コンピューターを動かす上でどうしても出てしまう熱を排出するため、コンピューターには大きなファンを回して温度を下げる空冷式や、パイプを張り巡らせて冷却剤を通して温度を下げる水冷式の冷却装置が取り付けられています。アメリカのスタートアップ・Frore Systemsが、手のひらサイズで従来よりも静かで冷却効率の高い技術「Solid State Active Cooling(ソリッドステートアクティブ冷却)」を開発し、2023年5月30日〜6月2日まで開催されたアジア最大規模のコンピュータ見本市「COMPUTEX TAIPEI 2023」で公開しました。

Radical AirJet cooling chips can double a laptop's performance | PCWorld

https://www.pcworld.com/article/1388332/new-airjet-chips-can-double-a-laptops-performance.html

Solid state active cooling is here and working in a mini-PC • The Register

https://www.theregister.com/2023/06/01/frore_systems_airjet_cooling/

Frore Systemsの開発した新型冷却技術「ソリッドステートアクティブ冷却」は、以下のムービーで見ることができます。

Solid State Active Cooling Could Revolutionize Thermals - YouTube

これがソリッドステートアクティブ冷却を実用化した「AirJet Mini」です。サイズは縦41.5mm×幅27.5mm×2.8mmで、SDカードよりもちょっと大きい程度。Frore Systemsによれば、従来のファンよりも高い空気圧を供給しながら、ノイズが低減され、冷却パフォーマンスが最大2倍になるとのこと。



また、AirJet Mini(右)2枚分の性能を持つAirJet Pro(左)も用意されています。



ソリッドステートアクティブ冷却の特徴は内部にある特殊な膜で、超音波の周波数で振動することで気流が生まれ、基部にあるヒートスプレッダーを通り抜け、熱を奪い、排気される仕組み。具体的な技術について、Frore Systemsは「企業秘密」として明らかにしていませんが、特殊な膜は「構造共鳴」と呼ぶもので共鳴し、最小限の電力で最大の振動を生み出す工夫がされているそうです。



AirJet Miniの天面にある4本のスリットから吸気し、側面から排気します。



Frore Systemsによると、AirJet Miniの動作電力は1Wで、5.25W相当の熱を排気するそうです。気流の強さはかなりのもので、COMPUTEX TAIPEI 2023のブースでは、AirJet Proの排気でピンポン球を浮かすデモンストレーションが展示されていました。



Frore Systemsによると、AirJet MiniやAirJet Proは一般的なノートPC用ファンと比べて10倍以上の圧力で空気を送り出すことができ、さらに動作音のノイズレベルは21〜24dBAを下回っているとのこと。この21〜24dBAというノイズレベルは木の葉の触れ合う音程度。一般的なノートPC用ファンは40dBA前後とのことなので、AirJet MiniやAirJet Proの静音性はかなり高いといえます。



また、底面にファンが設置されているノートPCの場合、ベッドやカーペットの上に置くとどうしても熱がこもりがちになってしまいますが、AirJet MiniやAirJet Proは通常のファンと違って側面から気流が出るため、置いた場所によってノートPCの排熱がこもってしまう問題も解決できるとFrore Systemsは述べています。



ただし、ソリッドステートアクティブ冷却を実用化したAirJet MiniやAirJet Proの製造コストがどれだけ高いのかは不明です。Frore Systemsは「私たちは複数のOEMと提携しており、2023 年には製品が市場に投入されることを期待しています」と述べています。また、半導体メーカーのIntelはソリッドステートアクティブ冷却の市場投入を支援しているとのことです。