバーシティなどの問題がないかを確認させて、懸念事項を指摘させることができます。

これは私が作ったスピーチ用のメモです。

秘すれば花なり

すべてのクリエイターにおすすめしたいのが『現代語訳 風姿花伝』(PHP研究所)である。風姿花伝はご存知のように、600年前に能を極めた世阿弥が書いた芸能指南の書。明治になるまで一子相伝で伝えられてきた。この書の中でも最も秘匿性が高い「口伝」で語られた「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」というフレーズは有名である。この現代語訳は古い言葉で書かれたその奥義が、誰にでもわかる言葉に翻訳されている。

世阿弥によると花とは、面白くて珍しいもののことである。見るものの心を動かさなければ花ではない。そして、どんなに洗練された表現でも、ありふれたものは花ではない。だから、表現者はたくさんの持ちネタを修得し、場の雰囲気に合わせて、最適なものを繰り出せるようになりなさい。それが花のある芸人ですと伝えている。

私流に超訳してしまうと、こんなことも言っている。

・開演は会場が静まるのを待ってから始めなさい
・昼の公演では穏やかな出し物から少しずつ盛り上げていきなさい
・夜の公演ではいきなりテンションを高く始めなさい
・練習中の芸は地方巡業で磨き、ここぞという東京ドーム公演で完成形を見せなさい
・若い芸人は若さゆえの輝きを持つが、それは一瞬のことなので根気よく精進しなさい
・35歳で世の中に認められないなら一流は諦めたほうがいいかもしれない

私としては特に内容に問題はないだろうと予想しつつも、念のためChatGPTでチェックしました。

すると、私が意識していなかった炎上の可能性をいくつか指摘してきました。

<プロンプト>
このスピーチ原稿を読んだ上で、コンプライアンス、ダイバシティ、ポリティカル・コレクトネスの観点から、炎上する可能性がある箇所を指摘してください

[User]このスピーチ原稿を読んだ上で、コンプライアンス、ダイバシティ、ポリティカル・コレクトネスの観点から、炎上する可能性がある箇所を指摘してください

[GPT]1.年齢に関する言及:「35歳で世の中に認められないなら一流は諦めたほうがいいかもしれない」この部分は年齢差別(エイジズム)にあたる可能性があります。

2.「秘すれば花なり」の解釈:この文脈では、独自性やオリジナリティを秘匿することの価値を強調していますが、この表現が誤解を招く可能性があります。

情報の透明性や共有の価値が重視される現代において、このような秘匿を美徳とする考え方は、コミュニケーションやオープンネスの重要性を軽視していると捉えられかねません。

この2点は、このスピーチをする場所によっては確かに問題になりそうです。

修正点のアドバイスをもらう

<プロンプト>
それでは1と2の箇所はどのように修正したらよいでしょうか。例を示してください

というプロンプトで、修正点のアドバイスをもらうことができます。こうしたやりとりを何度も続けてブラッシュアップすれば、より安心、安全なスピーチができます。

炎上を起こした場合の対策を立ててもらう

また万が一、スピーチが炎上を起こしたような場合でも、

<プロンプト>
1の点で炎上事件が起きたらどのようにコメントしたらよいでしょうか

のようなプロンプトで炎上を消化する対策を立てることができます。

[User]1の点で炎上事件が起きたらどのようにコメントしたらよいでしょうか

[GPT]もし1点(「35歳で世の中に認められないなら一流は諦めたほうがいいかもしれない」という年齢に関する言及)で炎上事件が起きた場合、公的なコメントを出す際には以下のポイントに注意してください。

1. 謝罪と理解の表明:「この度は、私たちの発言が年齢に関する不適切な印象を与え、不快感をおかけしたことを心からお詫び申し上げます。当社/当団体では、全ての年齢の個人が持つ価値と可能性を尊重し、年齢に関わらずチャンスが平等に与えられるべきだと信じています。」

2. 発言の意図の説明:「私たちの意図は、一流を目指す過程においてさも経験もそれぞれに価値があるということを強調することでした。しかし、その表現が不適切であり、誤解を招いたことを深く反省しています。」

ここでは、「1謝罪と理解の表明、2発言の意図の説明、3対策と改善の約束、4継続的なコミュニケーションの約束」という4段階で謝罪する戦術が提示されました。

このように、あなたがもしイベントなどでスピーチをすることなどがあれば、その前にチェックしてもらうことが可能です。

ぜひ、活用してください。


(橋本 大也)