MicrosoftがWindows Liveメッセンジャーの代替品として、Skypeを買収したのは2011年5月。そこから11年以上が経過した。当初はSkypeの強みだったP2P(ピアツーピア)ネットワークから、データセンター内の専用サーバーに配置したスーパーノードへと移行し、おそらく現在はMicrosoft Azureベースのサービスで稼働しているだろう。

一方で、法人向けコミュニケーションツールのSkype for BusinessはMicrosoft Teamsへ。Windows 11でも個人向けMicrosoft Teamsを提供している。そろそろSkypeも終わりの時期を迎えるのか。日ごろSkypeで仕事の話をしている編集者などとは、別のメッセージアプリを使うように切り替えないと考えていた。だが、Microsoft(正確にはSkype開発チーム)はあきらめていないようだ。

Microsoftは現地時間2022年12月14日に公開した公式ブログにおいて、Skypeの再設計を発表した。これはモバイル版Skypeを指すと思われるが、同日に多くの配色を選べるビジュアルアップデートも発表している。筆者のiOS版SkypeはTestFlightで先行版をインストールしているのだが、この記事を書いている時点では設定項目を確認できなかった。

Skypeのビジュアルアップデート(すべて公式ブログから)

モバイル版Skypeによるビデオ通話品質を向上させるため内部的な変更を施し、2023年も継続的な改良を加えていく。その一つは、ビデオのない参加者向けに明るいテーマと背景を用意して、より良いビデオ通話体験を提供すること。ビデオ通話中の操作もシンプル化し、シングルタップでビデオ映像の全画面表示も可能になるそうだ。

Skypeからニュース記事を読む「Today」タブ

さらに「Today」タブを追加して、世界中のニュース記事を配信するという。すでにMicrosoftは自社が収集したニュースを配信するMicrosoft Startを提供しているが、ニュースソースはおそらく同じだろう。Microsoftはパーソナライズ化を強調しているが、Microsoftアカウントにひも付ける形で、表示するニュースを取捨選択できるので、同種の技術を用いると思われる。

リアルタイム翻訳のデモンストレーション

もう一つの新機能は音声のリアルタイム翻訳。公式ブログによれば、音声認識技術と自然言語処理を組み合わせて、音声を目的の言語に翻訳している。デモンストレーション動画では、翻訳先となる言語を選択して英語とスペイン語のリアルタイム翻訳を行っていた。これらの機能は通常のビデオ通話やグループ通話を対象として、2023年の早期に提供予定としているが、対応言語に日本語が含まれているかどうかは分からない。

気になるのはWindows版のデスクトップ用Skypeの進化だ。今回は3つの新機能を紹介したが、先の2つはモバイル版。最後の音声リアルタイム翻訳機能はデスクトップ用Skypeにも提供されるだろうが、非同期コミュニケーションツールとしてSkypeを使用する筆者が使う場面は多くなさそうだ。ただ、今回分かったのは2023年もSkypeは個人や家族とのコミュニケーションを醸成するツールとして生き残ること。Skypeを使っているユーザーは、ひとまず2023年以降も安心して使い続けていいだろう。

著者 : 阿久津良和 あくつよしかず 1972年生まれのITライター。PC総合誌やDOS/V専門誌、Windows専門誌など、各PC雑誌の編集部員を経たのちに独立。WindowsとLinuxをこよなく愛しつつ、PC関連の著書を多数手がける。近年はBtoCにとどまらず、BtoBソリューションの取材やインタビューが主戦場。休肝日を設けず日々飲み続けてきたが、γ-GTP値が急激に増加し、早急な対応を求められている。 この著者の記事一覧はこちら