クモの糸を吐く遺伝子組み換えカイコから防弾チョッキ用ケブラーの6倍丈夫な繊維が生産可能に
中国東華大学の科学者たちが、遺伝子を組み換えたカイコからクモの糸を合成し、防弾チョッキに使われるケブラーの6倍も丈夫な繊維を作り出したと発表しました。
High-strength and ultra-tough whole spider silk fibers spun from transgenic silkworms: Matter
https://www.cell.com/matter/fulltext/S2590-2385(23)00421-6
Spider silk is spun by silkworms for the first time, offering a green alternative to synthetic fibers
https://phys.org/news/2023-09-spider-silk-spun-silkworms-green.html
ナイロンやケブラーなどの合成繊維は、製造時に化石燃料を使用するため環境汚染が起こると懸念されています。こういった素材の使用量が増加するにつれ、代替となる環境に優しく持続可能な素材の開発が求められています。
東華大学のミ・ジュンペン氏らは、遺伝子編集技術のCRISPR-Cas9を用いて編集したプラスミド混合物を卵に注入し、クモの糸を紡ぐカイコを誕生させました。
カイコから得られた繊維はケブラーの6倍以上の靱性を持ち、引張強度も優れていました。
カイコの糸はシルクとして流通していますが、クモの糸ほど強靱ではないため、主に衣服などに利用先が限られています。一方クモの糸は合成繊維に並ぶ強力な繊維として知られていますが、クモの共食いの性質により商業化が困難です。
今回の研究により、人工的に生成したクモの糸以上に強靱な繊維の商業化が促進されることが期待されます。ジュンペン氏らは「クモの糸の商品化への道が開かれました。この繊維は合成繊維の代替品として有望な可能性をもたらします」と述べました。