40歳を過ぎると「あれ? 老眼かも?」と感じている人がたくさんいるようです。そのような人に向けて、緑内障専門医で目に詳しい、真鍋眼科・真鍋婦人科院長の真鍋佑介先生監修が“目の老化の対処法”を紹介。眼鏡やコンタクトの度数を変えて見え方を工夫したり、目に悪いイメージがあるブルーライトは過剰に避けなくていい理由を聞きました。

「老眼」の元である水晶体の柔軟性は取り戻せない

「老眼」とは水晶体の弾力性が低下して、ピントが合いにくくなることです。このような状態になると、眼鏡やコンタクトレンズによって遠くが見えるように矯正したときでも、手元が見づらくなるそうです。

【画像】目が見える仕組み

「目にはレンズとなる“水晶体”というものがあり、その周りにある毛様体筋という筋肉が水晶体を引っぱったり緩めたりして厚さを調節しています。年齢が若いうちは水晶体に弾力性がありますが、加齢とともに弾力性が失われて硬くなっていきます。水晶体の主成分はタンパク質なので、一度変性すると元通りの柔軟性は取り戻せません」(真鍋先生、以下全て)

40歳を過ぎて目のピントが合わないと感じたら対策を!

また、「老眼は40歳ごろから自覚症状が出始める」と真鍋先生は言います。

「自分の目のピントが合わないと自覚してきたら、早めの対策が必要です。ピントが合わないまま目を使っていると、目が霞む、目が重いという以外にも、肩こり、頭痛、ひどい状態になるとうつ病などの精神的な症状にまでいたる場合があります」

しかも、老眼が進行してからだと老眼鏡や遠近のコンタクトレンズを使用しても慣れにくくなるのだとか。

「自分で老眼かなと自覚したら、すぐに眼科に受診するようにしてください。老眼で見えにくいと思っていたら、じつは“緑内障”だったということもあります。なんだか見にくい、ピントが合わない、霞んで見える、これらは老眼にも緑内障にもある症状なので、要注意です」

だれもがなる老眼。度数を弱めて確認してみて

次に、老眼になったときの対処法を真鍋先生に聞いてみました。

「まず、軽い老眼になったら眼鏡、コンタクトレンズともに度数を落としてみることをおすすめします。眼鏡やコンタクトレンズを視力1.0に矯正している人が多いと思いますが、それは遠方視に最もピントが合っているんです。

長時間車を運転される人やスポーツをする方ならいいのですが、デスクワークで近距離を見ることが多い人は度数を弱めてみるといいでしょう。

また、30代から低矯正の眼鏡やコンタクトに慣れておくと将来的な老眼への対策になりますよ」

コンタクトレンズは左右の見え方に差をつける

続けて、コンタクトレンズについても教えてもらいました。

「コンタクトレンズの使っている人は、モノビジョンもおすすめです。これは、片方のレンズが遠く、もう片方は近くが見えるように調整して、左右の見え方に差をつける方法です。慣れるのに時間はかかりますが、適応できれば広い範囲が見えるようになります。

老眼が進んできたら遠近両用のコンタクトレンズや眼鏡も検討になりますが、老眼が進むと加入度数を強くする必要があるため見え方に違和感を持ち、慣れない原因になることがあります。そのため老眼対策は早めからいろいろ試して自分に合う方法を知っておくことが大切です」

過剰に「ブルーライト」を避けるのはNG。カットするなら夜だけに!

スマホやパソコンなどから発する「ブルーライト」と聞くと、「悪い光」というイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、目を守るためにブルーライトカット眼鏡をすることが、じつはかえって危険かもしれないそう。

「ブルーライトとは可視光線の一部で、380nm〜500nmの波長の光のことをさします。
この波長は名前のとおり、青色の成分を含んでおります。そして、今までこの光は眼精疲労の原因になる有害な光であるといわれ、スマホやパソコンの画面からはブルーライトが出ているため、目への影響を避けるためにブルーライトをカットする必要があるとされていました」

しかし、このブルーライトは太陽光からも自然に出ている光なのだとか。

「スマホやパソコンから出るブルーライトは、日中に太陽光から出ているブルーライトより遥かに少なく、さらに曇天や窓越しの自然光よりも少ないと言われています。そのためスマホなどの液晶画面から発せられる微量のブルーライトを積極的にカットする必要はないと、日本の眼科学会から指摘されています」

ブルーライトカット眼鏡を推奨する根拠はない

ブルーライトを浴びることによって生じる目の疲労や肩こりについても真鍋先生は言及します。

「ブルーライトカット眼鏡をして目の疲れや肩こりが軽減されたという人もいますが、実際は積極的に推奨する根拠はありません。

それよりスマホやタブレット、パソコンなどを長時間使用する場合、細かい休憩を取る(1時間毎に10分程度)、画面に目を近づけないようにする、液晶画面の明るさを調整する、など目が疲れにくいように工夫するほうが大切です。

ブルーライトをカットすると近視抑制に有効なバイオレットライトまでカットしてしまいます。とくに未成年がブルーライトカット眼鏡を装用する場合、ブルーライトが体に入ってくることよりも有害である可能性があるので注意してください」

ただ、夜にブルーライトを浴びすぎると睡眠障害が起きるなどと言われているので、夜間にスマホやパソコンを使用する場合はブルーライトカット眼鏡をかけてもいいかもしれないと、真鍋先生はアドバイスします。