フジ『大奥』「ありえないことばかり」で視聴率苦戦も時代劇の専門家は「“眉毛塗りつぶし女優”の活躍に期待」
『大奥』で主演を務める小芝風花
これまで、何度となく制作されてきたドラマ『大奥』(フジテレビ・関西テレビ系)。現在は、1月18日から19年ぶりとなる連続ドラマが、小芝風花主演で放送されている。
2月15日に放送された第5話では、将軍・徳川家治(亀梨和也)が側室のお知保(森川葵)へ御渡りしたことで、正室の倫子(小芝)がつらさを募らせる様子が描かれた。幸せそうなお知保に、倫子はうつむくことしかできない。そんななか、家治はオランダ商館長を江戸城に招く際に、もてなしに箏を披露したいと告げる――。
人気ドラマの復活ということで、放送前から注目度が高く、第1話の世帯平均視聴率は6.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)と、木曜夜10時の『木曜劇場』枠としては悪い数字ではなかったが、第2話が4.7%、第3話が5.0%、第4話が4.6%、第5話が4.2%と、苦しい数字が続いている。
番組を見た感想をネットで拾ってみると、
《なに?この軽い設定。水戸黄門並みのあり得ない設定。所作はなってない。》
《あり得ないことばかりで空いた口が塞がらない。御台所はあんな簡単に江戸城を出たり入ったりできない。大奥には3,000人もの奥女中がいて、それだけの目が監視しているのに、誰にも気づかず江戸城を出てり入ったりできるわけない。》
《現代調はしかたないが、公家の姫が「すごいな」とか「見せてくれ」「なんなんだ、これは!」と乱暴な男言葉はあり得ない。》
と、設定に関する不満の声が多いようだ。
時代劇に詳しい、コラムニストのペリー荻野氏は話す。
「今回の『大奥』のテーマは純愛。純愛路線を描くのは、大奥としては新しい試みだと思います。過去の『大奥』は、“閉じ込められた女たち”がどう生き残っていくかが主題でした。演出を担当している林徹さんは、『大奥』のオーソリティとして、過去の作品にも携わり、見せどころも知っている方です。そういう方がかかわっているなかで、政治的背景や女性同士の対立ではなく、純愛に重きを置いたのは、過去の『大奥』ファンからすると、違和感を感じるのかもしれないですね。
また、過去の作品では、北村一輝さんや谷原章介さんが将軍役で出演していましたが、今回は、亀梨さんが将軍役で出演しています。アイドルが将軍を演じているという点も、これまでと違う視聴者層を意識しているのかと思います」
「純愛」という、現代的なテーマがしっくり来ていない視聴者も多いのでは、と分析するペリー氏だが、今後はそれを踏襲しながらも、『大奥』らしい展開になっていくと期待する。
「先日、放送された5話では、これまでさまざまな嫌がらせを受けながらも想いを育んできた、家治と倫子がやっと結ばれ、いよいよ家治が自分の意志を示して、倫子との愛を育んでいくという新たな展開になっていきます。なので、ここからです、みなさん。ここから、恐ろしい伏魔殿の中で、倫子が御台所としての責務を果たし、2人がどう生き残っていくかという見せ場に入ってくると思います。
また、過去の『大奥』では、眉毛の薄い人物が“要注意キャラ”として描かれてきました。『大奥〜華の乱〜』では綱吉の側室・お伝の方を演じた小池栄子さんが、眉毛のないメークで登場して、『何かやらかすのでは……』と思って見ていたら、案の定、やらかしてくれました。女優さんが、眉毛を塗りつぶした姿を披露するのは勇気のいること、それでも、その姿で登場することに、芝居への覚悟を感じました。
今回の『大奥』は田中道子さんが眉を塗りつぶして、御年寄・高岳役を演じていますが、時代劇に出演するイメージがなく、最初、見たときは誰かわからなかったほど。今後、何かを仕掛けてくるのではないか、という雰囲気を感じています」
ドラマ『大奥』のルーツは、1968年に東映と関西テレビが製作し、1年間にわたって放送された大作時代劇にさかのぼる。通しで見てこそ真価がわかるのかもしれない。