毎熊晟矢の可能性は? Jリーグから欧州へ飛躍が期待できるディフェンダー5人
Jリーグの海外移籍候補1〜DF編
現在、欧州でプレーする日本人選手は80人前後で推移している。久保建英(レアル・ソシエダ)、冨安健洋(アーセナル)、鎌田大地(ラツィオ)などチャンピオンズリーグ(CL)でベスト16に進んでいるチームの選手や、上田綺世(フェイエノールト)、三笘薫(ブライトン)、守田英正(スポルティング)、堂安律(フライブルク)、遠藤航(リバプール)などヨーロッパリーグで勝ち残っているチームの選手を含む。その量も質も、今や「サッカー大国」に近づいていると言えよう。
そして彼らはJリーグから羽ばたいた選手たちである。
<Jリーグでの躍動は、未来の輝きにつながる>
そんな法則に従うと、次に欧州で勇躍する選手の現場を"Jリーグで目撃する"のはひとつの楽しみ方になるだろう。そこでDF、MF、FW編に分け、将来が嘱望されるJリーガーをピックアップした。まずはDF編だ。
筆頭に名前が挙がるのが、セレッソ大阪の右サイドバックである毎熊晟矢(26歳)だろう。
アジアカップの日本代表での活躍も記憶に新しい毎熊晟矢(セレッソ大阪)photo by Itaru Chiba/AFLO
アジアカップでは日本代表として活躍し、敢闘賞、もしくは新人賞を与えられるプレーぶりだった。不振のチームのなか、機動力で攻撃に厚みを加えていた。欧州組の選手たちと比べて士気が高かったこともあるが、技術的な高さを見せつけている。右サイドで久保と連携して攻撃に絡む様子を見ても、攻撃的コンセプトのチームでは高い評価を受けるはずだ。
大卒選手で、海外挑戦をするには若くはないが、J2で2シーズン、レギュラーとして実戦を積み、J1でも2シーズン、ピッチに立ち続けている。"戦い慣れ"した印象のサイドバックである。持ち前の攻撃力を高い精度で出せる選手で、ベルギーやオランダだったら引く手あまただろう。
ただ、準々決勝のイラン戦のように、高さ、パワーで向かってくる相手に対して課題を残した。最後の失点の場面も、まずポジションが甘く、空中戦でのファイトで後手に回り、完全に競り負けていた。Jリーグでは十分に対処できていたが、「世界」と遭遇したシーンだった。ディフェンスという立場上、受け身でのプレーに本質は出る。
【センターバックにも有力候補がいる】
次に名前を挙げたいのは、ガンバ大阪の右サイドバックである半田陸(22歳)だ。
すでに森保ジャパンに選出されている半田は、過去の内田篤人、酒井宏樹という代表の右サイドバックと一風、違うが、スケール感では共通する。ボールプレーヤーのクオリティ、タクティクスの水準、相手を凌駕するフィジカル、そのかけ合わせがダイナミズムを生む。右サイドを制しながら、サイドだけでなくインサイドにも攻め込む様は、まさに一騎当千だ。
パリ五輪代表候補で、今シーズンは飛躍の年になるのではないか。唯一の不安は、ダニエル・ポヤトス監督が率いるG大阪で、プレーがぼやける点。殻を破って、海を渡れるか。
ふたりの右サイドバックの名前を挙げたが、彼ら以外にも人材は少なくない。
浦和レッズの酒井は「今すぐ日本代表のレギュラー、右サイドバックを選ぶなら彼」と言えるほどの最高レベルを保っている。王者、ヴィッセル神戸の酒井高徳も追随する存在と言える。横浜F・マリノスの小池龍太もケガさえなかったら、代表に絡んでいたはずだし、その不在は横浜FMが連覇を逃す要因にもなった。メジャーリーグサッカーのロサンゼルス・ギャラクシーに移籍した山根視来と入れ替わりで川崎フロンターレに移籍してきたファンウェルメスケルケン際も、ゼロックススーパーカップでいきなり決勝点を挙げるなど、楽しみな逸材だ。
彼らはいずれもすでに欧州でのプレーを経験している選手たちで、年齢的に再び海を渡る可能性は低いが、日本の右サイドバックが才能の宝庫である証左だろう。
一方、センターバックのイチ押しは横浜FMの角田涼太朗だったが、すでにベルギーのKVコルトレイクへ移籍している。左利きのユーティリティだが、器用にこなすタイプではなく、強気に自ら仕掛けるディフェンスで"場を制する"。日本人離れしたセンスが欧州のパワーや駆け引きで触発されるか。
現在のJ1で、20代半ばまでの有望なセンターバックは貴重な存在だろう。
川崎所属でアカデミー出身の高井幸大(19歳)は、テクニカルでプレーセンスを感じさせる。肉体的に恵まれており、足元の技術があって、視野も広いだけに、大化けする可能性がある。昨年のU−20ワールドカップでは守りに入った時の弱さを露呈し、「ディフェンダー」の硬質さが課題だったが、今年のゼロックススーパーカップ、神戸戦では大迫勇也を完封していた。
北海道コンサドーレ札幌の中村桐耶(23歳)も化ける可能性がある。左利きの選手の利点を生かし、ピッチで人とは違うリズムを出すことができる。それが守りの面でマイナスに作用することもあるが、守りから攻めにつながるところでは確実にアドバンテージを取れる。体躯にも恵まれ、走力も高く、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の采配で力が最大限に引き出されたら......。
最後に、G大阪の中野伸哉(20歳)の再生に期待したい。17歳の頃の彼は「サッカーそのもの」と言えるほどの才能の塊だった。左利きだが両足を操り、常に相手の逆を取れるクレバーさを持ち、基本的な俊敏さが並外れており、しなやかさと爆発力が同居していた。そのセンスは"神隠し"にあったように消えたが、ピッチのなかでもう一回、輝きを取り戻してほしい。
(つづく)