毛虫に刺されて皮膚が腫れ上がった経験がある人は多いはず。新たに一部の毛虫が持つ毒が細胞に穴をあける効果を持っていることが明らかになりました。さらに、毛虫の毒が細菌の毒から進化したものである可能性も浮上しています。

Horizontal gene transfer underlies the painful stings of asp caterpillars (Lepidoptera: Megalopygidae) | PNAS

https://doi.org/10.1073/pnas.2305871120



Caterpillar venom study reveals toxins borrowed from bacteria - UQ News - The University of Queensland, Australia

https://www.uq.edu.au/news/article/2023/07/caterpillar-venom-study-reveals-toxins-borrowed-bacteria



「毒」と聞くと有害なイメージが真っ先に思い浮かびますが、動物が持つ毒は医療分野や農業分野で役立つ分子の供給源としての側面も持ち合わせており、毒の分析は人類の発展に大きく役立つ可能性を秘めています。クイーンズランド大学の研究チームは「Megalopyge opercularis(アスプ)」と呼ばれるガの幼虫を対象に、分泌される毒の成分を分析しました。

アスプは以下のような長い体毛に覆われたガの幼虫で、体毛には毒が含まれています。アスプの体毛が皮膚に付着すると「重度の焼けつくような感覚や発疹」が現れることが知られています。



研究チームがアスプの毒を分析した結果、アスプの毒には「細胞に穴をあける効果」があることが判明しました。研究チームの一員であるアンドリュー・ウォーカー氏は「アスプの毒は、これまで確認されてきた昆虫の毒とはまったく異なるものでした」と述べ、その特異性を強調しています。

さらに分析を進めた結果、アスプの毒と一部の細菌の毒を構成するタンパク質が類似していることも判明。このことから、研究チームはアスプの毒が細菌の毒から進化したものだと推測しています。

ウォーカー氏は「細胞に穴をあける毒素には、細胞に侵入する能力があります。このため、薬物送達において効果的に働く可能性があります。分子を操作することで、有益な薬剤を細胞に送達したり、がん細胞を選択的に攻撃したりする手段を導き出せるかもしれません」と述べています。

なお、動物の毒を医薬品開発に活用する事例は複数存在しています。例えば、2020年には毒グモの毒から副作用の少ない鎮痛剤が開発されています。

「毒グモの毒」から副作用と依存性の少ない鎮痛剤が開発される、オピオイドの代替として期待 - GIGAZINE