オリックスと阪神のOB星野伸之が日本シリーズの勝敗を予想 投打のキーマンは?
10月28日よりスタートする日本シリーズは、セ・リーグ王者の阪神とパ・リーグ王者のオリックスが激突。果たしてどんなシリーズになるのか、かつて選手、投手コーチとして両チームに在籍した星野伸之氏に、頂上決戦の展望とキーマンを聞いた。
日本シリーズでの活躍が注目される阪神の 佐藤輝明(左)とオリックスの森友哉 photo by Sankei Visual
――第1戦の先発はオリックスが山本由伸投手、阪神が村上頌樹投手と見られています。
星野伸之(以下:星野) 防御率1点台同士(山本1.21、村上1.75)の投げ合いは見応えがあると思います。ただ、由伸は大舞台の経験が豊富ですし、緊張は村上のほうが感じるでしょうね。それと"関西ダービー"ということで、阪神ファンの応援の熱気が今まで以上にすごいと思うんです。それが選手たちにどう影響するのか、というのは注目しています。
――阪神の第2戦の先発はシーズン終盤に好調だった西勇輝投手、場所を甲子園に移す第3戦〜第5戦は伊藤将司投手、大竹耕太郎投手、才木浩人投手と予想されています。
星野 由伸に村上を当てるのを避けるのであれば、西の第1戦もあるかなとは予想していました。もしくは(第2戦の先発が予想されている)宮城大弥のクライマックスシリーズ(CS)の好投を見ての判断で、そこに西を持っていくつもりなのか......。普通に考えれば、村上、伊藤、大竹などを第1戦、第2戦に一度投げさせて、第6戦、7戦にも投げさせると思うんです。
――阪神は青柳晃洋投手がフェニックス・リーグで好投。起用法が注目されます。
星野 第6戦までいった場合の先発候補にも挙がっているようですが、僕は第6戦は村上なんじゃないかなと。青柳が本当に復調しているのであれば、第5戦あたりを任せるのか......ただ、今の先発陣を見ると、青柳が先発として登板する機会はないかもしれません。
―― 一方のオリックスの第3戦〜第5戦は、東晃平投手、山崎福也投手、田嶋大樹投手が予想されています。
星野 東と山崎が逆になるかもしれませんが、そのような順番になると思います。福也は打撃がいいですし、打席に立つとピッチングも生き生きするので、甲子園で投げさせるんだろうなと。あとは、ルーキーの曽谷龍平をどうするか。リードしている展開でのロングリリーフであれば小木田敦也が適任なので、曽谷はビハインドの展開でのロングリリーフとして入れるかもしれません。
【オリックスはスタメンが読めない】――先ほど、阪神ファンの応援に言及されていましたが、甲子園の雰囲気はやはり独特ですか?
星野 イメージはできると思うのですが、応援が腹に響いてくるほどの感覚は体験しないとわかりませんからね。日本シリーズの熱気はまた違うかもしれませんが、今年の交流戦(阪神vsオリックス)で甲子園での試合を体験できているのは大きいと思います。今年から一軍に定着し始めた東などは相当緊張するでしょうし、東が崩れた場合の次のピッチャーは考えていると思います。
甲子園での登板が予想されている山崎や田嶋も、普段どおりのピッチングをしてくれればと思いますが、甲子園の雰囲気にのまれる可能性やその場合の継投策も考えているんじゃないのかなと。京セラでの第1戦、第2戦を由伸、宮城で2連勝できれば、いろんな策が講じやすいでしょうね。
――両チームともに投手力が高いので、ロースコアの接戦が予想されます。
星野 そうですね。オリックスは頓宮裕真や杉本裕太郎、紅林弘太郎、中川圭太らが故障を抱えていてどういう出場の仕方になるのか懸念されますが、レギュラーシーズンでもみんなで繋げていく野球で勝ってきましたからカバーできるでしょう。阪神に関しても、フォアボールの数が昨年に比べてものすごく増えていますし、次のバッターに繋げていくという意味では似ているのかなと。基本的には3、4点の勝負になりそうです。
――オリックスは阪神の機動力に警戒が必要になりますね。
星野 1、2番が走れますし、終盤には熊谷敬宥や植田海ら走れる選手が控えていますからね。対するオリックスは走れる選手は何人かいますが、あまり走らない。ただ、打席で粘っていくうちにフルカウントになって、自動的に動けるケースを多く作れるのが強みです。
――阪神は打順もポジションも固定されていますが、オリックスは打順もポジションも日替わりで対照的です。
星野 杉本は足首の状態が不安なので、レフトは違う選手が守ると思いますし、もしかするとウエスタン・リーグで首位打者を獲った池田陵真が出てくる可能性がある。または、紅林が大丈夫であれば野口智哉がショートから外野にまわるとか......。今回のシリーズは特に予想しづらいですよね。
阪神のラインナップは固定されているので、打たれる・打たれないは別として、例えば佐藤輝明に対しては「早い段階でインハイに投げろ」といったように、はっきりとした攻め方が導き出せると思うんです。1打席目に打たれたか抑えたかでその後の配球も変わっていくとは思いますが、攻め方の答えらしきものは出るのかなと。
――オリックスは誰が先発で起用されるか予想しづらい?
星野 そうですね。福田周平は打撃の調子が悪いですが、調子を取り戻せれば面白いと思いますし、渡部遼人や小田裕也を先発に起用する可能性もあります。40人枠(日本シリーズ出場資格を有する選手)に入っている選手の中から、誰が出てくるのか本当にわかりません。
ただ、シーズン中もパッと試合に出した選手が活躍していましたし、中嶋聡監督が選手の状態を見極める目がすごくいいので、そこは期待できます。首位打者を獲って自信をつけた頓宮が代打で控えているのも強みですね。
【両チームのキーマンは?】――オリックスの投打のキーマンは?
星野 打のほうは"シリーズ男"の杉本だと思っていたのですが、CSで足首をケガしてしまいました。そうなると、森友哉です。ポイントゲッターとしても、キャッチャーとしても勝負のカギを握っていると思います。基本はキャッチャーに若月健矢を起用して、森はライトというパターンになると思いますが、もし若月が冴えていなかったら森にマスクを被ってもらうこともできる。それと、森は打線の中で一番警戒されると思うので、森の前後のバッターの働きも重要になります。
投げるほうは、山粼颯一郎です。CSでは押し出すような投げ方になってしまっていたり、ホームランを打たれたりとあまり調子がよくなかったですが、颯一郎がビシッとしてくれれば宇田川優希を8回に固定してもいいですし、山岡泰輔が不安定な場合に颯一郎に代えられます。阿部翔太や小木田、比嘉幹貴らリリーフ陣は揃っていますが、颯一郎が復調してくれればさらに厚みを増しますね。
どこに当てはめるかはわかりませんが、CSのピッチングを見ると8回を任せることは多分ないような気がします。7回を任せるか、山岡と天秤にかけて状態のいいほうを登板させるんじゃないかなと。
それと、昨年の日本シリーズ第4戦で、5回途中のピンチに宇田川がマウンドに上がった試合がありましたよね。オリックスは1分け2敗でこの試合を迎えていましたが、宇田川が無失点に抑えて勢いをつけ、最終的に日本一になりました。「いつから準備していたんだろう」と思いましたが、宇田川をどのタイミングで用意させるかというのは今回もポイントになると思います。ただ、それを可能にするには、颯一郎の状態がいいことが条件ですね。
――阪神の打つほうのキーマンは?
星野 佐藤輝明です。オリックスのピッチャー陣は球威も制球もいいので、基本的にインハイを攻められると思うので、そこを見逃すのか打つのか。佐藤の前を打つ大山がよくフォアボールを選びますし、佐藤が好調だったシーズン後半のように打てればオリックスにとって脅威です。ただ、悪い状態の時に見られがちなボール球に手を出す傾向がみられるようだと、大山を申告敬遠で歩かせて佐藤で勝負になると思います。"どちらの佐藤が出るか"でしょうね。
問題は佐藤が"丸裸"にされて打てなかった場合です。打順もポジションも固定しているのでなかなか外せないと思うので、逆シリーズ男になってしまいそうになった時にどう対応するのかは懸念点です。
――投げるほうのキーマンは?
星野 初戦に先発予定の村上だと思います。初めての舞台ですし、それがどう出るか。緊張感はすごくあると思いますが勝てばチームが乗っていく可能性がありますし、村上がどれだけのイニングを投げられるか、最少失点に抑えられるかがポイントです。すごく安定感のあるピッチャーですし、調子がいい時はなかなか打てる球を投げません。ただ、オリックスは粘れるバッターが多いので、どう打ち取っていくのか注目ですね。
――阪神は細かい継投もやってきそうですね。
星野 基本的に僅差の展開が多くなると思いますし、延長戦も考えるとそう簡単には細かい継投はできないんじゃないかと。野手は固定されていますが、リリーフの岩崎優につなぐまでのリリーフ陣はあまり固定されていませんでした。調子のいい投手に投げさせると思いますが、ひとりのピッチャーに完全に8回を任せられるかといえば、そうではない。そこが競った時の勝負を分けるポイントになるかなと思います。
――最後に勝敗予想をお聞かせください。
星野 4勝3敗でオリックスでしょうか。多くの選手が日本シリーズを経験していることが大きいです。お互いに先発が揃っていますし、リリーフもいい。ただ、先発ピッチャーも通常の試合とは違う緊張感があって疲れもたまりやすいので、早めの交代になる可能性もあります。そうなるとリリーフの働きが鍵になりますし、7回、8回のせめぎ合いが白熱するでしょうね。
【プロフィール】
星野伸之(ほしの・のぶゆき)
1983年、旭川工業高校からドラフト5位で阪急ブレーブスに入団。1987年にリーグ1位の6完封を記録して11勝を挙げる活躍。以降1997年まで11年連続で2桁勝利を挙げ、1995年、96年のリーグ制覇にエースとして大きく貢献。2000年にFA権を行使して阪神タイガースに移籍。通算勝利数は176勝、2000三振を奪っている。2002年に現役を引退し、2006年から09年まで阪神の二軍投手コーチを務め、2010年から17年までオリックスで投手コーチを務めた。2018年からは野球解説者などで活躍している。