トヨタが「幼児の置き去り」に動いた! 送迎バスの「置き去り防止装置」を発表! 痛ましい事故の減少に貢献へ

写真拡大 (全3枚)

国交省のガイドラインに沿った装置の要件は?

 数々の報道でもあるように最近では2021年と2022年の夏に立て続けて送迎バス内に幼児が取り残され死亡するという痛ましい事故が起きました。
 
 そうした中トヨタは2023年2月28日に自動車メーカーとして日本初の「送迎バス置き去り防止装置」を発表しましたが、どのような経緯で開発されたのでしょうか。

痛ましい事故を減らしたい…その思いでトヨタが防止装置を開発

 置き去り防止装置は自動車関連企業に関わらず、様々な企業が商品化を進めており、チューニングブランドとして有名なHKSも送迎バス安心見守り装置「MAMORU(仮称)」の実証実験を開始するなど各界で対策が講じられてきました。

【画像】えっ…!全然違う!日本と韓国の安全対策の違いを写真で見る(13枚)

 同製品は送迎終了時に「車内最後部に設置したボタンを押す」というひと手間で、人による目視確認と車内に設置した人感センサの両方にて所在確認を行ない、置き去りを防止します。

 このような中、2022年12月20日には、国土交通省自動車局技術・環境政策課/同車両基準・国際課から「送迎用バスの置き去り防止を支援する装置のガイドライン」が発表されていました。

 運用実態や装置の開発状況などを踏まえヒューマンエラーを補完する装置として、「降車時確認式」(押しボタン式など)、「自動検知式」の2種類の装置について要件が公開されています。

--
 ●降車時確認式(アメリカのスクールバスなどでも導入されている、もっとも確実な方法)

 エンジン停止後、運転者等に車内の確認を促す車内向けの警報を発する。運転者等が、置き去りにされたこどもがいないか確認しながら車内を移動し、車両後部の装置を操作することで、警報を解除可能。

 車内の確認と装置の操作が行われないまま一定時間が経過すると、更に車外向けの警報を発する。

 ●自動検知式装置の作動

 エンジン停止から一定時間後にカメラ等のセンサーにより車内の検知を開始。置き去りにされたこどもを検知した場合、車外向けの警報を発する。
--

 なお、両方式に共通の要件として以下のものが挙げられます。

 ・運転者等が車内の確認を怠った場合等には、速やかに車内への警報を行い、15分以内に車外への警報を発すること(※自動検知式においては15分以内にセンサーの作動を開始)
 ・こどもがいたずらできない高い位置に警報を停止する装置を設置
 ・30〜65度への耐温性、耐震性、防水・防塵性等十分な耐久性を有すること
 ・装置が故障・電源喪失した場合には、運転者等に対してアラーム等で故障を通知

 その後、内閣府は「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のリスト」として「各メーカーからの申請に基づき、ガイドラインへの適合が確認された製品」を公開しました。

 2023年2月22日時点で加藤電機、コアテックシステム、パイオニアなど合計18種類の「置き去り防止装置」が掲載されています。

トヨタは「降車時確認式」を採用、開発経緯は?

 このような中、2023年2月28日には自動車メーカーとしては初めてとなる「送迎バス置き去り防止装置」がトヨタから発表されました。

 こちらは販売店装着の純正用品として、コースター(幼児専用車)、ハイエース(幼児バス)向けに同年4月より発売が予定されているものです。

 エンジン停止(IG/ACC OFF)後、運行スタッフに装置からの音声案内で車内の確認をうながしたあと、確認が実施されない場合や、確認を実施したものの万一車内に置き去りにされた幼児などが自ら助けを求める場合に、車外へ警報を発します。

 バスが到着して幼児などを降ろしたあと、バスのドライバーや同乗する保育スタッフなどが車内に残っている子どもがいないかを確認して、車内最後尾に設置した降車確認ボタンを押すと音声案内が停止する仕組みです。

 音声案内開始から一定時間経過しても「降車確認ボタン」が押されない場合、ホーンの吹鳴とハザードランプの点滅で車外へ警報し異常を知らせるシステムとなっています。

 また、幼児が置き去りにされた場合、子ども自らがボタンを押すことでもホーンの吹鳴とハザードランプの点滅で車外へ警報します。

 ハイエース(集中ドアロック付車)では「ここだよボタン」に連動してドアロックが解除されるので、子どもは自分でバスから降りることも可能です。

トヨタ「コースター」や「ハイエース」に設定される「送迎バス置き去り防止装置」

 今回の防止装置について、トヨタ広報部は次のように話しています。

「車内に置き去りにされた幼児が犠牲になるという大変痛ましい事故を一件でも防ぎたいという思いから、本商品の開発を進めてきました。

 ガイドラインに沿う形での対応〜製品化となりますが、とにかく悲しい事故が1件でもなくなるようにとの想いです。

 当装置だけですべてが解決するものではありませんが、今回のような製品化〜話題喚起も通じて、お使いいただくユーザー様の安全意識の向上にもつなげられればと思っております。

 今後も『安全・安心』なクルマ社会を実現していくために、あらゆる努力を進めてまいります」

※ ※ ※

 なお今回トヨタが発表した対策装置の対象車種は「コースター(幼児専用車)年式 2004年7月〜」、「ハイエース(幼児バス)年式 2004年8月〜」となっていますが、車両仕様等の条件により対象が限られるとのことで、発売時期は2023年4月以降となり価格は10万円前後を予定しています。

 幼稚園や保育園など送迎バスを導入している園が意識を高く持って、ヒューマンエラー防止を確実な方式で支援するこのような置き去り防止装置を装備し、悲惨な死亡事故が根絶することを願いたいものです。