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 残留を争うボーフムに3失点、続くヴォルフスブルクには5失点、さらにドイツ首都決戦となったライバルのウニオンには2失点と、新年から3試合ではやくも10失点を喫し3連敗となった、ヘルタ・ベルリン。それでもフレディ・ボビッチ競技部門取締役は試合前の時点で、批判が噴出しているサンドロ・シュヴァルツ監督の続投を既に明言していたのだが、しかしながら自らの職を保つことはできなかった。キッカーが得た情報によればクラブ首脳陣は試合前から、そのボビッチ氏に対して最後通告の用意をしており、敗戦を受けたその夜に通達。その結果でボビッチ氏退任というサプライズが報じられたのだ。

 最近では18年間の任期を経て退任となったドイツ代表のマネージャー、オリヴァー・ビアホフ氏の有力な後任候補として浮上していた元ストライカー。だが所属するヘルタ・ベルリンのカイ・バーンスタイン会長はこれに対して、「去る者は追わず」の視点でみているとコメント。これにボビッチ氏は不快感を抱いていたものの、実は長きに渡りクラブ内ではボビッチ氏に対する不満の声があがっていた。

 2021年夏にヘルタの安定化をはかるためにアイントラハト・フランクフルトから招聘されたボビッチ氏だったのだが、例えば戦力補強の点だけでみてもビョルカンやイ・ドンジュンなど1年前に契約した選手が今冬には移籍、それ以外にもマオリダ、エンソナ、さらに既にクラブを後にしたエケレンカンプなど補強ミスが目立ち、大ベテランのヨヴェティッチやボアテングなどは体力面での問題から散発的な活躍にとどまることに。その上で先日ボビッチ氏はチームの質の低さを憂う一方、今冬はニーダーレヒナー以上の補強は金銭的にできないとの見方さえ示していたのである。

 それだけではない。ヘルタ就任1年目からクラブの象徴的存在であったパル・ダルダイ監督を更迭、その上で敢えて招聘したタイフン・コルクート監督で失敗を重ねると、最後はフェリックス・マガト監督を緊急当番させてなんとか残留。今夏よりシュヴァルツ監督を迎え入れたが、現在は自動降格圏内へと低迷。その間にヘルタではクラブ内で着実に育成してきたアルネ・フリードリヒSD、さらにインゴ・シラーCFOまでクラブを後にし、会長においても自ら選挙で推していたシュテッフェル氏がまさかの敗退。代わりに選ばれたカイ・バーンスタイン会長とボビッチ氏との間にはすでに前述の通りに摩擦が生じていた。

Unser Präsidium hat gemeinsam mit dem Aufsichtsrat des Hertha BSC e.V. einstimmig entschieden, seinen Geschäftsführer Sport, @FrediBobic1971, mit sofortiger Wirkung von seinen Aufgaben zu entbinden.https://t.co/Nh7OlgSOFY #HaHoHe pic.twitter.com/2aYh2akaKR

- Hertha BSC (@HerthaBSC) January 28, 2023

後任はSDとTD設置で解決はかる

 後任人事についてはて長年アカデミーを担当してきたベンヤミン・ウェーバー氏がTDとなり、そのウェーバー氏の推薦により、ヘルタの元選手(149試合出場)で前述のダルダイ監督時代にACやユースの指導も行なった経験もつ、アンドレアス・”ゼッケ”・ノイエンドルフ氏がSDに就任。チームプランナーのダーク・ドゥフナー氏は引き続き残留するという。ウェーバー氏は2014年から務めていた同職においてアカデミーやトレセン・医療機関などを再設計し、2015年と2016年にユースドイツ杯決勝進出、2019年にはUEFAユースリーグ出場など結果を残していたものの、ボビッチ氏は伝えられるところでは同氏の4倍のサラリーでパブロ・ティアム氏を招聘。その半年後にウェーバー氏はヘルタを後にしていていた。

 それからはマンチェスター・ユナイテッド、FCリバプール、ディナモ・ザグレブでインターンを経て、元ヘルタのカルトキーパー、ガボール・キライのアカデミーに通い、昨春はDFLとDFBが開始した認定プログラム「プロサッカーにおけるマネジメント」のパイロットコースを無事修了。この1年間の休養を有意義に過ごしていたというウェーバー新TDは、「確かにこんなに早く戻ってくるとは思わなかったよ」と語り、「生粋のベルリーナーであり、この機会を大変嬉しく思う。早速緊急の課題にとりくみたい」と数日残された冬季市場を視野にコメント。「厳しいスタートとなるが、この挑戦を受けれている」と述べ、「ただ全力を尽くすのみ。それ以外にない」と意気込みをみせた。

シュヴァルツ監督とともに、ヘルタの道を歩む

 またクラブ首脳陣は引き続きシュヴァルツ監督には信頼をおいており、新戦力獲得で事態の打開をはかりたい考えで、「彼や彼のコーチ人を100%バックアップしていく」とバーンスタイン会長。「熱い」ノイエンドルフ氏にはそのシュヴァルツ監督とティアム氏を「燃え上がらせる」スパーリングパートナー的な期待値もあり、つまりは今後のヘルタとしては「節約政策とボビッチ氏が始めた改革を継続しつつ、一方で現実を見つめてクラブの在り方を重視」して、「ドイツ国内でもトップクラスを誇るものでありアカデミーを基盤」にしていくということ。その前提で「生粋のヘルターナー」であるウェーバー氏とノイエンドルフ氏を招聘したのである。

 改めて今回解任に至った経緯について、バーンスタイン会長は「ビジネスである以上、必ず終わりというものはある。諍いなど程遠いもので率直な意見交換を行なってのものだ。勢いに駆られたのではなく、熟考の末の決断だよ。今回の試合結果にはあまりかかわらずね。ボビッチ氏は冷静に受け止めていたが、驚きもあったようだった。」と説明。理由については「戦略面における軌道修正は取締役会の領分である」と強調し、「ボビッチ氏招聘時の1年前とは前提条件が大きく変わってしまったんだ」とコメント。そして「この勇気ある道を歩み、原点へと立ち返る道を見出したんだ。みなさんはここにホルスト・ヘルト氏やアンドレアス・レティッヒ氏が座っていると思ったのではないか。でも我々は我々の道に自信をもっている」と語った。

"Eine aktive Entscheidung für den Hertha-Weg!" - Benjamin #Weber ist unser neuer Sportdirektor. An seiner Seite wird Zecke #Neuendorf als Direktor Akademie/Lizenzbereich fungieren.

Diese und weitere zentralen Aussagen der PK: https://t.co/MAyWIfadv8 #HaHoHe pic.twitter.com/ZwEQqADlao

- Hertha BSC (@HerthaBSC) January 29, 2023

古巣フランクフルトのクレーシェSD「理解に苦しむ」

 その一方で今回のヘルタの判断の苦言を呈しているのが、フランクフルトでボビッチ氏の後任としてSDに就任した、マルクス・クレーシェ氏である。「理由やどういった経緯で下された決断かはわからない」とした上で、「ただ外から見る分には理解に苦しむよ」とコメント。「基本的には安定が重要になってくるもので、サッカー面があのような状況にあるにもかかわらず、新しい工事現場を作ってしまった。それではなかなか結果はでない。確かに最終的にはクラブ首脳陣が決めることではあるがね」つまりはボビッチ氏の後任をシーズンの最中に2人に分配し、しかもノイエルンドルフ氏もウェーバー氏もSDやTD未経験ということが「かなり大変なことだと思うよ」と実体験をもとに語っている。「しかも不意に急に様々な決断が求められるものなんだ。しかもプレッシャーのかかるなかで。加えてメディア対応もある。簡単にはいかないと思うね」