英語学習者の間でブームになっている「ひとりごと学習」とは?(写真:Lukas/PIXTA)

多くの日本のビジネスパーソンが、苦手意識を持っている英語。とくに、話すこと(=スピーキング)は場数が重要で、後になって「思うように話せなかった」「あんなに簡単なことが、どうして言えなかったんだろう」などと、悔しい思いをした人も少なくないでしょう。

そんななか、英語学習者の間でブームになっているのが「ひとりごと学習」。英語を喋れるようになった多くの人が実践している、日常生活の中で英語をつぶやくトレーニング方法です。

その「ひとりごと学習」の効果的な練習方法を、YouTube登録者数13万人(2022年12月時点)の人気講師・重森ちぐさ氏の『今日からつぶやけるひとりごと英語フレーズ1000』から一部抜粋・再編集してお届けします。

「ひとりごと」が英語脳を育てる最適な手段

「こんなに頑張っているのに、会話になると言葉が出ない!」

「すぐに日本語を考えてしまう……」

仕事などで英語を勉強している方の中には、上記のような悩みを持たれた方は少なくないと思います。

このような方は、英語脳が育っていない可能性が高いです。英語脳とは英語を英語のまま理解する思考回路のことです。実は簡単な英会話のときにはこの回路が働いています。

たとえば、「How are you?」と聞かれたら「Howの意味は……だから」などと考えなくても「I’m good!」と瞬時に答えることができますよね。つまり、簡単な英語から直訳のクセを解消していくことが上達への近道です。

そこでおすすめするのが「ひとりごと学習」です。

このトレーニングはいつでもどこでも自分のレベルに合わせて練習することができ、年齢に関係なく効果が出ます。また、行動や気持ちと一緒に英語を繰り返し発することで、日本語に訳さず瞬発的に英語が出るようになるというメリットもあります。

シンプルかつ自分で言える範囲の英語で、思いついたことを喋れるようになる。これがこのトレーニングの目的であり、英語で物事を考える習慣、すなわち英語脳を育てることに繋がるのです。

まずは、自分が日常生活でよく使う表現を英語でつぶやいてみましょう。

ひとりごとの3つの型「行動」「心情」「状況」

ただ、やみくもに始めても「いつも同じことをつぶやいてしまう」、「わからない英語は言えない」、「間違った英語を使いたくない」などの不安が出るものです。

ここで私がオススメしたいのは、ひとりごとを大きく「行動」「心情」「状況」の3つの型に分類するということ。この3つの型を意識しつつ、具体的なシチュエーションを頭の中で思い浮かべたり、振り返ったりすることで、日常生活で言う英語の表現の幅を飛躍的に伸ばすことができます。

「行動型」は、主に自分のしている行動を英語でつぶやきます。基本的に「主語 I(私)+動詞」の形です。大事なのは自分の身体を使いながら言うこと。身体を使って自分の行動を実況して、文字ではなくて行動と英語を結びつけて感覚を身体にインプットしましょう。自分の行動がほとんど同じで慣れてきたという方は、時制を変えて練習するのがオススメです。

たとえば、現在形 I wake up at 7 every day. を過去形 I woke up at 9 yesterday. や未来形 I’ll wake up at 8 tomorrow.などに変えてみてはどうでしょう。

以下、ビジネスパーソンに役立つ、実践的なフレーズを用意しました(例文は『今日からつぶやけるひとりごと英語フレーズ1000』より抜粋しています)。

【例文】
I have to fix my hair.(髪の毛セットしないと。)
I’ll take an umbrella just in case.(いちおう傘を持って行こう。)
I need to make a to-do list.(やることリストを作らなきゃ。)
First of all, I’ll just make coffee.(とりあえずコーヒーだけいれよう。)
It’s going to take a long time to compile the data in Excel.(エクセルの集計、時間かかるなあ。)
I’ll watch the drama episodes I recorded.(録画してたドラマ観よっと。)

2つめの型の「心情型」は、自分の気持ちを英語でつぶやきます。大事なのは感情を込めることです。強い感情を伴う出来事はよく覚えていますよね。行動型と同様に、出来事に感情をのせることで定着率を上げることができます。

こちらも主語は I(私)の場合がほとんどで、I wanna(〜したい)、I think / I guess(〜と思う)、I feel like + 動詞 ing(〜したい気がする)のような形を使用することができます。

【例文】
I wanna go back to sleep.(二度寝したいな。)
I don’t feel like eating anything.(何も食べる気がしない。)
I’ll make sure my presentation is perfect.(プレゼンは絶対に完璧にするぞ。)
I’m happy to have a new business partner.(新しいビジネスパートナーができて嬉しいです。)
I’m really into this!(これにハマってるんだ!)
I think I’ll go out tonight.(今晩出かけようかな。)

3つめの型の「状況型」は、自分もしくは誰かの状況・様子、あるいは物の状態・様子などを英語で描写します。行動型・心情型と異なり、英文の型のバリエーションが豊富なため難しいです。

他人の行動をつぶやく練習は、慣れてきたら実況中継のようにその人がその行動を終える前に言い切るようにすると、瞬発力のトレーニングにもなります。その人が「電話を切る前」、「お茶を飲み切る前」など自分では決められないタイマーでスリルを味わうことができます。

【例文】
What’s left in the fridge?(冷蔵庫の中に何が残ってたっけ?)
Oh no, it’s time to go!(あれ、もう出る時間だ!)
The train is running late.(電車が遅延してる。)
We have only two months to develop a new product.(新製品の開発期間2カ月しかないのか。)
How much do I get paid for overtime this month?(今月の残業代いくらもらえるかな?)
The suitcase is too small to pack my souvenirs.(スーツケースが小さすぎてお土産が入らない。)

また、身の回りであまり起きないことは「妄想」でつぶやいてみましょう。たとえば、「旅行先でホテルに泊まってシャワーが出ない」ときなど、自分なら何と言うかなど、自分の妄想の世界でいろいろとつぶやく方法です。

お題を1つ挙げて1分間喋ってみる


そして最後に、集大成として、お題を1つ挙げてそのお題について1分間喋ってみましょう。

「今あなたの目の前にある物」、「今日食べたもの」、「明日の予定」など、お題は何でもかまいません。制限時間の中でできる限り話題を膨らませて、複数の文でより詳しく説明することは、会話を続ける訓練になります。

ぜひ日常生活のすべての行動や心情を英語でつぶやいてみてください。何度も繰り返すことで、自分の間違いにも気づき、使う単語も変わり、英語圏の人と同じ思考回路に近づけるはずです。

ただ、人前で声を出してやると変な人だと思われる可能性があるので、外出中は心の中でつぶやくだけでも大丈夫ですよ。

(重森 ちぐさ : Nextep代表取締役 兼 英語講師)