チーム事情から見るドラフト戦略2023〜ロッテ編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのような戦略に出るのか。吉井理人監督1年目の今季、最終戦でシーズン2位に滑り込み、クライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージでソフトバンクとの死闘を制したロッテに必要な人材は?


最速151キロを誇り、先発、リリーフとどちらもこなす大商大の高太一

【若手は緩やかに成長中】

 吉井理人監督の1年目。70勝68敗5分......最終戦の勝利で3位との勝率わずか1毛差の2位でシーズンを終えたロッテ。左腕エース・小島和哉が7回まで無失点に抑え、坂本光士郎が中を継いで、益田直也が締めくくる。黄金リレーで勝利した楽天との最終戦だった。

 優勝したオリックスに15.5ゲーム差をつけられ、4位の楽天とはわずか1.5ゲーム差。この数字だけを見れば、限りなく「Bクラスに近い2位」ではなかったか。対戦成績を見てみると、オリックスに8勝15敗と粉砕されたが、代わりに西武には16勝9敗と勝ち越し。それ以外の数字はどれをとっても可もなく不可もなしといった感じだ。

 つまり優勝するためには、すべてに補強が必要ということなのだろう。

 昨季44盗塁で盗塁王に輝いた郄部瑛斗が、春に右肩甲下筋損傷、9月には胸郭出口症候群と、結局1年間、戦列を離れたのが痛かった。

 その一方で、春から上位抜擢で起用し続けた藤原恭大が昨年の倍以上の出場機会を得て、今季6年目の快足・和田康士朗も驚異の盗塁成功率で存在感をアップ。打っても打率.265、3本塁打と走るだけの選手ではないことを立証してみせた。ロッテの至宝・荻野貴司に代われる下地はつくれたと見ていい。

 また昨年、高卒ルーキーながら76試合でマスクを被った松川虎生を、今年は1年間ファームでプロの捕手としての基礎を叩き込ませ、トミー・ジョン手術後は中継ぎで奮投していた西野勇士をローテーションで起用して8勝。日本ハムで才能を生かしきれなかった西村天裕を中継ぎで使って14ホールド、防御率1.25。理由のはっきりした采配が、見ているものからすればとても小気味よかった。

【チーム長年の課題である左腕の獲得】

 とはいえ、期待の種市篤暉が右ヒジの炎症、佐々木朗希もシーズン終盤に左脇腹の肉離れで離脱......投手陣に来季の不安が漂った。

 ということで、まずは投手だ。しかも小島、坂本以外に実績の乏しい「左腕」だ。そこはチームの長年の課題でもある。

 昨年は立教大の荘司康誠を1位指名したが、競合の末、抽選で楽天に敗れた。だが今年も怯まず、果敢に超逸材を獲りにいきたい。

 小島とエースの座を競えるぐらいのサウスポーじゃないと「左腕不足」は解消できない。東都に左腕の逸材がふたりいる。武内夏暉(国学院大/185センチ・90キロ/左投左打)と細野晴希(東洋大/180センチ・87キロ・左投左打)だ。

 武内は145キロ前後のストレートとカットボール、ツーシームは一級品で、これにタイミングの合わせにくさが加わる。細野には真ん中でもバットを粉砕できる最速158キロの快速球という武器がある。

 左腕、左腕で攻めるなら、高太一(大阪商業大/180センチ・80キロ/左投左打)と滝田一希(星槎道都大/183センチ・78キロ/左投左打)を推したい。小島が技巧派なだけに、新戦力にほしいのは「快速左腕」だ

 高はボディーバランスの優れたフォームで、コントロールの心配もなく、角度抜群のクロスファイアーは一級品だ。滝田もケガの影響で出遅れたが、ストレートは最速153キロをマーク。大学屈指の快速左腕である。

 この先のことも考え、高校生まで含めて、獲れるだけサウスポーでもいい。

 将来性なら黒木陽琉(神村学園高/183センチ・78キロ/左投右打)と福田幸之介(履正社高/180センチ・77キロ/左投左打)、実戦力なら杉山遙希(横浜高/180センチ・76キロ/左投左打)と武田陸玖(山形中央高/175センチ・77キロ/左投左打)の名前が挙がる。いずれも、3位ないし4位で指名されるポテンシャルの持ち主だ。

【千葉に縁のあるドラフト候補は?】

 チームのキャプテンとしてリーダー的存在の二塁手・中村奨吾にも、わずかに陰りが見えてきた。本当なら、昨年の福永裕基(日本新薬→中日7位)クラスの「二塁手」を求めたいが、ドラフト中位以降となると、大学、社会人に適材が見当たらず、ならば「二塁手経験のある遊撃手」から探すと、社会人2年目の中川拓紀(ホンダ鈴鹿/181センチ・76キロ/右投左打)に行き当たる。

 中村のようなポイントゲッターではないが、50m6秒そこそこの脚力と、広角に低い打球を打ち分けられるチャンスメーカーとして、郄部との快足1、2番も考えられ、中村を一塁、もしくはDHで起用すれば、チームのバリエーションも増える。

 最後に、例年話題になる地元枠(千葉)だが、今年はそれほど多くない。「150キロ右腕」として夏の千葉大会で注目された早坂響(幕張総合高/176センチ・76キロ/右投右打)は、投手経験わずか1年で大台クリアは才能だが、コントロールにも興味を持ってくれたら、もっと面白い存在になる。

 外野手では菰田朝陽(拓大紅陵高/175センチ・73キロ/左投左打)は、「超」がつく快足の持ち主。俊足の選手がプロ入り後に打撃力、守備力を向上させ、飛躍的に伸びるケースは周東佑京(ソフトバンク)が代表例だが、ロッテにだって和田という好例がある。

 さらに、春日部共栄高→明治大という経歴から隠れているが、エース格として奮投した村田賢一(181センチ・87キロ/右投右打)も、じつは千葉県出身の「地元枠候補」だ。