TwitterのCEOであるイーロン・マスク氏は、ジャーナリストたちがリークしているTwitterの社内文書「Twitterファイル」の拡散をサポートしています。そんなTwitterファイルの第7弾についての調査報告に反応し、マスク氏が「政府が情報検閲のためにTwitterへ数百万ドル(数億円)を支払った」と主張しましたが、この主張は誤りだという反論の声が上がっています。

Alex Stamos: "This claim is false. Law enfo…" - The Lair of the CyberVillains

https://cybervillains.com/@alex/109547284671459064

No, The FBI Is NOT ‘Paying Twitter To Censor’ | Techdirt

https://www.techdirt.com/2022/12/20/no-the-fbi-is-not-paying-twitter-to-censor/

Twitterファイルはジャーナリストのマット・タイービ氏らが入手したTwitterの社内文書のことを指し、タイービ氏ら複数のジャーナリストがTwitterファイルの調査報告を行っています。12月2日にタイービ氏が投稿したTwitterファイル第1弾では、Twitterの内部では民主党支持層の力が強く、2020年に「ジョー・バイデン大統領の息子の汚職疑惑」が報じられた際には、民主党員による削除要請が優先的に受理されていたことが示されました。

イーロン・マスクお墨付きの社内文書「Twitterファイル」でTwitter社内で民主党員の削除要請を優先的に受理しバイデンの息子の汚職を隠していた実態が発覚、今後は「シャドウバン」についても暴露予定 - GIGAZINE



また、Twitterファイルの第3弾&第4弾では、ドナルド・トランプ元大統領がTwitterアカウントを永久凍結された際の裏側が明かされています。

Twitterの大規模内部リークから「トランプ元大統領を永久BANした際」の詳細が明らかに - GIGAZINE



マスク氏はTwitterファイルの公開をサポートしており、タイービ氏らのツイートを引用リツイートで紹介したり、Twitterファイルで公開する情報を制限したとして副法務顧問のジム・ベイカー氏を解雇したりしています。

イーロン・マスクが暴露情報「Twitterファイル」の情報抑圧を理由にTwitterの副法務顧問ジム・ベイカーを解雇 - GIGAZINE



そして12月19日にジャーナリストのマイケル・シェレンバーガー氏が、Twitterファイルの第7弾を発表しました。第7弾ではバイデン氏の息子の汚職疑惑について、連邦捜査局(FBI)が「ロシアによる選挙介入の疑いがある」として圧力をかけ、ニューヨーク・ポストなどの記事が拡散されるのを制限したという内容が報じられました。



Twitter Files: FBI Paid Twitter Millions To Process Its Requests

https://reason.com/2022/12/19/the-fbi-paid-twitter-3-4-million-for-processing-requests/

シェレンバーガー氏は当時のメールなどを引用し、FBIがTwitterに対して、他国の勢力による活動が疑われるアカウントについて繰り返し報告していたと主張しています。また、メールからは当時TwitterでTrust&Safety(信頼と安全)担当最高責任者を務めていたヨエル・ロス氏が、FBIの要求にたびたび反論している様子も見てとれます。



そんなシェレンバーガー氏はツリーの終盤で、「FBIの影響力キャンペーンはスタッフが費やした時間に対し、Twitterへ数百万ドル(数億円)を支払っていたという事実によって助けられた可能性があります」と述べました。引用されているジム・ベイカー氏に宛てられたメールには、「(FBIの法的要求に対する償還プログラムとして)2019年10月以降、341万5323ドル(約4億5000万円)を集めたことを報告できてうれしく思います!」と記されています。



マスク氏はこの部分に反応し、「政府は一般の人々からの情報を検閲するため、Twitterに数百万ドルを支払いました」「下院情報特別委員会の(退任する)委員長として、アメリカ合衆国憲法に違反する秘密国家の検閲を承認しましたか、アダム・シフ氏?」とツイート。FBIが検閲を行うためにTwitterへお金を支払ったと主張しています。



ところが、マスク氏が主張する「FBIが検閲のためにお金を支払った」という点については、誤解であるという指摘が上がっています。

Facebookの元最高セキュリティ責任者であるアレックス・ステイモス氏は、「この主張は誤りです。法執行機関は18 USC 2703(d)に基づいて、Twitterなどの企業から保存された通信を取得することができます。これは裁判官の署名が必要である有名な『dオーダー』です。そして企業は18 USC 2706の下で払い戻しを要求できます。セクション2703はより高い基準を持つべきだと主張できますが、政府がユーザーデータを入手できる場合、それは無料であるべきでしょうか、それとも企業はわずかな費用を要求するべきでしょうか?これはコンテンツのモデレーションとはまったく関係ありません」と指摘。

実際に18 USC 2706の条項(a)を見ると、「セクション2703などに基づいて通信の内容や記録を取得する政府機関は、情報収集および提供を行った個人または機関に対し、情報収集や提供などにおいて直接発生した合理的なコストを補うため、手数料を支払わなくてはならない」と定められています。実際に、シェレンバーガー氏が引用したメールには、「FBIの法的要求に対する償還プログラム」と記されています。つまり、これはFBIの法的要求に対応してTwitterが負担したコストの正当な払い戻しであり、検閲の要求とは関係がないということです。

テクノロジー系メディアのTechdirtは、Twitterの透明性レポートによると2019年から2020年にかけて推定で約8000件もの法的要求がFBIから送られていたと指摘。これらを熟練したチームが適切に処理するコストとして、約4億5000万円の払い戻しは妥当だろうという見解を示しています。「FBIによる法的要求の透明性の欠如」「Twitterがユーザーに代わって異議を申し立てる能力の欠如」といった問題はあるものの、「FBIが検閲するためにお金を支払った」というわけではないと述べました。