by Ars Electronica

2023年1月19日からスイスのダボスで行われた世界経済フォーラムにおいて、法倫理学者のニタ・ファラハニー氏が、企業による従業員の脳波モニタリングを可能とする技術について講演を行い、脳波のモニタリングが将来一般的になるとの見解を示しました。

World Economic Forum speaker touts technology that allows your boss to monitor your brain activity - LifeSite

https://www.lifesitenews.com/news/world-economic-forum-speaker-touts-technology-that-allows-your-boss-to-monitor-your-brain-activity/

世界経済フォーラムの講演の中でファラハニー氏は「脳波のモニタリングによって心を読み取る装置は未来のデバイスではありません。脳波を検知するセンサーを備えたヘッドバンドや帽子、イヤホン、ヘッドホンなどのウェアラブルデバイスを使用することで、人間の幸福や悲しみ、怒りなどの感情を検出する技術がすでに生み出されています」と述べています。ファラハニー氏によると脳波のモニタリングを行うことで、将来的に思い浮かべている顔や単純な形、数字、パスワードなどを解読することが可能とのこと。





翌日の2023年1月20日に行われたパネルディスカッションでファラハニー氏は、心を読み取るデバイスがイヤホンなどの多機能デバイスに統合されることについて述べ、近い将来、これらのテクノロジーが一般的になることを予測しました。

ファラハニー氏は「世界中の5000社以上の企業が、すでに従業員の脳波をモニタリングして疲労レベルを調べています」と述べ、「私たちは脳波のモニタリングが一般的になった社会を望むべきです」と主張しています。

ファラハニー氏は運転中に居眠り運転をして死亡事故を起こす長距離トラックドライバーを例に、「脳波のモニタリングは職場で起こりうる問題を解決する可能性があります」と強調しました。ファラハニー氏によると、電気センサーを組み込んだウェアラブルデバイスがあれば、脳波や覚醒度を測定することでこのような事故は防げた可能性があるとのこと。



近年の自動車には自動ブレーキや車線逸脱防止支援システムなどの事故防止の技術が搭載されていることが多いですが、ファラハニー氏は「これらの事故防止技術に加えてより早く、正確に介入することができる脳波をモニタリングするデバイスの導入が必須です」と主張しています。

さらにファラハニー氏は開発中の脳波モニタリングデバイスとして、マサチューセッツ工科大学が開発した集中が途切れ始めたときにブザーを鳴らして警告するデバイス「触覚スカーフ」を紹介しています。





ファラハニー氏は「脳波モニタリングは、ニューロテクノロジーの分野で並外れた可能性を秘めています。一方で、脳波モニタリングは、これまで社会全体に導入された中で最も抑圧的な技術にもなりかねません」と述べ、企業による脳波モニタリングが従業員の抑圧につながる可能性を認めています。

ファラハニー氏は、「AIやセンサーの性能が向上することで脳波を読み取るデバイスの潜在的な用途は増えますが、認知的自由の権利を認め、既存の国際人権規約を更新することで、プライバシーの侵害に対する保護が必要です」と述べています。さらに「これらの対策を取ることで、雇用主が従業員個人の自律性を尊重するようになり、個人の感情などをモニタリングすることはなくなるでしょう」と予想しています。

なお、世界経済フォーラムの創設者であるクラウス・シュワブ氏は「脳波を読み取るために脳に埋め込むチップは今後10年で広く普及するでしょう」と予測しています。また、テスラやTwitterのCEOを務めるイーロン・マスク氏はNeuralinkを創業し、2016年からの5年〜10年以内にテレパシーによるコミュニケーションを可能にする脳インプラント技術を研究しています。