アルピナD4Sグランクーペに試乗 「改善すべきところが思い浮かばない」は本当か?
選択肢が増えた21世紀のアルピナ
かつてのBMWは非常にシンプルなラインナップで、その中からベースモデルを選ぶアルピナの顔ぶれはそれ以上にすっきりとしていた。
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B3かB5かB7のいわゆるリムジンがメイン、あとはその時々で、という感じ。
アルピナD4Sグランクーペ。3Lの直6ディーゼル・ビターボなのだが、同じG26のボディを使用した3LガソリンのB4グランクーペも選ぶことができる。
だが時代は変わり、21世紀のアルピナのパワーユニットはガソリン以外にディーゼルも選べるようになり、ボディのバリエーションも増えた。
現行モデルではSUVやツーリング(ステーションワゴン)、そしてグランクーペも選べるようになっているのだ。
本稿の主役たるBMWアルピナD4Sグランクーペはその名の通りBMW 4シリーズのグランクーペをベースにした4枚ドアのスタイリッシュな1台だ。
現行のBMW4シリーズのグランクーペは2代目となっているが、アルピナとしては今回が初のモデル化となる。今回試乗したモデルはD4Sグランクーペ、つまり3Lの直6ディーゼル・ビターボなのだが、同じG26のボディを使用した3LガソリンのB4グランクーペも選ぶことができる。
筆者が以前からD4Sグランクーペに試乗してみたかった理由は、今年1月にアップされた記事で、英国編集部のマット・ソーンダースが「改善すべきところが思い浮かばない」と評価していたからである。
彼は1000kmを無給油で走れる省燃費性能を高く評価していたが、アルピナの魅力は効率の良さだけではないはず。さあ実車に触れてみよう。
究極のディーゼルはパワフル&省燃費
D4SグランクーペはBMWのM4でおなじみの縦長のキドニーグリルとアルピナ製のチンスポイラーによって厚みを感じさせるフロントマスクを特徴としている。
試乗車の室内は随所にブルーのレザーが配されていた。ブルーのアクセントはアルピナを象徴するブルーのメーターパネルと相性抜群。2台と同じ仕様がないと言われるアルピナらしさが増して感じられた。
試乗車の室内は随所にブルーのレザーが配されていた。ブルーのアクセントはアルピナを象徴するブルーのメーターパネルと相性抜群。
走り出した瞬間に驚かされたのはステアリングを通じた手応えの強さだった。D4SのベースとなったBMW M440i xドライブ・グランクーペの軽やかなタッチとはまるで別物。操舵自体はEPS(電動パワステ)が効いているので重くはないが、直進性が高く、太いタイヤが地面を掴んでいる感覚がよくわかる。
一方アルピナ製の3Lツインターボ・ディーゼルユニットはストレート6と48VのMHEVシステムがうまく融合しており、回転フィールが非常に緻密。スロットルを強く踏み込むと5000回転のリミットまで大排気量のガソリン自然吸気エンジンのような怒涛のトルクを感じさせつつ吹け上がっていく。
8速スイッチトロニックのレスポンスも鋭いので、積極的にステアリング裏のパドルでシフトを楽しもうという気にさせてくれる。
気兼ねなくエンジンを回して走っている最中、ふとメーター内の燃費計を確認すると10.4km/Lの文字! そこであらためてディーゼルである事実を再確認させられた。
アルピナほど上手くディーゼルの旨味を引き出しているブランドはないはずだ。
AWDだけれど、リア偏重という個性
道幅が広めのワインディングを走りながら、D4Sグランクーペを堪能する。速度が高まるほどに、スロットルとリアタイヤが強く結ばれていくような感覚になる。コーナーの立ち上がりでは730Nmという強烈なトルクと極太のリアタイヤで路面を蹴り出していく感じ。例えが適切ではないかもしれないが、少しだけポルシェ911っぽい? と思ってしまった。
現在のアルピナは以前のようにAWDモデルをALLRAD(アルラット)と呼んでいないが、D4Sの駆動系はAWDだ。電制のセンターデフによる前後の駆動配分もアルピナが入念にチューンしている部分であり、当然のようにリア寄りになっているはず。
英国編集部が下した「改善すべきところが思い浮かばない」という評価は本当だろう。
だがそもそも前255に対し後285という大胆なタイヤのサイズ設定(M440iは前245、後255)とリアデフに仕込まれたLSDの存在がD4Sの「リア偏重」のキャラクターを決定づけていると思う。
ウエットのアウトバーンを飛ばしていくような場合にAWDは不可欠な装備といえる。だが積極的なスロットルオンで楽しむワインディングでフロントタイヤが安定方向に出しゃばるような真似はしないというわけだ。
ディーゼルの長所を伸ばしつつ一切のネガが払しょくされたD4Sグランクーペのドライブフィールは非常に新鮮。英国編集部が下した「改善すべきところが思い浮かばない」という評価は本当だろう。
だがD4Sグランクーペのメカニカルな部分は基本的にはD3Sリムジンと同じなので、最終的な評価はカスタマーの好みに委ねられることになるはずだ。
アルピナD4Sグランクーペのスペック
価格:1280万円
全長:4790mm
全幅:1850mm
全高:1440mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:-km/L
CO2排出量:-g/km
車両重量:1970kg
パワートレイン:直列6気筒2992ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:355ps/4000-4200rpm
最大トルク:74.4kg-m/1750-2750rpm
ギアボックス:8速オートマティック
アルピナD4Sグランクーペ