by American Chemical Society

マイクロプラスチックは空気や飲料などさまざまな経路で人体に侵入することがわかっているほか、特に海や水源の水がマイクロプラスチックと病原菌の両方に汚染されると浄化プロセスが複雑化して困難になることから、生態系や公衆衛生にとって深刻な脅威となります。そんなマイクロプラスチックを群れをなして捕獲し、磁石でまとめて回収することが可能なマイクロロボットが発表されました。

Magnetic Microrobot Swarms with Polymeric Hands Catching Bacteria and Microplastics in Water | ACS Nano

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.4c02115

Swarms of miniature robots clean up microplas | EurekAlert!

https://www.eurekalert.org/news-releases/1043380

Microrobots Swarm the Seas, Capturing Microplastics and Bacteria [Video]

https://scitechdaily.com/microrobots-swarm-the-seas-capturing-microplastics-and-bacteria-video/

チェコにある中央ヨーロッパ工科大学の研究チームが開発したマイクロロボットが、汚染された水を浄化している様子は以下のムービーから見ることができます。

Water-cleaning beads grab microplastics and bacteria | Headline Science - YouTube

これがマイクロロボットです。棒状に見えるのは、複数の小さなマイクロロボットが合体して板状になったのを横から見ているからです。



このマイクロロボットは、磁性微粒子であるDynabeadsに高分子ポリマーでできた鎖をつけたもの。1個の粒子のサイズは直径2.8マイクロメートルです。



マイクロロボットは、回転磁界を受けると集合してクラスターを形成し、板状になることで効率的にマイクロプラスチックやバクテリアなどの汚染物質を収集します。



磁場で回転するマイクロロボットの塊に汚染物質の粒子が近づくと、吸い込まれるようにしてマイクロロボットに捕獲されました。



マイクロロボットの性能を調べるため、研究チームは水槽に直径1マイクロメートルの蛍光ポリエチレン粒子と、培養した緑膿(りょくのう)菌を入れて、マイクロプラスチックと菌で汚染された水を再現しました。緑膿菌は肺炎などの感染症の原因となるほか、消毒薬や抗生物質に対する強力な薬剤耐性を持つため、薬品などでの除去が難しいことが知られています。

研究チームは、マイクロプラスチックとバクテリアが入った水槽にマイクロロボットを投入し、10秒ごとに回転磁界のオンとオフを繰り返しながら30分間処理しました。

その結果、マイクロプラスチックとバクテリアの両方がマイクロロボットの表面にがっちりと吸着され、30分後には蛍光ポリエチレン粒子が水中からほとんどなくなったことが確かめられました。また、実験した中で最も高濃度な水1ミリリットル当たり7.5mgの濃度でマイクロロボットを投入した場合、水中の緑膿菌を80%捕獲することができることもわかりました。



汚染物質を捕獲したマイクロロボットは、磁石を使って水中から回収することが可能で、超音波と紫外線による洗浄や殺菌を行えば、捕獲力は落ちるものの繰り返し使えるとのことです。

研究チームは論文に、「移動するマイクロロボットの群れは、水中を遊泳するバクテリアや散乱したマイクロプラスチックを速やかに捕獲し、これにより水中の環境を浄化することができます。従来の方法とは異なり、このマイクロロボットは複雑な媒体から回収し、別の場所で汚染物質を放出させて効率的に再利用することも可能です」と記しました。