まだイングランド2部バーミンガム・シティでプロ1年目を過ごし、そしてドイツにやってきてまだ数ヶ月しか経っていないころ、ジュード・ベリンガムはキッカーとの最初のインタビューの中で、「僕はもう見習いなんかじゃないんだ」と答えていた。このコメントはクラブや彼の家族自身の許可を得た上で明かされたものでがあるであり、確かに大胆な発言ではあってもそれほど類稀な才能に恵まれた、野心に溢れる若者にとっておかしな発言でもなかった。事実ベリンガムはほどなくしてそのクオリティをピッチ上で表現していくことになり、瞬く間に見るものを魅了する選手へと飛躍していくことになる。

 あれから3年。ベリンガムは今さらなる高みを目指そうとしているところだ。その行き先はレアル・マドリード。トニ・クロースやルカ・モドリッチら中盤の後継者として、19歳の若きイングランド代表は期待を集めているところであり、そしてチャンピオンズリーグ最多優勝回数を誇るメガクラブの成功の継続を託されるところ。そのためにレアルでは移籍金として基本金1億300万ユーロと、6年間にわたる成功報酬を追加する形で獲得を打診。たしかにドルトムントファンとしては1億5000万ユーロを期待するものもいたかもしれないが、それでもこの契約はすべての関係者にとって納得のいくものではあるだろう。

 それでもドルトムントが傑出したサッカー選手、卓越したプロフェッショナルを失うという事実に代わりはない。自身も最近まで同じ立場にあったからだろうか、ベリンガムはファンからのサインなどに対して感謝の気持ちを失うようなことはなく、常に時間を作って人々に喜びを与えようとしていた。公開練習が終わるといつも写真やサインのリクエストに応え、一番最後にロッカールームへと入っていたものである。

 ただ第3キャプテンも担っていたベリンガムだが、チーム内では少し厄介な存在にもなっていた。同僚らに不平不満をぶつけたり、時には人を見下したような態度や多少激しく苦言を呈するようなこともあった。それはベリンガムほど卓越した選手ゆえに許されたところもあるだろうが、これからレアル・マドリードにいくのであれば、この点については修正をはかっていかなくてはならない。だがそれもベリンガムならばきっと、即座に対応をみせることだろう。事実その柔軟性と勤勉さはドルトムントでもみせていたものだ。

 加えて今回の移籍は例えばウスマン・デンベレなどとは異なり、不協和音のないまったくもってクリーンな移籍となっている。ベリンガムほどの選手であれば、いつかはレアルへと旅立つことは十分に考えられることであり、理解できること。唯一心残りをあげるとするならば、最後にリーグ優勝という有終の美を飾れなかったことくらいだろうか。特に重要な局面にあった最後の2試合で、ベリンガムはピッチに立つことすらできず、まさかの逆転でリーグ優勝を最終節で逃す結果となってしまったのだ。またいくら高額の移籍金が入り、それをもとにこれから補強を行うとしても、ベリンガムのもつ魅力という損失をカバーすることはドルトムントはおろか、ブンデスリーガにとってもできることではない。