アメリカでは2019年頃から中国製品の輸出入に規制がかかるようになり、特に中国のみならず世界中で広く販売されているHuawei製品が窮地に立たされました。アメリカからの部品の購入も困難になったHuaweiは中国政府の力も借りて自給自足の製品製造を可能にしつつあることが報じられていたのですが、Huawei製品を分解した調査により、中国の技術の現状が明らかになりました。

Huawei Qingyun L540 Laptop: HiSilicon 9006C Manufactured by TSMC | TechInsights

https://www.techinsights.com/blog/huawei-qingyun-l540-laptop-hisilicon-9006c-manufactured-tsmc



Huawei Qingyun L540 Laptop Teardown Reveals 5nm Chip by TSMC, Not China’s SMIC - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-01-05/huawei-qingyun-l540-laptop-teardown-reveals-5nm-chip-by-tsmc-not-china-s-smic

Huawei's 5nm Kirin 9006C laptop chip was reportedly produced by TSMC in 2020, dispelling production rumors at Chinese fab SMIC | Tom's Hardware

https://www.tomshardware.com/tech-industry/semiconductors/huaweis-5nm-kirin-9006c-laptop-chip-was-reportedly-produced-by-tsmc-in-2020-dispelling-smic-production-rumors

Huaweiはアメリカの規制を回避して端末を製造するため独自のネットワークを構築していることが以前からわかっています。特にスマートフォン製造における半導体については、中国の半導体ファウンドリである中芯国際集成電路製造有限公司(SMIC)を通じて独自に設計されたものを確保しており、2023年に発表された「Mate 60 Pro」にはHuawei初の独自設計7nmプロセスが採用されたことも明らかにされています。

一方、さらに高い性能の5nmプロセスで製造する半導体の確保には困難を極めたとの見方もあります。半導体製造には極端紫外線リソグラフィ(EUV)装置が必要なのですが、これをほぼ独占的に扱っているメーカーのASMLに中国への輸出規制がかかったため、中国は代わりに深紫外線リソグラフィ(DUV)装置を使用するしかありませんでした。DUV装置にて7nmプロセスの製造にこぎ着けた中国ですが、5nmプロセス製造では他国より大幅に遅れることとなりました。

Huaweiはアメリカによる経済制裁を乗り越えて自給自足のチップネットワークを構築している - GIGAZINE



ところが、2024年になってHuaweiが発表したノートPC「Qingyun L540」には5nmプロセスで製造された半導体が使われていることがわかり、ついにSMICが5nmプロセスの製品を製造可能なところまで来たのではないかと期待と疑惑の念が向けられました。そこで、技術解析を専門とするTechInsightsがQingyun L540を実際に分解して製造元の正体を明らかにしました。

TechInsightsによると、Qingyun L540に使われているSoC「Kirin 9006C」に使われているチップはSMIC製ではなく、台湾の半導体ファウンドリ・TSMC製だったとのこと。さらに、Kirin 9006Cの仕様は2020年に製造されたKirin 9000に似ていることもわかったそうです。



Kirin 9000はちょうどTSMCに輸出規制がかかる直前に製造されたものであり、2020年10月に発表されたスマートフォン「Mate 40」にも採用されたチップです。Qingyun L540に搭載されたKirin 9000は2020年の8月24日週にパッケージングされたことがわかっていて、何らかの理由で備蓄されていたものが今になって使われ始めたと考えられています。

今回の発見はSMICが5nmプロセスでの大量生産を可能にしたという憶測を一蹴するものであり、市場の期待が外れたことにより報道後にSMICの株価は2%下落しました。