天皇賞・秋は世界最強馬が参戦 穴党記者が狙うのはオイシイ配当が見込めるGI馬、GI好走馬
GI天皇賞・秋(東京・芝2000m)が10月29日に行なわれる。
今年は出走11頭と、やや寂しい頭数での争いとなった。しかし、出走馬の質は例年と比べても見劣りしないものとなっている。その点について、日刊スポーツの松田直樹記者が説明する。
「出走11頭となると、天皇賞・秋が2000mで施行されるようになった1984年以降では、最少の出走頭数となります。
それでも、レースとしての豪華さが失われないのは、世界最強馬イクイノックス(牡4歳)が出走し、そのイクイノックスを昨年のGI日本ダービー(東京・芝2400m)で破っているドウデュース(牡4歳)も参戦。両者の約1年5カ月ぶりの再戦に耳目が集まっているからでしょう」
イクイノックスは今春のGIドバイシーマクラシック(3月25日/UAE・芝2410m)を圧勝し、IFHA(国際競馬統括機関連盟)が定めるロンジンワールドベストレースホースランキングで1位の評価を受けた。以降、現時点でもその座に君臨している「世界No.1ホース」だ。
片や、ドウデュースは昨秋の凱旋門賞(フランス・芝2400m)で19着と惨敗を喫したあと、今年初戦のGII京都記念(2月12日/阪神・芝2200m)を快勝。ダービー馬としての強さを改めて示したが、春のGIドバイターフ(3月25日/UAE・芝1800m)は脚部不安で回避している。
ここに向けての過程は明暗分かれているものの、2頭の対決に多大な関心が寄せられていることは間違いない。
加えて、今春のGI天皇賞・春(4月30日/京都・芝3200m)で戴冠を遂げたジャスティンパレス(牡4歳)や、GI大阪杯(4月2日/阪神・芝2000m)を勝ったジャックドール(牡5歳)、そしてGII札幌記念(8月20日/札幌・芝2000m)を快勝したプログノーシス(牡5歳)など、現役トップクラスの実力馬が集結。
少頭数とはいえ、好メンバーが顔をそろえたことによって、今年も天皇賞・秋は注目度の高い一戦となっている。
そうした状況を受けて、松田記者はこう語る。
「人気はイクイノックス、ドウデュースの2頭に集中しそうですが、他の馬たちも実力的には"その他大勢"といった面々ではありません。たとえGI馬でもオッズ的には穴馬になり得ますから、馬券的にはそうした伏兵の激走に期待したくなりますね」
そして松田記者は、人気の盲点になりそうな2頭の穴馬候補をピックアップした。
「ジャックドールがまず、その筆頭です。昨年の4着馬が今年、大阪杯を制しGI馬となって戻ってきました。
ローテは昨年同様、札幌記念からの直行。昨年は1着でしたが、今年は6着という結果に終わっての臨戦となります。とはいえ、今年の札幌記念は道悪のうえ、何が何でもハナをきりたいユニコーンライオンの存在もあって、力を出しきれなかったことが敗因でしょう。
鞍上の武豊騎手も『(展開が)流れると思ったけど、3角で前の馬の動きが見えにくかった』と振り返って、自分の競馬ができなかった点を強調していました。
天皇賞・秋での巻き返しが期待されるジャックドール。photo by Kyodo News
思えば、その札幌記念に限らず、2走前のGI安田記念(5着。6月4日/東京・芝1600m)は初のマイル戦、昨年暮れのGI香港C(7着。香港・芝2000m)は初の海外遠征と、ここ最近の敗戦には常にある程度のエクスキューズがありました。
昨年の天皇賞・秋もそう。徹底先行型のパンサラッサが大逃げを打ったことで、2番手以下が動けない形、ある意味で消極的な競馬に巻き込まれてしまいました。
出来落ちが感じられた昨年の大阪杯(5着)は落鉄もあって、行きっぷりが鈍かったです。しかし、今年の大阪杯では自分の形に持ち込んで逃げきっているように、大舞台でも展開ひとつ、と言えます。
まして、今年は先行脚質の馬が少ないうえ、11頭と少頭数の争い。レースで逃げ馬の成否のカギを握るのは2番手の存在ですが、それがどの馬か見極めるのも難しいほど、前有利が見込めるメンバー構成です。
3歳秋以降、中京と東京の芝2000mで記録した5連勝はすべて、前半1000mより後半1000mのほうが速い、いわゆる後傾ラップでした。自ら消耗戦に持ち込めそうな今年は、あれよあれよの逃げきりがあっても驚けません」
松田記者が推奨するもう1頭は、大崩れが少ないベテラン馬だ。
「2頭出しの堀宣行厩舎のヒシイグアス(牡7歳)が気になります。今回は僚馬のダノンベルーガ(牡4歳)と同じく、暑さを考慮して函館で調整できる札幌記念を使っての参戦。最終追い切りを終えたあとの共同会見で堀調教師は、2頭の出来については良化途上としながらも、状態面はヒシイグアスを上にとっていました。
キャリアのピークを超えたとも思われがちな7歳馬ですが、『後肢のバランスに最大の配慮をしながら調整してきた』と堀調教師。デビューしてから半年以上の長期休養が4回もあって、馬自体の消耗は大きくありません。
さらに、堀調教師は『いい時期を先延ばしにしている』と、同馬の能力維持について言及。天皇賞・秋は5着だった2021年以来2年ぶりの参戦になりますが、その間、2021年の香港C、2022年のGI宝塚記念(阪神・芝2200m)とGIで2度の2着を経験し、実績はここでも見劣りしません。勝ち負けを演じる可能性は十分にあります」
2012年以来、11年ぶりに天覧競馬として行なわれる天皇賞・秋。世界最強馬がその実力をいかんなく発揮するのか。はたまた、思わぬ伏兵の台頭があるのか。注目のゲートがまもなく開く。