本の側面に色をつける「小口色塗り」手作業の仕事が見応えたっぷり!職人さんに話を聞いた
本やノートなどの側面に、色がついているものを見たことはないだろうか。製本時に色をつける作業を行っている様子がX(Twitter)に投稿され話題を集めている。
昨日から 三方小口色塗り の作業中です。今回はクライアントさまのご要望で「赤」の色塗りです。昨年10月に入社した若手職人も先輩のトレーニングを受けて丁寧な刷毛使いで頑張ってくれてます!動画の前半が先輩職人、後半が若手くんです。 https://t.co/aBF3iQTfoV
— 渡邉製本 (@booknote_tokyo) 2024年3月26日
作業の様子をX(Twitter)に投稿したのは創業75年の製本会社である渡邉製本(@booknote_tokyo)さん。熟練の職人たちが1冊1冊作り上げるこだわりの製本が自慢の製本工房だ。
動画で見られる作業は、本を作る際、本の背表紙以外の側面である「小口」を塗りあげる「小口色塗り」と呼ばれるもの。小口色塗りの作業にはスプレーで塗料を吹きかける機械を使うことも多いそうだが、渡邉製本さんは刷毛で行っているという。
動画の前半では先輩職人が、後半では若手職人が作業しているというが、塗料を調合し、刷毛を数回滑らせるだけでムラなく塗りあげている様子はどちらも見事だ。
この動画にXユーザーからは「丁寧な所作が美しい」「こういう手仕事ずっと見ていたい」と感心の声が寄せられていた。
小口色塗りの魅力や、手作業による仕上がりの違いについて、渡邉製本さんに詳しくお話を伺った。
平積みでも目を引く小口色塗り
小口色塗りで仕上げる魅力を教えて下さい。
小口染めは本をより魅力的にするための装飾目的で用いられています。
本の装丁を考える装丁家やデザイナーの方が、意匠表現として小口色塗りを選ばれています。
書店で平積みになっている時には目を引きますし、手に取った時にも本を開く前から書籍の世界観を楽しんでいただけるかと思います。
手作業で行うことによってどのような違いがあるのでしょうか?
スプレーで吹き付ける小口染め機械も存在しますが、弊社は手作業の小回りの良さから刷毛で手塗りしています。
手作業の良さは、対応サイズ・厚みのバリエーションが幅広く、小ロットにも対応しやすい点です。
弊社では日頃から刷毛を使う手仕事の製本も多く、慣れているという点もあるかと思います。
先輩職人さんの作業は後輩職人さんのものとどのように異なりますか?
色味の調合を行えるかどうかが最も大きく異なる点かと思います。
まず、ダミー本※の作成時に、先輩職人がクライアントの希望の色味に近づけるための染料の調合テストを行います。その作業では数パターンの色味出しを行います。そして、クライアントが選んだテスト結果と同様の色味になるように、本番の作業でも再度色の調合を行います。この作業ができるかどうかが最も大きく異なる点となります。
また、作業を担当していた2名の職人に聞いたところ、以下のような回答でした。
先輩職人「紙と染料の組み合わせにより、色の濃淡の出方がかなり異なるため、仕上がりを均一にするための微調整に慣れと技術が必要。」
若手職人「刷毛の押し当て加減により色ムラが出やすいが、先輩はその仕上がりにバラつきがない。」
※本の仕上がりをイメージするために本番と同じ製本方法で作るサンプルのこと
刷毛を使った小口色塗りは中に少しインクが染み込むのだそう。本を開くのがますます楽しみになりそうだ。
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