米OpenAIは11月29日(現地時間)、基本合意していたサム・アルトマン氏のCEOへの復帰と、初期理事会(initial board)の設置を正式に発表した。改革の第1歩として、資本・業務提携するMicrosoftの代表を議決権を持たないオブザーバーとして理事会に受け入れる。

OpenAIの理事会が11月17日にアルトマン氏に突如CEO解任を言い渡した。それに対し9割を超える社員が理事会の判断に抗議、事業運営を不透明にする混乱に拡大し、4日後にアルトマン氏と復帰で基本合意するという騒動が感謝祭直前に起こった。

OpenAIのガバナンスを再構築する初期理事会の理事は、ラリー・サマーズ元米財務長官、Salesforceの元共同CEOのブレット・テイラー氏、QuoraのCEO アダム・ディアンジェロ氏の3人。今回の騒動では、最大の出資者であるMicrosoftにも発表の直前までアルトマン氏の解任を伝えていなかったことが混乱を広げる一因になった。Microsoftは投票権を持たないが、理事会に参加することで、今後はOpenAIの内部をより深く理解することが可能になる。

OpenAIのCEOに復帰したサム・アルトマン氏(OpenAI DevDayから)

17日にOpenAIが公開した「Message from Sam to the company」では、ミラ・ムラティ氏がCTO(最高技術責任者)に復帰すること、リサーチ・ディレクターのヤクブ・パチョツキ(Jakub Pachocki)氏、AIリスク対策専門チームを率いるアレクサンダー・マドリー(Aleksander Madry)氏、シモン・シドル(Szymon Sidor)氏の復帰が明らかにされている。

ムラティ氏はアルトマン氏解任後に理事会から暫定CEOに指名され、その後アルトマン氏の復帰に尽力した。パチョツキ氏、マドリー氏、シドル氏はアルトマン氏の解任後に辞職し、AIとテクノロジーの分野で多様な経験と知識を持つシニア研究者を失う影響が懸念されていた。

解任騒動においてアルトマン氏と行動を共にした共同創業者でプレジデントのグレッグ・ブロックマン氏について、アルトマン氏は「OpenAIを経営するパートナー」と述べ、その関係を組織編成に反映させる意向を示している。イリヤ・サツキバー氏は理事ではなくなるが、今後もOpenAIで重要な役割を担うとされている。チーフ・サイエンティストで理事会メンバーだったサツキバー氏は、理事としてアルトマン氏の解任に賛同したが、解任後に翻意し復帰を求めた。アルトマン氏によると、今回の騒動でOpenAIは1人の従業員も失っていない。

新体制での活動が始まったが、理事会がアルトマン氏を解任した理由はまだ明らかにされていない。アルトマン氏の復帰条件の1つに独立した調査が含まれており、その結果がまとめられるまで待つ必要がある。