女性看護師1万人以上を対象に行われた研究の結果、結婚は女性に身体的な健康にいい影響を与え、心理的苦悩を軽減させる傾向にあることが明らかになりました。一方で、離婚した女性は心臓病などのリスクが高まることもわかりました。

Marital transitions during earlier adulthood and subsequent health and well-being in mid- to late-life among female nurses: An outcome-wide analysis - ScienceDirect

https://doi.org/10.1016/j.gloepi.2023.100099



For Long-Term Health and Happiness, Marriage Still Matters - WSJ

https://www.wsj.com/articles/for-long-term-health-and-happiness-marriage-still-matters-86114ced



ハーバード大学定量社会科学研究所のYing Chen氏、スタンフォード大学小児科学部門定量科学ユニットのMaya B. Mathur氏らは、アメリカの女性看護師1万1830人を対象に、結婚や離婚の影響で身体的健康・健康行動・心理的苦痛・心理的幸福感などが、どのように変化するかを調べました。

従前の研究では一般に「既婚者と独身の人・離婚した人を比較すると、既婚者の方が健康で幸福である」といわれてきましたが、Chen氏らはこの結論について、「幸せで健康な人たちが結婚しやすい」という可能性が見逃されており、また、離婚のリスクとそれに伴うネガティブな影響が勘案されていないと指摘しています。

Chen氏らの調査の結果、結婚した女性は結婚しなかった女性に比べて死亡率が35%低く、心血管疾患やうつ病のリスクや孤独感も少なく、幸福感や楽観性が高く、目的意識や希望がより強かったことがわかりました。



Chen氏らは、離婚の影響についても調査を行いました。その結果、調査開始時点で既婚者だった人のうち、離婚した人は結婚生活を継続して離婚しなかった人に比べて、孤独感やうつ病の増加をはじめ、その後の健康や幸福感に悪影響が出ていることがわかりました。死亡率も、離婚した人の方が離婚しなかった人に比べて19%高かったとのこと。



この研究は女性のみが対象だったため、結婚が男性に与える影響についてはなにも言及できないものの、Chen氏らは、「健康や幸福感に影響を与える要因が多くある中で、25年間の調査期間のなかで結婚が死亡率を3分の1以上減少させ、離婚は死亡率を5分の1以上増加させる可能性があるというのは、現代の生活において女性にとって結婚がいかに重要かを示しています」と結論づけています。

なお、文化的な背景の違いもあるため、この結論は結婚観が異なる現代の若者に当てはまるかどうかは継続的な調査が必要だとのことで、また、同性婚についてもさらなる研究が必要だとChen氏らは述べています。