ガンバ大阪・半田陸「チーム内で選手ごとの温度差」を感じた昨季 その経験を糧に「誰ひとりとしてサボることを許しちゃいけない」
J1リーグ2024シーズン開幕!
半田陸インタビュー(ガンバ大阪/DF)
今シーズンに向けての抱負を語る半田陸。photo by Takamura Misa
モンテディオ山形からガンバ大阪に移籍した昨シーズンは、半田陸にとってジェットコースターのような1年になった。加入後すぐの3月には日本代表に初選出され、一躍、時の人に。チームでも自身初のJ1リーグで、右サイドバックとして躍動した。だが、目を見張る成長を続ける7月半ばに、左腓骨骨幹部骨折を負い、長期離脱を強いられた。
「練習中に味方のシュートをブロックしようと左足を伸ばした時に『痛っ!』ってなって。でも、クラブハウスまで歩いて戻れたくらいだったから、そこまで大きなケガとは思っていなかったんです。なのに、レントゲンを撮ったら、折れていました。
ドクター曰く、ピンポイントすぎるくらいピンポイントでボールが骨を直撃してしまったらしい。今回のケガは自分がより強くなるために、より戦える選手になるために、いろんなことを見直せってことだと思うので、ケガをプラスに転じられるように、もう一回体をしっかり整えます」
そんな思いでリハビリと向き合い、10月末には戦列に復帰できたものの、正直、離脱前の状態には程遠く、結果的にチームも、彼自身も、ギアが上がらないままシーズンを終えることになった。半田は「理想のプレーはまったくできなかった」と振り返る。
「ぎりぎり終盤戦には戦列に戻れたとはいえ、コンディションを含めて完璧な状態ではなかったし、ボールの感覚や試合勘もまったくいいものではありませんでした。痛めた箇所は治っても、それに伴う多少の感覚的な変化にまだ完全に適応しきれていない自分がいたし、何より長い間、試合に出られなかったことの影響は一番感じました」
前所属の山形でも、プロ3年目の頃からコンスタントに試合に出場しながら、自分のリズムを見出してきただけに、いきなり公式戦でプレーをフィットさせる難しさも感じたという。
「試合に出続けないと、日々の調整の仕方も変わってくるし、特にガンバにきてからの最初の約半年間は、試合を戦うごとにできることが増えていっているな、という手応えもあって。改めて試合に出る重要性を感じていただけに、ケガで戦列を離れる難しさ、勿体なさをすごく痛感しました」
そうした経験をしたからだろう。今シーズンのスタートにあたっては、「ケガなく、1シーズンを戦い抜くこと」を自身の目標に挙げていた半田。オフシーズンも、ケガを負った箇所から完全に痛みを取り除くことを心がけつつ、体の使い方、バランスを考慮したトレーニングや、スプリント系のトレーニングを積極的に取り入れながら、その基盤を作ったと聞く。
それは、「もっと守備を安定させて、ひとりで右サイドを守れるくらいの守備力を示せるようになること」と「攻撃でより回数多くゴールに絡んでいくため」でもある。
「そこまでめちゃめちゃ動いていたわけではなく、どちらかというと体の状態と相談しながら気分のままに動いていた感じでしたけど、チームが始動してからもコンディションを含めて、いい感覚で動けています。
もっとも、今年はそういう個人の感覚を、チームのなかでどう生かすか、チームの結果にどう結びつけていけるかが大事だと思っているので、昨年の戦いを通して出たチームの課題や変化が必要なところは、より意識して取り組んでいます。その部分はダニ(ダニエル・ポヤトス監督)からも伝えられて、練習メニューとしても組み込まれているので、しっかり向き合っていくだけだと思っています」
特に昨年の後半戦で感じた"切り替え"や"プレー強度"における物足りなさは、チームが進化を求めるためには不可欠だと強調する。
「昨年は、チームとしての戦い方を浸透させることばかりに目がいっていたというか。シーズンが進むにつれて、それじゃあ戦えないとなって、プレー強度を求められるようになったものの、正直、チーム内でも選手ごとの温度差はあったと思います。それによって、プレッシャーにいってもボールを奪いきれずに剥がされ、後ろが晒されて失点、というシーンも多かった。
ただ、そうした反省をもとに、今年は始動日からダニにも切り替えのことは口酸っぱく言われていますし、みんなも意識して取り組んでいるので。また、新加入選手を含めて、スタイル的に切り替えや走力のところで強みを発揮できる選手が増えたことで、チーム全体の強度が上がっているなという手応えもある。あとは、それをベースにチームとしての狙いを、公式戦で勇気を持って表現できるかだと思っています」
その手応えに関しては、2月10日のプレシーズンマッチ、サンフレッチェ広島戦でも明らかな"変化"として確認できた部分だと言っていい。また、彼自身も右サイドバックとして先発を預かるなかで、縦に、中にとポジショニングを変えながら効果的に攻撃に顔を出すなど、コンディションのよさを伺わせた。
「広島のシステムを踏まえて、僕のサイドは縦だけではなく、中に入っていくことをプランのひとつにしていました。僕が中にポジションを取って(ボランチの)ダワンを前に押し上げるとか、逆にダワンが下がったら、僕がそのスペースを使うというように、です。
そのなかで、特に前半はチーム全体として連動して動けていたし、ボールを奪われたあとの切り替えのところも、(坂本)一彩や(山田)康太くんら前線の選手がしっかりファーストディフェンスにいってくれていた分、後ろの僕らも狙いを持ってボールを取りにいけるシーンも多かった。そこは去年からだいぶ変化した部分だと思っています。
また、何より去年はなかなか先制された展開から試合をひっくり返せなかったなかで、広島戦はリードされた展開から、最後は途中出場の(倉田)秋くんが点を取ってくれて逆転勝ちに持ち込めた。これは、プレシーズンの時期とはいえ、すごく自信になったし、ここから開幕に向かって、まだまだみんなでよくしていけると思っています」
今シーズン、クラブは昨年残留争いに巻き込まれた現実を踏まえ、J1リーグでの「7位以上」に目標を設定。それに対し、半田自身はそこも頭に置きながら、まずは「誰ひとりとしてサボらないチームにならなければ、長いシーズンは戦い抜けない」と決意をのぞかせる。
「チームとしてやろうとしていることに対して、誰かひとりでもサボればそこが歪みになっていく。だからこそ、ふだんのポゼッション練習から誰ひとりとしてサボることを許しちゃいけないし、そういった事象が見られたら、そのつど、チームみんなで厳しく声を掛けあって、修正していけるチームにならなくちゃいけない。
そんな空気を、選手、コーチングスタッフの全員で、年齢、在籍年数に関係なく作れるようになれば、きっとチームはいい方向に進んでいけるはずだし、仮に苦しい状況に置かれたとしても、ズルズルと負の流れに巻き込まれることなく、自分たちを見失わずに戦っていけるんじゃないか、とも思っています。
また、クラブとしてのJ1リーグ7位以内という目標は意識しながらも、やっぱり僕はこのチームでタイトルを獲りたい。そのために僕自身も目の前の1試合、毎日の練習で『やりきる』ことを自分に求めていきたいです」
「去年よりいい半田陸を見せる」ためにも、だ。
「正直、今は日本代表のことも含めて、先のことはまったく考えていません。将来のことを考えすぎて、目の前のことや、日々の練習、試合を疎かにしてしまったら、結局は何もつかめないということを10代の頃に経験しているので。だからこそ、とにかく今、自分ができることだけに集中して、それを100%でやりきることしか頭にないし、この先もその繰り返しだと思っています」
山形のアカデミーで育てられ、プロになった半田は昨年、自身のサッカーキャリアで初めてその山形を離れ、"生え抜き"として自身がいかにクラブに守られ、大切に育てられてきたのかを再確認したという。と同時に、そうした温かな環境を離れたからこそ、見えたこと、気づけたこともたくさんあった、と。
「加入直後はいろんな難しさも感じたけど、ガンバに来たから出会えた人もいたし、新しい環境で自分をイチから表現していくという経験を味わうこともできた」
だからこそ、今シーズンも一歩ずつ。大事に"今"を積み重ねることで未来を切り拓く。
半田陸(はんだ・りく)
2002年1月1日生まれ。山形県出身。ガンバ大阪所属のDF。モンテディオ山形ジュニアユース→ユースを経て2019年にトップチームに昇格。プロ3年目の2021シーズンにはレギュラーの座を確保した。2023年、ガンバ大阪に移籍。同年3月には日本代表に初選出された。U−15から各年代の代表に選出され、今年はパリ五輪出場へ五輪代表での奮闘が期待される。