恋人と別れて悲しんでいるときや玉ねぎを刻んでいるときなど、人はしばしば涙を流しますが、涙は透明なのでどれも同じなように思えます。そんな涙には成分が異なる3つの種類があることや、目の表面を覆う3層構造があることなど、身近でありながらあまり知られていない涙について、科学系ニュースサイトのLive Scienceがまとめました。

What are tears made of? | Live Science

https://www.livescience.com/health/what-are-tears-made-of

イギリス・プリマス大学で検眼医学を教えているダニエラ・オーリング氏によると、涙には「基礎涙液」「反射性涙液」「感情性流涙液」の3つのタイプがあるとのこと。このうち「感情性流涙液」はおそらく最も涙として意識されやすい涙で、感情が大きく動いたことにより流れる涙です。これに加えて、目を保護する緩衝材として目に入ったゴミを除去したり、目に栄養を補給したりする「基礎涙液」と、煙や玉ねぎなどの刺激に反応して出る「反射性涙液」が目から分泌されています。

種類ごとに涙の成分にも違いがあり、基礎涙液にはナトリウムイオンなどの電解質や、抗菌作用を持つタンパク質が多く含まれています。具体的には、微生物を構成する特定の化合物と結合して殺菌するタンパク質のリポカリンや、細菌の細胞壁を破壊する酵素であるリゾチームなどが目を感染症から守っています。

一方、反射性涙液と感情性流涙液は水分が多めで、脂肪分とタンパク質の濃度は低めです。また、反射性涙液に比べて感情性流涙液はストレスを感じているときに分泌されるホルモンの濃度が高いと報告する科学者もいます。



涙は目の表面である角膜を覆って薄い膜を形成し、目に栄養を供給していますが、この涙の膜には3つの層があります。一番外側の層は、まぶたにあるマイボーム腺から分泌される油の層で、目の乾燥を防ぎます。

中間の層は涙腺で作られる水っぽい涙で、目に潤いを与えたり、タンパク質や酸素、電解質を供給したりする機能があります。そして、角膜に最も近い内側の層はムチンと呼ばれる粘液上のタンパク質を含んでおり、涙液の膜が目の表面を覆うのを助ける役割を果たしています。

オーリング氏によると、人は1分間に平均約1〜4マイクロリットル、1日に約1.44〜5.76ミリリットルの涙を分泌しているとのこと。その多くは基礎涙液ですが、涙が出る量は何をするかによって大きく変わります。

「例えば、自転車に乗ると空気がたくさん当たるので涙の蒸発率が高くなり、涙の量も増えます。逆に湿気が高いスチームルームに入ると、水分を増やす必要がなくなるので涙の分泌量は減ります」とオーリング氏は話しました。



このように、涙の量は必要に応じて調節されており、余分な涙は涙管を通って目から排出されます。しかし、感情性流涙液や反射性涙液は一気に放出されることが多いので、通常の排出が間に合わずに目からあふれ出します。これが、悲しいときや煙で目が痛いときなどに涙がこぼれてしまう理由です。

一方、涙の分泌量が不足するとドライアイになります。ドライアイの原因はさまざまで、喫煙や栄養不足、PCなどの画面を長時間見続けること、まばたきの減少などが主な要因となるほか、加齢によって涙腺の機能が落ちることによっても発症しやすくなります。

さらに、涙が出なくなってしまう「シェーグレン症候群」という疾患にかかってしまう人もいます。これは、体の免疫細胞が涙腺や唾液腺にダメージを与えてしまう自己免疫疾患で、ドライアイや口の中の乾燥が主な症状です。

オーリング氏は「シェーグレン症候群の人は、反射的に涙が流れることもないので、たとえまつげなどが目に入っても涙が十分に出なくなってしまいます」と話しました。