マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に登場するマイティ・ソーの弟ロキを主人公としたドラマシリーズ「ロキ」のシーズン2が2023年10月6日から配信されています。このロキのシーズン2の宣伝に使用されているビジュアルに、AIで作成されたコンテンツが使用されていると注目を集めています。

Disney’s ‘Loki’ accused of using AI for promo poster - here are the 'telltale' signs of nonhuman creation | Mashable

https://mashable.com/article/disney-loki-backlash-generative-ai-image



ロキの宣伝用ビジュアルにAI生成コンテンツが含まれていると指摘したのは、イラストレーターのカトリア・ラデン氏。同氏はX上で、「ディズニーがロキの宣伝にAIで作成された画像を使用していることにとても落胆しています」と投稿しています。





問題となっているビジュアルが以下のもの。



ロキの背景にある時計の文字盤部分にはローマ数字とは別に「つぶれた文字」のようなものが並んでいます。これはローマ数字が変形した意味のない波線であり、「これはAIが生成する画像の明確な特徴です」と指摘されています。



ロキの背景にあるローマ数字の描かれた時計は、フォトストックサイト・Shutterstockの素材です。この画像にはAIで生成されたものであることを示すラベルが付けられていませんが、同じ投稿者によってアップロードされている別の画像にも、「AIによって作成された画像の兆候」が見られるそうです。

Shutterstockのコンテンツポリシーによると、Shutterstockに投稿する画像のうちAIによって生成されたことを示すラベルをつけずに済むのは、Shutterstockのライブラリでトレーニングされた画像生成AIツールが生成した画像のみ。

そのため、ディズニーがこの画像を使用した理由は、「画像がAIによって作成されたものと気付かなかった場合」あるいは「画像がAIによって作成されたものであることを気にしなかった場合」ですが、いずれにしても「AIの台頭で苦境に立たされているクリエイターをいら立たせる悪い事例である」と海外メディアのMashableは指摘しています。





画像生成AIの台頭により、お絵描きができない人でも手軽に高品質な画像を生成できるようになったため、イラストレーターなどクリエイターの仕事がAIに奪われつつあることが報じられています。そのため、ラデン氏は「ストックサイトに写真やイラストを投稿することで、多くの勤勉なアーティストが生計を立ててきました。しかし、クリエイターの作成するコンテンツを、クリエイターの生成物を大量搾取し、クリエイターの賃金を窃盗するテクノロジー(生成AI)による生成物に置き換えることは、論理的なことだとは思えません」と述べ、AIの使用を批判しています。

あるXユーザーは「最近、ディズニーやマーベルは実際のアートに興味がないようです。あるのはコンテンツだけです。私はまだロキのシーズン2を見ていないので、今回の指摘がロキシーズン2本編に対する批判だと誤解しないでください。ディズニーによるAIの使用は本当に残念なことであり、(クリエイターにとって)良い前兆ではありません」とコメント。





なお、ディズニーはDisney+で配信されているMCUのドラマシリーズ「シークレット・インベージョン」のオープニング映像をAIで作成していたことを明かし、大きな話題を呼びました。特に、クリエイターや生成AIを用いた画像や動画の作成に反対する人々から、ディズニーやマーベルがクリエイティブにAIを用いることに対して否定的な意見が多数寄せられることとなっています。

MCU最新作の「シークレット・インベージョン」ではAIを使ってオープニング映像が作成されている - GIGAZINE



これを受け、「シークレット・インベージョンでAIの使用について批判されたにもかかわらず、またしても同じことをやっているなんて信じられません。残念だ」という声もあります。





ShutterstockのAIツールやAdob​​e Fireflyは、独自のライブラリでトレーニングされているため、生成コンテンツの利用は法的に保護されています。しかし、クリエイティブな仕事をAIに置き換えることは正しいのかという倫理的な問題は依然として残っています。