プロ野球ドラフト会議が10月26日に行なわれる。今年は常廣羽也斗(青山学院大)、細野晴希(東洋大)ら「東都7人衆」と呼ばれる大学生投手に注目が集まっているが、東京六大学でも実力派の投手たちが運命の瞬間を待ち侘びている。指名が有力視される、東京六大学の注目投手をご紹介したい。


ドラフトで注目される明治大の(左から)村田賢一、上田希由翔、蒔田稔 photo by 日刊スポーツ/アフロ

■村田賢一(むらた・けんいち)

春日部共栄高校 → 明治大学

181cm/90kg 右投右打

 今秋のリーグ戦で4連覇を逃した明治大だが、ドラフトの上位指名が予想される主将で野手の上田希由斗選手に加え、3投手の指名が予想されている。

 その筆頭である村田は、本人が「負けない投手を目指している」と話すとおり、大学4年間で15勝(2敗)をマークした明治大のエース。緻密な制球力と、スライダーやシンカーなどの多彩な変化球を武器にチームの3連覇に貢献した。ストレートの球速は140キロ代中盤ながら、投球テンポのよさや巧みなアウトコースの出し入れ、調子が悪い中でも試合を崩さない安定感も魅力と言えるだろう。

 また、9月30日の立教大戦では決勝3ラン本塁打を放つなど、投手ではあるが打撃も注目。DH制度のないセ・リーグの球団が獲得した場合は、自らのバットで投球を援護する姿が見られるかもしれない。

■蒔田稔(まきた・みのる)

九州学院高 → 明治大

178cm/83kg 右投右打

 エースの村田にライバル心を燃やす蒔田は、最速150キロの速球と縦の変化球を武器に通算11勝。今秋のリーグ戦では3勝0敗、防御率0.68と見事な成績を残し、本人が「獲らないと一生後悔すると思う」という最優秀防御率のタイトル獲得を確実なものにしている。

 10月21日の法政大戦では、1年ぶりに先発として登板。「『(エースの登板が多い)初戦の先発として投げたい』という思いでずっとやってきた」という気持ちが表れた投球で6回無失点の好投を見せ、可能性が残っていた4連覇に向け、負けが許されないチームを救った。

「ランナーを出してしまっても、緩急を使いながらしっかりインコースに投げ切ることを意識するようになりましたし、ストレートだけでなく変化球も投げられるようになったと思う」

 昨秋から不調に苦しみ、自分自身に向き合った末にモデルチェンジを果たした右腕は、人事を尽くして天命を待つ。

■石原勇輝(いしはら・ゆうき)

広陵高 → 明治大

180cm/85kg 左投左打

 村田や蒔田よりも実績は劣るものの、対角線上に投げ込まれる最速149キロの速球と、落差の大きなカーブとチェンジアップで注目を集める左腕。昨秋にリリーフとして台頭したが、4月24日の慶應大戦で初の先発投手としてマウンドに上がると、6回無失点と好投。田中武宏監督の「帽子が飛ばなくなるまで試合で投げさせないぞ」という言葉を受け、投球時の頭の揺れを意識したことで制球が安定した。

 石原は大学の4年間を「心身ともに成長し、球質もよくなった」と振り返る。大学通算3勝ながら、伸び代を感じさせる左腕へのスカウトの眼差しは熱い。

■尾崎完太(おざき・かんた)

滋賀学園高校 → 法政大

175cm/73kg 左投左打

 実力ある投手陣が揃う法政大のエース。特徴的な2段モーションから投げ込まれる150キロの速球と、落差のあるカーブを武器に三振を量産し、今春のリーグ戦で4勝を挙げる活躍を見せた。

 尾崎と対戦した早稲田大の小宮山悟監督も「横から見ているだけですが、早川隆久(楽天)に質が似ている。真っすぐ、カーブ、スライダーと申し分ない惚れ惚れする投手」と、4球団競合の末にプロに進んだかつての教え子の名前を出し、尾崎の実力を高く評価。プロでもその活躍が期待される。

■池田陽佑(いけだ・ようすけ)

智弁和歌山高 → 立教大

183cm/93kg 右投右打

 最速152キロの速球と、打者の手元で動くカットボールやツーシームが持ち味。1年生の春に早くも初勝利を挙げると、その後も先発投手として活躍した。智弁和歌山時代には4季連続で甲子園に出場。高校3年の夏には星稜のエースだった奥川恭伸(ヤクルト)と投げ合い、延長戦の末に敗れたが高い実力を見せつけた。

 3年生で迎えた昨秋のリーグ戦では、球速が安定して防御率2.23と成長を見せたものの、「プロ入り」を宣言して臨んだ今年は春に挙げた1勝のみ。「調子の波を少なくする」「冷静に試合を見る」ことを意識して臨んだシーズンだったが、試合を作りながら勝利に結びつかない歯がゆい場面も目立った。そこをスカウト陣が評価するかだが、1学年上の先輩、荘司康誠(楽天)に続く吉報を待つ。

■加藤孝太郎(かとう・こうたろう)

下妻一高 → 早稲田大

179cm/77kg 右投右打

 早稲田大学でエースナンバーの「11」を背負う加藤だが、甲子園出場経験者が揃うチームの中では異色とも言える、「一般推薦入試」で野球部の門を叩いた経歴の持ち主だ。昨春のリーグ戦で2勝(2敗)を挙げると、最速147キロながらキレのあるストレートと、球持ちのいいフォームから繰り出される変化球と低めを突く投球術で、続く秋のリーグ戦で最優秀防御率のタイトルを獲得した。

「プロを目指すために大切」と意気込んだ今春のリーグ戦では、エースとして3勝をマーク。5月13日の王者・明治大戦では、4日前の法政大戦で8回を投げながら先発で起用された。その明治大戦は、制球を乱して7失点を喫し負け投手になったが、小宮山監督は「それでも、(早稲田のエースがつける)11番はそれを乗り越えないといけない。こういう状況でも戦える力をつけなければいけない」と檄を飛ばした。

 チームはまだリーグ優勝の可能性を残しているが、制球力を武器に117勝を挙げた小宮山監督の薫陶を受けた右腕は、ドラフト指名と自らの大学最終シーズン優勝の"両獲り"を狙っている。