59年ぶりの"関西ダービー"となる阪神とオリックスの日本シリーズがいよいよ始まる。ペナントレースを圧倒し、クライマックス・シリーズを危なげなく勝ち上がった両チームによる頂上決戦を制するのは? 解説者3人にシリーズの行方を占ってもらった。


阪神・佐藤輝明(写真左)とオリックスのエース・山本由伸 photo by Koike Yoshihiro

◎攝津正氏

 先発、中継ぎとも投手力は互角。終盤まで僅差の展開になると予想します。そんななかポイントになるのが中継ぎ陣。とくに6回から8回を投げる投手が重要になると思います。

 阪神なら石井大智投手、岩貞祐太投手、オリックスなら山粼颯一郎投手、宇田川優希投手の出来がカギになるんじゃないかと思っています。彼らがチームに勢いをもたらすピッチングができるかどうか。

 攻撃力に関しては、阪神はオーダーをほぼ固定しており、飛び抜けた選手はいませんが、それぞれが自分の役割をしっかり理解し、試合巧者ぶりが目立ちます。なかでも1番の近本光司選手、2番の中野拓夢選手が塁に出ると、いろんな攻撃パターンが考えられます。バッテリーにもプレッシャーがかかりますし、オリックスからすればいかに彼らを抑えられるかだと思います。

 オリックスは首位打者に輝いた頓宮裕真選手がシーズン終盤に左足薬指を骨折し、CSでは杉本裕太郎選手が右足首を痛めて負傷交代。現状どこまで回復しているのかわかりませんが、もともとオリックスは総合力で戦ってきましたし、もしスタメンで出場できないとなると痛いことは痛いですが、チーム力がガクンと落ちることはないと思います。なにしろ、吉田正尚選手が抜けても、それを感じさせないほど強い戦いを見せたチームですから。

 今回のシリーズは4勝2敗でオリックスが勝つと思います。まず先発陣の層の厚さ。3年連続投手四冠(最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振)の山本由伸投手、CSですばらしいピッチングを見せた宮城大弥投手のふたりが、それぞれ2回登板できると考えれば、かなり有利になるのではないかと。

 たしかに、阪神先発陣もレベルが高く、枚数も揃っています。ただ、村上頌樹投手、大竹耕太郎投手ともオリックスの選手はファームで対戦経験があり、初見ではありません。そこもプラスに働くのではないでしょうか。

 日本シリーズのような短期決戦は、ひとつのプレーで戦況は大きく変わります。投手からすれば、いかに"シリーズ男"と呼ばれるようなラッキーボーイをつくらないか。また、 "逆シリーズ男"と呼ばれる調子の上がらない選手に仕事をさせないか。それができたチームが勝利に近づくのではないでしょうか。

◎野田浩司氏

 両チームとも先発陣が安定しており、リリーフ陣も強力で、先行すればかなりの確率で逃げ切れます。おそらくどの試合もロースコアの展開になるでしょう。それだけに先発投手の出来が勝敗を大きく左右するのではないか思います。

 とくに1戦目に登板する投手はシリーズの流れをつかむ意味もあり、かなり重要な役割を担っています。おそらく阪神は村上頌樹投手、オリックスは山本由伸投手に託すと思いますが、彼らがシーズンと同じようなピッチングができるか注目ですね。

 山本投手はロッテとのCSで、初回に3点を奪われるなど珍しく打ち込まれました。ただあの試合については、久しぶりの登板だったこともあり、いつものピッチングではありませんでした。フォークの落ちが悪く、いつもなら振ってくれるボールが見極められ、ストレート勝負にいったところを狙われた。修正能力の高い投手ですし、前回のようなピッチングをすることはないと思います。

 阪神からすれば、その山本投手をどう攻略するかがカギになります。キーマンは近本光司選手、中野拓夢選手の1、2番です。粘り強く、簡単に打ちとられるイメージがありません。また出塁すれば足を使って揺さぶってくる。均衡した展開になればなるほど、彼らの存在は大きくなります。

 一方、オリックス打線のキーマンは森友哉選手です。とにかく穴の少ないバッターで、どの球種でもフルスイングしてくる。投手からすればこれほど怖い打者はいません。阪神バッテリーも徹底マークしてくるでしょうが、能力の高さは球界屈指。簡単に抑えられるバッターではありません。森選手の前にランナーを出さないことが重要になってきます。

 シリーズの勝敗ですが、ともに所属したチームですのでどっちも勝ってほしいのが本音ですが、4勝3敗でオリックスと予想します。CSの戦いを見ても、選手がどっしりしている。ポストシーズン慣れしているなと感じました。阪神ファンの応援はすごいし、甲子園での戦いは独特の雰囲気がありますが、そのあたりも大丈夫かなと。経験値の高さは大きなアドバンテージだと思います。

◎岩田稔氏

 ともに投手力があって、打線も派手さはないがしっかりつないで得点する。似た者同士のチームで、接戦になるのは間違いないと思います。

 シリーズは勢いがついたチームが突っ走る傾向が強く、そういう意味で初戦の戦いが重要になってきます。おそらくオリックスは山本由伸投手が先発すると思いますが、阪神はチーム最多勝の村上頌樹投手でいくのか、それともインコースを攻められる西勇輝投手でいくのか注目です。

 短期決戦は印象づけることが大事。初戦で西投手が徹底したインコース攻めでオリックス打線をグチャグチャにすることができれば、その後の展開も変わってくるのではないかと。ふつうに考えれば村上投手ですが、西投手を第1戦に持ってきても面白いと思います。

 打線のキーマンは、阪神は佐藤輝明選手。上位は出塁率が高く、いい場面で佐藤選手に回ってくることが多い。得点機で佐藤選手に一本出ればチームは盛り上がりますし、阪神の流れになる。

 オリックスは日替わり打線で、誰をマークすればいいのか難しいですが、やはり杉本裕太郎選手がカギになると思います。CSファイナルで足を負傷して、どこまで回復しているのか気になるところですが、昨年のシリーズでもMVPを獲得したように短期決戦に強い。杉本選手は長打力もありますし、彼の調子がよければ得点力は上がる。阪神からすれば、乗せたいくない選手ですね。

 予想はほんとに難しいですが、4勝3敗で阪神です。38年ぶりの日本一を達成してほしいという願望もありますが、今年の阪神は集中力の高いチームになってきました。ボール球には手を出さないですし、打ちたい場面でもしっかり我慢して打てる球を待つ。相手からすれば、すごく嫌なチームになってきました。

 もちろん、オリックスは3年連続の日本シリーズ進出ですし、経験値は高い。シリーズの雰囲気もわかっているでしょうし、気持ち的にも余裕があるのではないかと。逆に、阪神はそこにつけ込みたい。オリックスを慌てさせる展開になれば面白くなると思います。