大きく口を開けて息を吸う「あくび」は、過度に疲れているときや眠気を感じているときなどに反射的に起こる動作です。ニューヨーク州立大学の研究チームが、「あくびは外敵などの脅威に対する警戒心を高めるために進化した可能性があります」と主張しています。

Seeing other people yawn selectively enhances vigilance: A conceptual replication.

https://psycnet.apa.org/record/2024-05516-001



Yawning evolved as a mechanism for threat detection • Earth.com

https://www.earth.com/news/yawning-evolved-as-a-mechanism-for-threat-detection/

ニューヨーク州立大学のアンドリュー・ギャラップ氏らの研究チームは「あくびは集団のメンバーの誰かが疲れているというシグナルとして進化した可能性があります」との仮説を発表。研究チームによると、このシグナルに気付いた他のメンバーは、疲労を感じ、外敵に狙われやすいメンバーをカバーするために警戒心を強めているとのこと。

また、研究チームは「あくびが移るなどの身近な人のあくびに同調し、その影響を受ける傾向は、集団内での生存能力を高めるために進化したのかもしれません」と述べています。

この仮説を検証するため、まず研究チームは27人の参加者に対して「あくびをしている人」もしくは「あくびをしていない人」の動画を提示。その後、ランダムな順序で参加者に、人間の脅威になり得るライオンの画像と、カモシカの一種である草食動物のインパラの画像、その他関係のない画像を提示しました。提示された画像の中から参加者はライオンの画像だけを検出することが求められました。



実験の結果、研究チームは「あくびをしている人物の動画を提示した参加者は、ライオンの検出が早くなる一方で、インパラの検出速度が低下しました」と報告しています。

以前の研究では、あくびをする人物を見た参加者は、ヘビを検出する能力が高まることが報告されており、今回の実験によって、他者のあくびを見ることで脅威を検出する能力が向上する効果がヘビだけで現れるのではなく、ライオンなど異なる動物においても同様に発生することが明らかになりました。



ギャラップ氏は「以前の実験を条件を変えて再度行うことは、元の発見が偶然の出来事や統計的異常によるものではないことを確認するために重要な作業です。今回の実験のように、以前の実験を条件を変えて同じ効果を再現できれば、ある発見が真の効果を示しているという確証が得られます」と述べています。

またギャラップ氏は「他人のあくびを見ることで、ヘビやライオン、その他の動物などの脅威を検出する能力を高めること、つまり人間の警戒心を向上させることができると示されました」と報告しています。