照明器具なのにプロジェクター?新時代の照明器具「マイクロLED」の使い所がもの凄い多そう
空間を照らすための照明器具と、映像を投影するためのプロジェクター。一般的に、この2つは全く別のものと考える方が多いでしょう。しかしこのほど、プロジェクターにも似た機能性を持つ照明器具が登場しました。
それが、パナソニックと日亜化学工業が開発した、独自の「マイクロLED」照明。髪の毛よりも細かいLED光源を敷き詰めることで、文字や模様などの動きを表現できるようになった、次世代照明器具です。
ひとつの照明のなかに、1.6万個のLED光源を内蔵
これまでの照明器具は、あくまで空間を明るくするためのもの。色を変える調光機能を持つものはあれど、光で文字や模様を描いたり、それを動かすことには対応していません。動きを表現するには、プロジェクターが必要でした。マイクロLEDはその壁を破る存在です。照明器具でありながら、光で文字や模様を描けるうえ、簡易なアニメーション表現にも対応します。
それを可能にしたのが、髪の毛よりも細かいLED光源です。マイクロLED照明は、ひとつの照明器具のなかに約1.6万個の微細なLED光源を内蔵。しかもそのひとつひとつを、個別制御できるのです。照らせる光の色は単色なので、映像までは映せませんが、文字や模様などをくっきり描写できます。
照明器具本体は手で容易に持てる程度の大きさですが、ひとつの器具で照らせる範囲は思いのほか広い長方形。照明と連動したタブレットで文字や図形を描くと、それが遅延なく映し出されます。描いた文字や図形を自由に動かすことも可能。操作感は、“空間に光を描く”ような、独特の感覚です。
専用のアプリには、動きのパターンもプリインストールされており、たとえば星が降り注ぐような演出をすることもできます。細かな陰影の表現も得意で、描いた文字がぼやけることもありません。マイクロLED照明の登場によって、ホテルの床に動く矢印を映し出して客室の場所をゲストに伝えたり、商業施設のショーウィンドウに文字を描くなど、従来にはなかった表現が可能になります。
プロジェクターとの違いは、映像素子の有無
マイクロLED照明とプロジェクターは、ともに光の動きを表現することに対応しています。両者の大きな違いは、映像素子の有無です。プロジェクターは、素子の背後から光を当てることで、映像をスクリーンに投影します。プロジェクターが黒色を表現するときには、光源の光を黒い素子によって遮り、黒を作り出します。しかし、素子がすべての光を遮ることはできないので、少し明るめな黒になります。
対して、マイクロLED照明は、明るくしたいところにだけ、ピンポイントで光を当てます。黒くしたい箇所にはそもそも光を当てないため、プロジェクター以上に明確な明暗を表現できます。プロジェクターに比べて、消費電力が少ないのも強みです。
いまのところ、マイクロLED照明の光の色は白のみなので、カラー映像を投影することはできません。とはいえ、簡易的なモノクロアニメーションであれば、十分に実現可能です。従来はプロジェクターがなくては不可能だったことを、部分的に代替できます。
マイクロLEDを搭載した照明器具は、2025年に発売予定。商業施設やホテルなどに向けて、販売されるそうです。使い方次第で、見る者に驚きをもたらす、光の魔法が見られるようになるかもしれません。