敦賀駅に入線する北陸新幹線のW7系の12両編成。3月16日に開業する

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北陸新幹線の敦賀-金沢間の延伸開業を2024年3月16日に控え、JR西日本が2月1日、報道陣向けの試乗会を開いた。延伸開業で首都圏と北陸地方が近くなる一方で、大阪や名古屋から金沢まで直通していた特急は敦賀止まりになり、乗り換えが必要になる。

試乗会で運行された特別列車では、大阪-金沢を結ぶ「サンダーバード」と並走する場面も。延伸区間開業後は見られなくなる光景で、約150人の報道陣が熱心にカメラを向けていた。

曇天で「霊峰」白山はお預けに

延伸区間では、新幹線の駅としては敦賀、越前たけふ、福井、芦原温泉、加賀温泉、小松の6駅を新設。開業後は、北陸新幹線を利用した場合で、東京-福井駅間は最速2時間51分で36分短縮。東京-敦賀間は最速3時間8分になり、50分短くなる。

大阪や名古屋から北陸に移動していた人は評価が分かれそうだ。敦賀で乗り換えは必要になるが、大阪-金沢間は最速2時間9分で22分短縮。名古屋-金沢間は同じく2時間9分で、16分短縮される。

新たに開業するのは約125キロ。そのうち約10キロは、すでに稼働している車両基地と金沢駅を結ぶ線路で、それ以外の約115キロが新たに建設された。115キロのうち3分の1にあたる33.5%がトンネルで、半分以上の51.7%が高架橋だ。高架橋も防音壁で視界が遮られることが多く、景色を撮っていた報道陣からは「あ〜」という声がもれることもあった。

試乗会の特別列車は、すでに東京-金沢間で活躍しているW7系の12両編成で、10時13分に敦賀駅を出発。その2〜3分後には、延伸区間では最も長い新北陸トンネルに突入し、19.76キロを5分ほどかけて走り抜けた。この間、問題なく携帯電話の電波は通じた。北陸本線では、車窓から日本有数の「霊峰」のひとつとして知られる白山が見える。ただ、この日は曇りで、はっきりと確認することはできなかった。

その後、加賀温泉、小松以外の3駅(越前たけふ、福井、芦原温泉)に停車しながら、終点・金沢には定刻の11時10分に到着した。この日は特別ダイヤで57分かかったが、開業後の停車駅が少ないタイプの列車では最速41分の予定だ。現行の在来線特急よりも31分ほど短くなる。

停車駅直前に追い抜かれ、時速260キロで一気に抜き返す

この途中で、延伸開業後は走らなくなる在来線特急と並走し、追い越されたり追い抜いたりする場面もあった。並走したとみられるのは、大阪発金沢行きのサンダーバード9号。9時11分に京都駅を出た後は敦賀を通過し、福井に着く10時31分までノンストップで走行するダイヤで、その次が終点・金沢(11時14分着)という停車駅が少ないタイプだ。

新幹線は芦原温泉停車直前の10時46分ごろにサンダーバードに追い抜かれた。その後は加速し、手元のGPS速度計で確認できる限り、最高速度の時速260キロを記録する場面もあった。加賀温泉通過直後の10時57分ごろサンダーバードに追いつき、一気に追い越していった。

開業後に課題になるのが敦賀駅での乗り換えだ。駅舎は3階が新幹線ホーム、2階がコンコースの乗り換え改札、1階が在来線特急ホームという構成。2フロア分移動する必要がある。記者が実際に移動してみたところ、若干道を間違ったり、遠回りしたりしたものの、3分20秒ほどで到着することができた。

JR西日本が公表しているダイヤによると、新幹線と在来線特急は最も短い場合で8分で接続する。一見余裕があるように見えるが、混雑時や荷物が重い場合は、さらに時間がかかるとみられる。実際、JR西日本が1月18日、1編成が満員になる規模の約900人を動員して行ったシミュレーションでは、一部で人が滞留して8分を超えたため、改善が必要になっている。

今後、北陸新幹線は「小浜・京都」ルートで敦賀から新大阪まで延伸される予定だが、着工のめどは立っていない。

2月3日と4日に行われる一般向けの試乗会では、2000人の募集に対して15万0325人が応募。倍率は約75倍に達している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)